京都大学化学研究所の緒方博之教授らをはじめとする研究チームは、アメーバに感染する新規巨大ウイルス「メドゥーサウイルス」を発見した。 今回、同研究チームは、北海道にある温泉地域の湯だまりとその水底の泥土サンプルから、アメーバを宿主として新規巨大ウイルスを分離し、その感染過程・粒子構造・ゲノム組成の詳細を調査した。その結果、この新規巨大ウイルスは、これまでに知られていた巨大ウイルスと多くの点で異なる性質を持つことが分かった。 この巨大ウイルスは、アメーバを宿主として増殖するが、感染過程で一部のアメーバ細胞を休眠状態にする。この性質が、見たものを石に変える「メドゥーサ」を連想させるため「メドゥーサウイルス」と命名された。また、ヒストン遺伝子全セットを保持する初めてのウイルスであるなど、特異な粒子形態とゲノム組成から新たな「科」に属することが明らかとなった。 今後、メドゥーサウイルスの感染過程を分

井上 勲・岡本典子(筑波大学大学院生命環境科学研究科) 2005年10月、通称ハテナと名付けた生物に関する短い論文が新聞やテレビでとりあげられました。ハテナはカタブレファリス類に属する単細胞の鞭毛虫で、細胞内に藻類の共生体をもっていますが、不思議な細胞分裂をします。観察の結果を総合すると、ハテナの生活環は次のように考えられます。細胞が分裂するたびに、娘細胞の一つは共生体を受け継いで植物としての生活を維持しますが、他の娘細胞は共生していた藻類を受け継ぐことがないために、無色の鞭毛虫に戻ります。無色の鞭毛虫は捕食装置を新たに形成して再び共生体の藻類を取り込み、光合成を行う栄養細胞に戻ります。これは半分は藻類、半分は捕食性原生生物として生活している状態で、植物が誕生する過程で通過した進化段階について可能性の一つを示していると考えています。植物ははじめから植物として存在していたのではなく、植物にな

これまで、光合成によるエネルギーで繁殖していたと考えられていた地球最古の生物の一種、シアノバクテリア(藍藻:らんそう)が、太陽の光が届かない地底深くで発見された。 定説をくつがえすこの発見に、科学者らは地底には思いもよらぬ生物が存在している可能性を示唆した。そう、地球外生命にも関係のある話だ。 ダーク・バイオスフィアに存在していた、在るはずのない生物 “ダーク・バイオスフィア”とも呼ばれる地下環境は、地表から数百メートルも続いており、まったく光の届かない場所だ。 今回、このダーク・バイオスフィアで発見されたのは、シアノバクテリア(藍藻)の一種で、これまで生きるために日光が必要だと考えられていた細菌である。 この画像を大きなサイズで見る赤い蛍光色の部分が岩石に付着したシアノバクテリアの細胞を示す imagecredit:F. PUENTE-SANCHEZ/PNAS 2018 なぜここにいる

ソニック・ヘッジホッグ (Sonic hedgehog, SHH) は、ヘッジホッグ (HH) ファミリーに属する5種類のタンパク質の内の1つ。これをコーディングする遺伝子=ソニック・ヘッジホッグ遺伝子は、shhと小文字で表記する。このファミリーの他のタンパク質には、哺乳類ではデザート・ヘッジホッグ (Desert Hedgehog, DHH)、インディアン・ヘッジホッグ (Indian Hedgehog, IHH)があり、魚類ではエキドナ・ヘッジホッグ (Echidna Hedgehog, EHH) とティギーウィンクル・ヘッジホッグ (Tiggywinkle Hedgehog, TwHH) がある。 ヘッジホッグ遺伝子 (hh) は最初にエリック・ヴィーシャウスとクリスティアーネ・ニュスライン=フォルハルトの古典的なハイデルベルク・スクリーンにより同定されて、1978年に発表された。

>全部をひとまとめにして、1本の染色体、1本の DNA にしてしまってもよさそうに思えますが、 原核生物はゲノム全体が一分子の環状DNAですから、そういう考えが当てはまるかもしれません。 真核生物のゲノムが染色体で分割されるようになったのは、進化の歴史の中の偶然の産物なのかもしれませんが、いくつそうであることの利点や必然性を後付してみます。 1. 一本の染色体だとすべての遺伝子が連鎖群となって、交差によるシャッフルしか利かない。複数の染色体(複数の連鎖郡)に分かれているとゲノムのシャッフリングの自由度が高く、遺伝的多様性を高めることができる。 2. 遺伝子発現の調節を染色体単位で行うことができる。染色体ごとに分割されることで、ある染色体上の転写調節がほかの染色体上の遺伝子の調節に干渉を与えることが起こりにくくなる。 たとえば、哺乳類メスで、一対のX染色体のうち一方が不活性化され、残りの一方

