231話 俺はザナワー大司祭に礼を言うと、トゥラーヤ枢機卿への紹介状を持って一度エレオラ邸に戻った。 ウィロン大書院へは片道で半日かかるし、事前に面会予約を取っておく必要もある。今日はもう店じまいだ。 そして帰った俺は、異様な光景を目の当たりにする。 「よっしゃ、あのアホ兄弟の魔撃銃ならこんなもんだろ。ジェリク、お前の銃はどうする?」 「威力より堅牢性と整備性だな。いつでも必ずきちんと作動するように頼むぜ」 「おう、いい心がけだ」 兎人のリュッコが机に仁王立ちになり、製図用の紙に凄い勢いで図面を引いている。助手はジェリクだ。 「お前たち、何してるんだ?」 俺が訊ねると、リュッコが得意げに鼻をひくつかせた。 「おう、魔撃銃の現地改修をしとこうと思ってな。実戦で不満点がいろいろ出てるから、そいつを片づけちまおう」 するとジェリクが説明する。 「みんなからは『変身したとき撃ちにくい』って意見が多

〈最果てのパラディン 第五章:たそがれの国の女神〉 考えてもみたまえ。 ――われわれは、なぜ永遠を恐れねばならない? 『不死神スタグネイトの問い』 ◆ ――洞窟を抜けると、そこは人の領域ではなかった。 唐突に広がった茫漠たる荒野。 地平線は見えない。視線の先では白い霧のようなものが明滅している。 霧の向こうで、瞬く間に森が育ち、建物が立ち並び、そして燃え上がり崩れて消えるさまが、蜃気楼かなにかのように薄ぼんやりと見えた。 ぶぅ――ん……ぶぅ――ん……と、虫の羽音のような異音が煩わしい。 「…………」 視線を上に向けてみれば、広がる夜空には星はない。 代わりに北のある一点を中心に、虹を思わせる色合いの、輝く巨大な渦巻き模様があった。 思わず魂を吸い込まれてしまいそうな空だ。サイケデリックな印象すら感じる。 ……前世の記憶が確かなら、長時間露光で撮影した星空が、こんな風になるはずだ。 遠くに

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