【本稿に登場する教授たち】 五十嵐いがらし 圭日子きよひこ 東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授。研究分野はバイオマス生物工学、木質科学。 小熊おぐま 久美子くみこ 東京大学大学院 工学系研究科 教授。研究分野は環境工学、水処理学、水供給システム。 江崎えさき 浩ひろし 東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授。研究分野は情報通信工学。 加藤かとう 真平しんぺい 東京大学大学院 工学系研究科 特任准教授、ティアフォー代表取締役CEO。研究分野はソフトウエア、情報ネットワーク、計算機システム。 アリババ創業者も注目する日本の農業 【五十嵐】東京大学に東京カレッジ(※1)ができて、2023年からアリババ(※2)(阿里巴巴)創業者のジャック・マー(※3)(馬雲)さんが教授職として入られました。 ※1 東京カレッジ 2019年に東京大学と海外の研究者・研究機関が連携する中心的な場所として設立さ

食べ物がのみ込めなかったり、つかえたりする「機能性嚥下(えんげ)障害」の主な原因を、九州大の研究グループが突き止めた。のみ込みに使う「食道横紋筋」の筋力低下が原因になっていることが判明。リハビリや投薬で完治する見通しが立ったという。10日付の米医学誌に論文が掲載された。 機能性嚥下障害はこれまで発症原因が分かっていなかった。悪化すれば、高齢者の死因トップの「誤嚥(ごえん)性肺炎」を引き起こす。従来の検査方法では異常が発見できなかったため「気のせい」「精神的なもの」と診断され、治療のため病院を転々とする患者も多かったという。 今回、研究チームは食道の「拡張」に着目。「収縮」に焦点を当てていた従来の研究の逆手を取ったことが功を奏したという。患者と健常者計50人を対象に食道運動を比較・分析した結果、患者の約半数に拡張障害が認められた。 九州大大学院医学研究院の伊原栄吉准教授(病態制御内科学分野)
イギリス・サリー大学の先端技術研究所(ATI)の研究により、太陽光エネルギーが世界で最も安価な電力源になっていることがわかりました。リチウムイオン電池を用いた蓄電システムとの組み合わせは、ガス火力発電所に匹敵するコスト効率だとのことです。 Solar energy is now the world’s cheapest source of power, a Surrey study finds | University of Surrey https://www.surrey.ac.uk/news/solar-energy-now-worlds-cheapest-source-power-surrey-study-finds Solar Energy in 2025: Global Deployment, CostTrends, and the Role of Energy Storag

ノーベル賞のパロディーとしてユニークな研究に贈られることしの「イグ・ノーベル賞」の受賞者が発表され、日本からは農研機構=農業・食品産業技術総合研究機構の研究員らのグループが受賞しました。その研究テーマは、「シマウマ」ならぬ「シマウシ」です。 「イグ・ノーベル賞」は、1991年にノーベル賞のパロディーとしてアメリカの科学雑誌が始めた賞で、人を笑わせつつ考えさせる研究に贈られます。 日本時間の19日、ことしの受賞者が発表され、日本からは、農研機構で研究員を務める兒嶋朋貴さんらの研究グループが「生物学賞」を受賞しました。 研究グループは、シマウマが体のしま模様によって血を吸うハエからの攻撃を防いでいるとする研究結果に注目し、家畜の黒毛の牛に白黒の模様を描いて「サシバエ」や「アブ」を防ぐ効果があるかを調べました。 その結果、模様を描いた牛は何も描かなかった牛に比べて足や胴体に付いたハエの数が半分以

東京大学などの研究チームが南アフリカにある20億年前の地層から採取した岩石を詳しく分析した結果、岩の中にある「鉄さび」の周りに微生物が集まっているとみられることが分かりました。研究チームは、微生物は鉄さびを呼吸に利用しながら20億年前から岩の中にいる可能性が高いとして、「生命がどのように誕生し、生き延びられたのかを解明する大きな手がかりになる」としています。 東京大学理学部の鈴木庸平准教授の研究チームは、南アフリカの北東部に広がる20億年前の地層を掘り進めて岩石を採取し詳しく観察した結果、岩の内部から生きているとみられる原始的な微生物を採取したと、去年10月に発表しました。 その後、同じ地層をさらに掘り進め、地上から微生物が侵入する可能性が低くなる深さおよそ1200メートルで「かんらん岩」を採取して、仙台市にある放射光の研究施設「ナノテラス」に持ち込み詳しく調べました。 研究チームによりま