川口喬吾1・影山龍一郎2・佐野雅己3 (1米国Harvard Medical School,Department of Systems Biology,2京都大学ウイルス・再生医科学研究所 増殖制御システム分野,3東京大学理学系研究科物理学専攻)email:川口喬吾 DOI: 10.7875/first.author.2017.040Topological defects control collective dynamics in neural progenitor cell cultures. Kyogo Kawaguchi, Ryoichiro Kageyama, Masaki Sano Nature, 545, 327-331 (2017) 要 約 培養皿において増殖する神経幹細胞は生体と同様に棒状のかたちをしており,高密度になると,となりどうしの細胞が向きをそろえる.この研究
ポイント 40億年にもおよぶ生物進化の中で、光合成の代謝系がどのように誕生したのか、またその進化的な原点は何だったのかということは、これまで不明でした。 地球誕生後の極めて初期に地球上に出現し、光合成を行わないメタン生成菌に、光合成においてCO2から糖を合成するための代謝経路の原型を発見しました。 進化の過程で、光合成代謝に関わる各遺伝子が現在のものに進化してきた分子機構が明らかになるとともに、光合成機能を活用した食糧やバイオ燃料生産の増産につながることが期待されます。 JST 戦略的創造研究推進事業において、神戸大学の蘆田 弘樹 准教授(奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 元助教)と河野 卓成 学術研究員(奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 博士後期課程単位取得退学、本研究成果を元に現在博士号申請中)、立命館大学の松村 浩由 教授らは、光合成でCO2から糖
1.4 なぜ赤オプシン遺伝子と緑オプシン遺伝子が並んで配置しているのか 原理的には、分光吸収特性の異なる視細胞が 2種類あれば、それらの出力を比較することによって波長の異なった光を区別できる。鳥類、爬虫類、両生類、魚類といった脊椎動物では、錐体視物質を 3ないし 4種類有する 3色型色覚もしくは 4色型色覚を持つ動物が多く知られている。しかしながら哺乳類の多くは、青もしくは紫外線領域に吸収極大波長を持つ視物質と、緑もしくは黄緑色に吸収極大波長を持つ視物質の2種類の錐体視物質しか持たず、2色型色覚である(表3)7)*4。哺乳類の祖先は夜行性の小型爬虫類であったとされているが、実際哺乳類の視細胞の約 95%が暗所に適応した杆体であり、他の脊椎動物に比較して哺乳類の網膜には錐体が少ない。例えばヒトにおいては杆体が約1億5千万個もあるのに対し、錐体は約 700万個しかない。 ヒトにおいて赤オプシン
These are insect cells infected with the Guaico Culex virus. The different colorsdenote cells infected with different pieces of the virus. Only the brown-colored cells are infectious, because they contain the complete virus. Michael Lindquist/Cell Press Human viruses are like a fine chocolate truffle:It takes only one to get the full experience. At least, that's what scientists thought a few day

米マサチューセッツ工科大学(MIT)は、DNAに作用し、大腸菌に新たな機能を追加する“細胞用プログラミング言語”を開発した。コンピュータでプログラミングをするのと同じ感覚で、テキストベースで設計するのが特徴だ。 グルコース濃度や酸素レベルに応じ、意図した反応を返すようにプログラムできる。デジタル回路を設計する言語「Verilog」をベースとし、DNAの各部位や役割、他の部分との連携など、遺伝子工学の知識がなくても設計可能だ。「高校生でも、望み通りのプログラムを組める」とうたう。 研究チームによる初回テストでは、60種類の回路をプログラムし、うち45個が正常に機能したという。ほとんどの回路は1種類の機能しか持たないが、異なる3種類の機能を持ち、優先度に応じて反応を返す回路も設計した。 従来、DNA回路の開発には数年を要したが、同言語を使えばボタンを押すだけで、すぐにテストでき、研究時間の短縮

