吉屋が20代の頃に執筆した短編連作集で、1編ごとに花にちなんだ表題を掲げ、独特の美文調で綴られている。1916年(大正5年)から1924年(大正13年)まで、雑誌『少女画報』に断続的に連載され、1925年(大正14年)7月から1926年(大正15年)3月にかけて『少女倶楽部』に3編が連載された。挿画は連載された雑誌ごとに異なり、『少女画報』の連載では亀高文子・清水良雄・蕗谷虹児らが描き、『少女倶楽部』の連載では中原淳一が描いた。また、1937年(昭和12年)から2年間、『少女の友』増刊号に再録された際にも中原が挿画を担当した。
当初はミッションスクールの寄宿舎にいる7人の女学生が、1話ごとに花にまつわる悲話を互いに告白する設定であった。ところが、連載を継続するにつれて1話の完結に数ヶ月かかるようになり、情感と共に物語性を重視した話が増えた。
連載中である1920年(大正9年)に洛陽堂から単行本として出版され、その後も交蘭社・実業之日本社・ポプラ社・朝日新聞社・国書刊行会・河出書房新社など、数多くの出版社から単行本が出版された。しかし、洛陽堂を始めとする多くの出版社から単行本が出版された際には、『少女倶楽部』に掲載された最後の2作である「薊の花」「からたちの花」が含まれていないため、この2編を除いた52編を全容と解釈されることが多い。
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