◆五十嵐祐貴コメント
スタジオを立ち上げた経緯に関しては、シンプルに「失敗しても良いからやってみたかった」の一言に尽きます。もう少し深く掘り下げると、僕が業界を目指すきっかけとなった、宮崎駿さんや富野由悠季さん、庵野秀明さん、あるいはその周辺のクリエイターのみなさんが50、60歳、それどころか70、80歳になっても第一線で嬉々として作品を作っている姿を見て、単純にこうなりたいな、と思いました。それと同時に今の働き方をしていて本当にその未来が待っているのかなと問うた時に、違うな、という気持ちも強くあったのです。
ここ5、6年のアニメを取り巻く環境の変化はかなり劇的でした。人材不足や求められるクオリティの高騰に各社かなり頭を悩ませ、仕事の過集中による疲弊と、人材と作品のリセット…。こんなことをしていては干上がってしまう。そもそも僕がアニメーターになろうとした根底には、アニメを“楽しく”、そして“作り続けたい”、という思いがあったはずです。
先達の方々にあって自分にはないものはなんでしょうか。大きくは「作りたいものを作る」と「それで商売をする」のバランスを考えてその状態を「チームで継続する」ということなのかなと思いました。そういった気持ちから演出や監督などの作画以外の業務も請け負うようになり、より広い視点でアニメに携われるように活動していましたが、縁あってこのようにスタジオを作って腰を据えて新たな挑戦をする機会を頂きました。長い目で応援してくださると幸いです。