「子どもを産まない人が増えている」と聞くと、多くの人は日本やヨーロッパ、アメリカの姿を思い浮かべるかもしれません。 長時間労働、教育費の高騰、将来不安などは、いわゆる先進国の悩みであり、「発展途上国はむしろ子だくさん」というイメージを持っている人も多いはずです。 ところが、世界のデータをじっくりのぞき込んでみると、このイメージはかなり現実とズレてきています。 途上国の中にも、「将来も子どもを持つつもりがない」と答える人たちが、増え始めている傾向があるというのです。 この意外な変化に目をつけたのが、アメリカのミシガン州立大学(Michigan State University)の心理学者ザカリー・P・ニール(Zachary P. Neal)氏とジェニファー・ワトリング・ニール(Jennifer Watling Neal)氏です。 研究チームは、アフリカ、アジア、中南米など51か国で実施された

この写真にはショッキングな表現、または18歳以上の年齢制限の対象となる内容が含まれます。 ご覧になる場合にはご了承の上、クリックしてください。 【11月14日 AFP】ナチス・ドイツ総統アドルフ・ヒトラーの血液を使って遺伝子検査を実施した結果、停留精巣や小陰茎症などの症状が現れる遺伝性疾患、カルマン症候群だった可能性が極めて高いことが分かった。研究者とドキュメンタリー番組の制作者たちが13日、明らかにした。 この新研究は、ヒトラーがユダヤ人の血が流れているという説を否定するものでもある。 第2次世界大戦中の流行歌には、ヒトラーの体の構造をやゆするものが多くあったが、科学的根拠はなかった。 科学者と歴史家から成る国際チームによる今回の研究結果は、ヒトラーの性的発達に関する長年の疑惑を裏付けるものとなった。ドイツ・ポツダム大学のアレックス・ケイ氏は、「ヒトラーが生涯を通じて女性と一緒にいると

AIを引っ提げてやってきた大学院生 学外のとある修士2年生の学生から、研究を評価してほしいと頼まれました。彼がやっているのは、私が専門とする研究分野のある仮説をデータによって検証する内容でした。読んでみたところ、経済学の五大誌は難しいにしても、着眼点、新規性、データの質などから、フイールドトップの学術誌に挑戦できる水準にあると感じました。 驚かされたのは、彼が経済学を専攻する学生ではなく、それどころか経済学をこれまでほとんど学んだことがないという点です。彼の関心は技術の新領域への応用、特に「生成AIの新活用」にあり、専門外である経済学という分野で、AIとの対話だけでどこまでのレベルの研究ができるかを1年間かけて試してみたというのです。研究のアイデア出し、先行研究のレビュー、理論モデルと仮説の構築、データの探索と収集、計量ソフトを用いた分析、図表の作成、英語論文化に至るまで、さまざまなAIツ
日本の秋田大学で行われた研究によって、ツキノワグマに襲われた際に地面にうつ伏せになって頭や首を守る「防御姿勢」を取るだけで、重症化リスクを大幅に下げられる可能性が示されました。 研究チームが分析した70件の被害のうち、実際にこの「丸まる防御」をとれた7人は誰ひとり重傷を負いませんでしたが、姿勢をとれなかった残りの人たちからは骨折や切断を伴う重症例が続出しました。 ツキノワグマは防衛目的で人を攻撃するとき、たいていは最初の一撃だけ加えてすぐ離れることが多いとされており、急所を隠して数秒間しのげるかどうかが、重症化を防ぐポイントになる――それを裏付けるデータが初めて得られたわけです。 研究内容の詳細は、2025年7月に『臨床整形外科』に掲載されています。

「男性と女性で脳に違いがあるのか?」という疑問は古くから存在しており、近年は脳スキャン画像から性別を90%以上の精度で識別可能なAIモデルが開発されたり、女性の脳は男性よりも生物学的に若いという研究結果が報告されたりしています。ノルウェーのオスロ大学などの研究チームが行った新たな研究では、男性の脳は女性よりも加齢による萎縮が速いという結果が示されました。 Sex differences in healthy brain aging are unlikely to explain higher Alzheimer’s disease prevalence in women | PNAS https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2510486122 Male Brains Shrink Faster Than Female Brains, Study Fin

オスのヒヒをグルーミングするメスのヒヒ=エチオピアのアワッシュ国立公園/Juniors Bildarchiv GmbH/Alamy Stock Photo (CNN) メスの哺乳類がオスよりも一般的に長生きする理由の一つは、性行動にあるとする研究結果が発表された。ドイツ、デンマーク、フランス、ハンガリー、ベルギーの研究チームは、動物園で飼育されている528種の哺乳類と648種の鳥類に関するデータを分析した。性別による成体の平均寿命の違いを扱った研究としてはこれまでで最も包括的なもので、論文は科学誌サイエンス・アドバンシズに掲載された。 研究チームは、自然の環境下で生息する110種の個体群についても調べ、同様の傾向がみられるかを確認した。 その結果、哺乳類では成体のメスがオスより平均で12%長く生きることが分かった。一方、鳥類では逆の傾向が見られ、成体のオスがメスより5%長生きした。 哺乳