2014年3月10日 関係各位 山梨大学生命環境学部生命工学科 教 授 若山 照 彦 STAP細胞の論文の問題について 今年1月30日にNature誌に発表したSTAP細胞に関する論文について、現在、多くの問題が指摘されております。私が担当した部分(共著者より提供された細胞からのキメラマウスの作製、及び幹細胞の樹立)については、自信を持って適正に実験がなされたと言い切れますし、共著者の結果についても信頼してきました。 しかし本論文に関して様々な疑問点が指摘されている今日、私はSTAP細胞について科学的真実を知りたいと考えております。そこで私は、先に共著者より提供され、キメラマウスの作製実験に用いたSTAP細胞を所有していますので、この細胞を公的第三者研究機関に提供し、詳細な生化学的分析を依頼する事を決断しました。 分析結果は速やかに公表致します。
前回の日記は思いの外反響があり,驚いています. 察していただいた方もいらっしゃった通り,私は件の論文に直接関わる立場ではないのですが,研究所の外から見れば「中の人」になります. 内部では実名でこのような活動をしており,隠れているつもりはありません.内部でどうしても解決できなかった場合は外へ向けて情報を出すでしょうが,それまではできるだけ内部での解決を目指しています. その目的は迅速な論文の撤回とできる限りの真相の解明がなされることであり,また動機は科学への信頼,研究所への信頼の棄損を許せないことが半分,この状態を曖昧にしておくことで私個人の研究活動も制限を受けかねないのでそれを防ぎたいという私利私欲も半分の動機となります. 科学的な事実を争う立場としては私は間違っていないという自信がありますが,政治的に勝利できるかどうかは全く分かりません. 更にいくつかの証拠をここに書こうと思いましたが,
なめてますね,これ. 何と言って,理研の対応です. STAP論文についての手技解説の発表,だそうですが,これは無意味です. なぜなら,STAP細胞など存在しないから. 間違った書き方をしたとか論文制作の作法のことではありません.「存在しない」のです. 私は証拠も提供しました.しかし,受け入れられなかったようです. この論文は画像の捏造や文章のコピペ,結果の解釈の間違いなど多数の指摘がされています. それらは大問題で,問題の大きさとしてはこれだけで論文の撤回があってしかるべきです.が,私はそこはあえてここでは語りません.他の場所で語られているからということもありますが,もっと本質的なこと,つまり「STAP細胞は存在しない」ことを問題にしたいからです. どうしてSTAP細胞が存在しないといえるのか? 私はこの論文のインサイダーではありません.従って誰がどのように間違いを犯したかどのような意図を
日本で8月に最もよく売れたWiley(Wiley-Blackwell, Wiley-VCHを含む)の理工書トップ5をご紹介します。タイトルまたは表紙画像をクリックすると、目次やサンプル章(Read an Excerpt)など、詳しい内容をご覧いただけます。 1位 Sequence Stratigraphy Edited by DominicEmery, Keith Myers ISBN: 978-0-632-03706-3 Paperback / 304 pages / August 1996 地層学の有力な手法として近年急速に重要性を増した「シーケンス層序学」に関する古典的教科書です。British Petroleum (BP) で使われた研修用教材を基に編纂されたもので、シーケンス層序学の基本的な概念とテクニック、応用法を解説します。 2位 Advanced Analysis of

A pathogenic picornavirus acquires an envelope by hijacking cellular membranes Nature (2013) doi:10.1038/nature12029 あまりの衝撃に思わずブログを書いてみたくなってしまいました。こんな衝撃は、ほ乳類の遺伝子にボルナウイルス (の一部) がかくれんぼしてる論文以来ですね。いやー、おったまげた。 ウイルスというのは極端な話、遺伝子であるDNAやRNAをたんぱく質で包んだツブツブなので、とても弱っちいのです。それでも遺伝子を守らなければウイルスはウイルスであることができないので、頑張って守らなくてはいけないんですよね。守り方には2種類あって、たんぱく質の殻をがっちがちに固めて『硬い』ウイルス粒子を作る戦略と、細胞からちょいと脂質2重膜を借りてきて*1『柔らかい』ウイルス粒子を作る戦

2013年01月22日 四重鎖DNAの発見 背景: 生物学を勉強すると、DNAの基本的な構造として必ず二重螺旋構造を習う。しかしDNAには他にもいくつかの形態が存在し、時と場合に応じてその構造を変化させている。 要約: 生物学においてDNAの二重螺旋以上に象徴的な構造は存在しない。しかし実験室内では、グアニン(G)を多く含んだDNAを使うことで、四角形に 近い構造を簡単に作成することができる。この四重鎖構造は、グアニンを多く含んだDNA鎖上の4つのグアニンが、お互いに水素結合で引きつけあうことで形成される。そしてこの構造は、生物の細胞内でも見られるはずだと考えられていた。 この度、イギリスはケンブリッジ大学のShankar Balasubramanian博士率いる研究チームによって、DNAの四重鎖構造がヒトの細胞内で存在するという強力な証拠や、その構造が重要な生物学的機能を持っている可能性
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く