『夢幻紳士 迷宮篇』。『ミステリマガジン』(早川書房刊)に2006年-2007年にわたり連載された。
昭和初期の東京を主な舞台とする怪奇ミステリ漫画。青年探偵「夢幻魔実也」の自身を襲う怪異との戦いを描く。『幻想篇』『逢魔篇』と続いた三部作の完結編となる中編連載シリーズ。初期は魔実也に迫る殺意の持ち主と各話対決していく短編連作の形式をとっているが、連載が進むにつれ魔実也が諸悪の根源を追う続き物の体をなす。従来実験的に用いられてきた、墨のかすれによる濃淡の表現を縦横に駆使した描写が特徴。
各話のサブタイトルはムンクの画の題名から採られており、扉絵はその画の人物を作中の登場キャラクターに置き換えた模写の形式で描かれている。また、多くのエピソードは物語の上でもムンクの画の情景がモチーフになっている(例えば第1話「叫び」ではムンクの『叫び』のような光景の中、背景の欄干や画の奥の人物をめぐった物語が描かれる)。
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