女性は男性より長生きする傾向にある。それは男性のほうが多く喫煙し、飲酒し、より危険な行動に走りがちだから、というのが昔ながらの説明の仕方だ。 だが、事実としてこの寿命格差は国や時代を問わず存在するため、より根深い何かも作用していることが示されてきた。 女性が相対的に長寿なのは、X染色体が2つあるという余剰性のおかげで、有害な変異から守られているからかもしれないことがますます立証されてきている。 この仮説をさらに裏づける研究論文が10月1日に発表された。哺乳類と鳥類1000種以上の雌雄間で寿命にどれくらい差があるかを分析した、これまでで最も包括的な研究だ。ドイツにあるマックス・プランク進化人類学研究所の進化人口統計学者で、研究論文の執筆者のひとりであるヨハンナ・スタークは言う。 「人間をめぐる観点で特筆に値するのは、世界のほぼどの国でも女性のほうが長生きするということです。それで、われわれ

ジェンダード・イノベーションとは!? まず最初に「ジェンダード・イノベーション」の概念や可能性について、お茶の水女子大学ジェンダード・イノベーション研究所の特任教授、佐々木成江さんにお聞きしました。 ジェンダード・イノベーション研究所 佐々木成江特任教授 専門は「生物学」 ―ジェンダード・イノベーションとは、どんな概念なのでしょうか? ジェンダード・イノベーションとは、性差に基づくという意味の「ジェンダード」と知的創造や革新を意味する「イノベーション」を組み合わせた造語です。2005年に米スタンフォード大学のロンダ・シービンガー教授が提唱した比較的新しい概念で、男女の体の構造や機能の違いといった「生物学的な性」や性別役割分担など「社会・文化的に作られる性」の視点を研究や開発の中に組み込み、性の違いを正しく理解し、創造や革新につなげようという研究手法です。 ―ジェンダード・イノベーションを研

このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。 X: @shiropen2 米カリフォルニア大学サンタバーバラ校などに所属する研究者らが2024年にNature Neuroscienceで発表した論文「Neuroanatomical changesobserved over the course of a human pregnancy」は、妊娠前後で脳がどう変化しているかを調査した研究報告だ。 研究チームは、体外受精により妊娠した38歳の初産婦を対象に、受胎3週間前から出産後2年間(162週)にわたって26回のMRIスキャンを実施。妊娠の経過とともに脳がどのよ

2月27日に日本実業出版社から発売した『「運命」と「選択」の科学』。遺伝子は私たちの行動をどこまで決めているのか? 自由意志による「選択」は幻想なのか? 注目の若手研究者の最新研究から「運命」と「選択」の境界線を探る1冊です。 弊社のnoteでは、書籍の発売を記念して内容の一部を公開しています。 ◎前回の記事はコチラ 今回は、恋愛や親子愛、友情など、人をいつくしむことにまつわる人間の行動を科学的に解説した第4章の一部を公開します。 私たちが人を好きになり、結びつきを求めることもまた、遺伝子によって動かされている結果なのでしょうか。「愛情」のメカニズムに遺伝子学の側面から迫りました。恋愛は、生殖機能の「副産物」に過ぎないのか セックスに関しては、人間の遺伝子に組み込まれた一定の行動だという前提に、誰も異議を唱えようとは思わないだろう。 種としてわたしたちは有性生殖する。生殖につながらない性

9月20 牧野百恵『ジェンダー格差』(中公新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 このところずっと話題になっているジェンダー格差の問題ですが、では、その解決方法は? というと一筋縄ではいきません。 別に男女問わずの競争をしているはずなのに、東大には男子学生が多いですし、政治家は男性ばかりです。 もちろん、東大に入ったり政治家になるのが「良いこと」なのかという根本的な問題はありますが、とりあえず、そこには女性にとって何らかな不利な状況があると考えられます。本書は、実証経済学で行われてきたさまざまな研究を紹介することによって、このジェンダー格差の問題に迫っていきます。 「女性の労働参加が何をもたらすか」「学歴と結婚や出産の関係」「出産などについて女性が決める権利を持つことが何をもたらすか」など興味深いトピックについてのさまざまな研究が紹介されています。 中には、意外な結果となっているものもあ
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。 X: @shiropen2 研究チームは、アフリカの狩猟採集民や牧畜民から、米国や欧州の都市住民まで、世界34集団4213人の成人を対象に調査を実施。エネルギー消費量の測定には、最も正確とされる二重標識水法を用い、7~14日間にわたって総エネルギー消費量や体脂肪率、BMIなどの肥満指標を記録した。 調査の結果、経済発展が進んだ社会ほど体重とBMI、体脂肪率が高かった。しかし意外なことに、総エネルギー消費量もまた経済発展とともに増加していた。先進国の人々は運動不足どころか、むしろ多くのカロリーを消費していたのだ。 これは主に体格が大きいためだが、体格の影響を統計的に除去しても、総エ