研究者の有期労働契約が10年を超えれば無期雇用に転換できるルールについて、毎日新聞が全国の国立大にアンケートしたところ、日本の研究力低下の要因になっていると半数近くの大学が答えた。このルールが結果的に無期雇用への転換を阻む雇い止めにつながり、キャリアを積めない研究者を多く生み出したとされるためだ。大学の運営費削減方針も影響して大学は有期雇用を続ける体質を変えられず、研究力を支える学術界の構造的な問題が浮き彫りになった。 関連記事は3本です。 <前編>「研究力低下の要因」 無期転換ルール巡り、半数の国立大が回答 <中編>20年で1600億円超減 日本の研究力低下を招いた財政規律 <後編>「職場を去った研究者はごまんといる」 研究力低下に現場から訴え このルールは2013年施行の改正労働契約法で導入された。一般の労働者は無期転換権を得るまでの期間は5年だが、研究プロジェクトが長期に及ぶ研究職は

女性アスリートらに見守られながら大統領令に署名するトランプ米大統領=5日、米ホワイトハウスのイーストルーム/Andrew Harnik/Getty Images (CNN) トランプ米大統領は5日、トランスジェンダー女性の女子スポーツ競技への参加を禁止する大統領令に署名した。同氏は大統領選で中心に掲げた政治課題の解決に動いている。 数十人の女性と競技ユニホームを着た少女たちが見守る中、トランプ氏は「男子の女子スポーツからの排除」と題した大統領令に署名した。トランプ氏は「この大統領令により、女子スポーツをめぐる戦争は終わった」と宣言した。 政権はすでにトランスジェンダーの権利を標的とした大統領令を発令しており、その一部は法的訴訟に直面している。 署名に先立ち、ホワイトハウスの当局者は、この新たな措置の教育改正法第9編(タイトルナイン)に対する立ち位置はバイデン前政権と逆になると指摘した。バ

「パワー」と「スタミナ」を付けるにはどうすればいいか スポーツで優れたパフォーマンスを発揮する上で、発揮できるパワーの最大値を高めることは重要です。パワーという言葉は日常会話でもよく使いますが、スポーツ科学の分野では「パワー=筋力×速度(スピード)」を意味します。このことから、パワーを高めるためには「筋力」と「スピード」の双方を鍛えることが必要です。 一方、どれだけ発揮パワーに優れていても、試合が始まって早々に疲労してしまうと困ります。したがって、パワーに加えて、パワーを持続する能力(筋肉のスタミナ)を鍛えることも大切です。この筋肉のスタミナは、専門的には「筋持久力」と呼ばれます。 「筋肉のパワー」や「筋肉のスタミナ(筋持久力)」の向上には、いずれの方法が有効でしょうか? この点は過去に研究が実施されています。この研究では、若年男性を最大筋力型の筋力トレーニングを行うグループと筋肥大型の筋

韓国の民間団体が行った世論調査で、日本に対してよい印象を持っていると答えた人の割合は、調査を開始した2013年以降、最も高くなりました。韓国のシンクタンク「東アジア研究院」は毎年、日本のシンクタンク「言論NPO」と共同で日韓双方で世論調査を行い発表してきました。 ことしは19日、韓国側の世論調査の結果を「東アジア研究院」が発表しました。 先月、オンラインで韓国国内の1000人余りが回答したということで、それによりますと、日本に対して「よい印象を持っている」「おおむねよい印象を持っている」と答えた人は合わせて41.7%で、去年より13ポイント近く上がり、2013年の調査開始以来、最も高くなりました。 一方、日韓関係の改善に向けた韓国政府の対応について聞いたところ「非常に評価する」「おおむね評価する」と答えた人が合わせて34.5%、「全く評価しない」「あまり評価しない」が49.6%でした。

千葉大学の山田泰裕教授らは大阪大学などと共同で、光を当てると発光して冷たくなる物質を開発した。光を吸収しやすい「ペロブスカイト型」の構造を持つ結晶を使う。新たな冷却素子の開発につながる可能性がある。開発した物質はセシウム、鉛、臭素から構成されるペロブスカイト構造の結晶でできている。ペロブスカイト構造を持つ結晶の一部は光をよく吸収する性質を持ち、その性質を利用した「ペロブスカイト型太陽電池」は変

全国の中高生を対象にした発明コンクール「自由すぎる研究EXPO」で岡山市の女子高校生が最多となる5つの金賞を受賞しました。考案したのは「納豆を片手で食べられる道具」です。一体なぜそのような道具を?そこに…