「マミーブレイン」とは多くの女性が訴える、産後、一時的に思考力や記憶力が低下した状態を指す。よって育児中の母親が鍵を失くしたり約束を忘れたりしても、安易に責めてはいけない。マミーブレインは出産した母親の約8割に起こる、ごく一般的な現象なのだ。よくある症状としては、短期的な記憶喪失、時間や場所の認識があやふやになる見当識障害、集中力の低下など。テレビやネットで笑いのネタにされることも多い、いわゆる「産後ボケ」だが、近年の科学的研究で、マミーブレインは寝不足や育児ストレスいった言葉では片づけられない、人間の神秘に触れる現象であることが明らかになった。 『Nature Neuroscience(ネイチャー・ニューロサイエンス)』誌に発表されたこの研究では、妊娠前から出産後2年間にわたる脳の変化を詳細に記録。導き出された神経学的な洞察は、妊娠という極めて重要な転換期における脳の変化を明らかにし、神

女性は月経中、気分や認知能力が普段よりも低下していると感じているにもかかわらず、思考はより明晰になり、反応速度が上がり、ミスも減ることがわかったとする研究結果が、認知神経科学の専門誌Neuropsychologiaに掲載された。 394人の参加者を対象とした研究について、論文はこう記している。「研究参加者は月経期に気分や症状の悪化を報告し、それが認知能力に悪影響を及ぼしていると認識していたにもかかわらず、総合的な認知スコアは向上していた。参加者の主観的なパフォーマンス認識と客観的な認知スコアとの不一致は、女性の月経周期について前向きな展望をもたらし、スポーツを行う際の心構えや考え方を形づくるのに役立つ可能性がある」 「これとは対照的に、卵胞期後期と黄体期(子宮内膜が厚くなる期間)においては、認知課題パフォーマンスの最適水準が下がり、【略】黄体期には全体的なパフォーマンスの悪化がみられた」

流行りの言葉「マンキーピング」 ニューヨークの公認臨床ソーシャルワーカーで、男性向けセラピーが専門のジャスティン・リオイは、新しいクライアントにまずこう尋ねる。「自分の人生でいま起こっていることについて、誰に相談できますか?」 彼のクライアントのうち、異性愛者の男性の多くは、自分の彼女や妻以外には滅多に心を開かないと話すそうだ。パートナーの女性たちが彼らの非公式なセラピストとなり、「感情的な面倒をすべて引き受けている」とリオイは言う。 現在、その役割は「マンキーピング」と呼ばれている。スタンフォード大学の研究者、アンジェリカ・プツィオ・フェラーラが作ったこの言葉は、ネット上で急速に広まった。 マンキーピングとは、女性たちが男性パートナーの社会的・感情的なニーズを満たすためにおこなう仕事を指す。そこには、パートナーが日々の困難や内面の葛藤を乗り越えるのを支えたり、友人と会うように促したりする

このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。 X: @shiropen2 米ボストン・カレッジとアイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリンに所属する研究者らが発表した論文「Work time reduction via a 4-day workweek finds improvements in workers’ well-being」は、給与を減らすことなく週4日勤務を導入することで従業員にどのような変化が起きるかを調査した研究報告だ。 研究チームは、オーストラリア、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、英国、米国などの141組織、2896人の従業員を対象に、週4日勤務制の実験を実施した。 この試験では、従業員は通

売春禁止はレイプ率を大幅に増加させ自由化は減少させると判明!売春禁止はレイプ率を大幅に増加させ自由化は減少させると判明! /Credit:Canva売春を禁止すべきか自由化すべきかについては、古くからさまざまな国や地域で大きな議論になっています。 アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチをはじめとした著名な人権団体の多くはすべて、人道の観点から成人売春が非犯罪化されるべきだとの声明を発しています。 人権団体の多くはその理由として、非犯罪化されることで、売春にかかわる人々が公に警察の保護を受けられるようになり、安全が増すと述べています。 売春を禁止してしまえば、セックスワーカーが虐待を受けたとしても相手を訴えることが難しくなる一方で、自由化されていれば虐待者は容易に告発され、セックスワーカーたちが自らの待遇改善を求めて団結することも可能になるからです。 実際、複数の明

米カリフォルニア大学デービス校の研究チームが行った新しい研究によると、2歳から13歳までの自閉症の男児と女児の脳の発達には広範な違いがあることがわかりました。 最近「Molecular Psychiatry」誌に発表されたこの研究では、脳の外側の層である皮質の厚さに性別特有の変化があることを明らかにしました。 この発見は、自閉症の女児に関する研究が非常に少ないため、注目されています。 自閉症は男性に多く診断され、男性4人に対して女性1人の割合です。 「この性差があるのは、部分的には女性の自閉症が過小診断されているためです」 そう、精神医学・行動科学部門の教授であり、UCデービスMIND研究所のクリスティン・ウー・ノーダールは述べています。 「しかし、今回の研究は診断の違いだけではなく、生物学的な違いも存在することを示唆しています」 脳の外層である皮質は、何百万ものニューロンで構成されており

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