ノーベル賞のパロディーで、ユニークな研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」の受賞者が発表され、ことしは、ブタなどの動物に「お尻から呼吸する能力があることを発見した」として、日本などの研究チームが「生理学賞」を受賞しました。日本人の受賞は18年連続です。 「イグ・ノーベル賞」は、1991年にノーベル賞のパロディーとしてアメリカの科学雑誌が始めた賞で、人をクスッと笑わせつつ考えさせる研究に贈られます。 日本時間の13日、ことしの受賞者が発表され、東京医科歯科大学と大阪大学で教授を務める武部貴則さんらの研究チームが「生理学賞」を受賞しました。 研究チームは、肺による呼吸が難しい状態になったブタなどの動物の腸に、高い濃度の酸素を含んだ特殊な液体をお尻から送り込む実験を行いました。 その結果、どの動物も血液中の酸素が大幅に増え、このうちブタでは一定の条件のもとで、呼吸不全の症状が改善することが確認で

窒素は大気の大部分を占めていますが、動植物で窒素を直接利用できる生物は見つかっていません。ところが、非常に小さな海の藻の仲間が窒素を取り込んで利用する能力を獲得しつつあるとする研究結果を、高知大学などがまとめ、生命の進化を考えるうえで重要な発見として注目されています。 この研究結果は、高知大学やカリフォルニア大学などの国際研究チームが、アメリカの科学雑誌「サイエンス」に発表しました。 窒素は地球の大気のおよそ8割を占める主成分ですが、窒素を直接利用できるのは一部の細菌やバクテリアだけで、動植物など真核生物で窒素を直接取り込んで利用できる生物はこれまで見つかっていません。 研究チームでは、真核生物の1種で20マイクロメートルほどと非常に小さな海の藻の仲間を、安定的に培養できる方法を初めて確立し、詳しく分析しました。 その結果、従来はこの藻の細胞には窒素を利用できるバクテリアが共生していると考

宮崎雅雄(みやざき・まさお) 神奈川県横須賀市出身。岩手大農学部卒業、同大学院連合農学研究科博士課程修了後、理化学研究所や東海大の研究員などを経て、2011年、母校の岩手大に特任准教授として着任。20年から現職。21年、マタタビ反応についての研究成果を米科学誌で発表した。動物の嗅覚研究に取り組み、企業との製品開発などにも取り組む。ネコよりイヌ派で、イヌの研究もしており、家ではイヌを5匹飼っている。 研究室で飼育しているネコ「セル」を抱く岩手大教授の宮崎雅雄さん。世界的な科学誌が名前の由来で、他に「サイエンス」など17匹のネコがいる=盛岡市の岩手大で ネコにマタタビをあげると、転がったり葉をなめたりかんだり。日本では300年以上前から知られ、「マタタビ踊り」とも呼ばれるネコの不思議な反応で、その理由は「マタタビの匂いを嗅いで酔っぱらっているから」と考えられてきました。岩手大農学部教授の宮崎雅

佐賀大学は、酒を飲むと顔などの皮膚が赤くなる体質の人は、新型コロナウイルスの感染に対して防御的である可能性があることがわかったとする研究成果をまとめました。 佐賀大学医学部の松本明子准教授らの研究グループは、飲酒後に顔などの皮膚が赤くなるかや、新型コロナにいつ感染したかなどについてインターネット上でアンケート調査を行い、およそ800人から得た回答を分析してきました。 その結果、新型コロナの感染拡大が始まった2019年12月から2023年5月までの間、飲酒後に顔が赤くなる人は発症が遅い傾向にあり、感染に対して防御的である可能性があることがわかったということです。 特に、ワクチンを2回接種した人が国内で人口の半数ほどにとどまっていた2021年8月までの期間に絞り込むと、飲酒後に顔が赤くなる人が新型コロナに感染した割合はそうでない人に比べて、およそ5分の1にとどまったということです。 飲酒後に顔

小森さんは小学4年生だった4年前、茨城県つくば市にある国立科学博物館の収蔵庫の特別公開イベントを訪れたときに保管されている動物のはく製標本1点が図鑑などで見たニホンオオカミと似ていることに気がつきました。 このはく製は「ヤマイヌの一種」として博物館に保管されてきたものでしたが、小森さんが専門家とともに詳しく調べた結果、体の大きさやはく製のラベルに基づく過去の記録などから100年以上前に現在の上野動物園で飼育されていたニホンオオカミの可能性が高いことがわかり、2年がかりで論文にまとめて今月、発表しました。 研究チームによりますと、ニホンオオカミはかつて日本に広く生息していましたが、およそ100年前に絶滅したとされ、はく製や毛皮の標本は国内外でわずかしか残っていないということです。 論文を発表した小森日菜子さん(13)は都内の中学校に通っている1年生です。 小学2年生のころにニホンオオカミに興

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