「本屋のある街」は、独立書店ネットワークのリレー連載。全国の参加店舗が、それぞれの街をご紹介します。 第4回は、静岡県沼津市の「リバーブックス」です。店主の江本典隆さんは食べることが大好きで、食の話になると声のトーンが一段階上がるとのこと。---------------------------------------------------------------------------------------------------- 沼津は港町という印象が強いけれど、実は川の街でもある。街の中心部を伊豆から流れてきた大きな狩野川(かのがわ)が通り、街を抜けて駿河湾に注いでいる。沼津駅から続くビル街を抜けると唐突に景色が開けて川面が現れるので、初めて訪れる人は歓声を上げる。 川の近くの本屋だから、当店の名前はリバーブックスという。店主である僕の苗字が江本なのでその英訳にも掛けている。店が

(前回から読む) 書店減少の問題は、業界内だけでは、どうすることもできないところまで来ている。そう厳しい声を上げるのは、PubteX(パブテックス、東京・千代田)の渡辺順社長だ。改革が進まない特殊な構造の裏には、「作り過ぎ」「運び過ぎ」「返し過ぎ」という3つのムダがある。そして、それらのムダは、商社目線でDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めれば改善できると強調する。 人口減少社会は効率に勝機が 前回は、商社の丸紅がなぜ出版・書店流通の領域に乗り出したのか。その理由とともに、RFID(無線自動識別)タグを中心に、IoT、AI(人工知能)との連携によるスマートサプライチェーンの構想をうかがいました。第2回となる今回は、全体の戦略についてうかがっていきます。 渡辺順・PubteX社長(以下、渡辺):「書店再興」シリーズで、すでにいろいろ取材されている通り、出版・書店業界の中で特に書店は

図書館の資料(本・CD・DVD)が、どうやって選ばれているかご存じでしょうか? 今回は、一般の方がなかなか知り得ない、図書館の本選び(選書)についてお話してみたいと思います。図書館員がよく使用する選書ツールに、『週刊新刊全点案内』という雑誌があります※1。 一般流通はしていないので、図書館関係者以外、ほとんどの方は知らないでしょう。 これは、図書流通センターという図書館管理業務(図書館の運営)を請け負う企業が、図書館向けに発刊している書籍です。 100~150文字程度の簡単な内容の説明文が書かれており、全てではないものの、多くの書籍の表紙画像も付いています。 「全点」を謳っているものの、実際には全点を掲載しているわけではありません。 図書流通センターの触れ込みでは、「最も網羅的な出版情報誌」とのこと。 しかし実際には掲載されているのは、選書されたものになります。 ◆明示されている非掲載ジ

目次 はじめに 第1部 出版業界の課題の本質――「書籍と雑誌」「読むと買う」「子どもと大人」は別の話 第1章 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』はどこが間違っているのか 第二部 打ち手としてのデジタルパブリッシング/出版DX 第2章 マンガがDXに成功し、V字回復できたのはなぜか 第3章 「ウェブ小説書籍化」は世界共通のビジネスモデル 第4章 ニューヨークタイムズ 第5章 ビッグ5 第6章 書店はどうするのか――欧米の本屋のDX 第7章 理論編:売上を伸ばすプロモーション施策を考える前に知っておきたい不都合な真実 終 章 まとめ、そして個人でもできること おわりに 発売1か月前となりました。くわしい目次など、中身を切り出しつつ告知していきたいと思います。 ご興味ある方はぜひイベント、講演その他気軽にお声がけください。

書店大手は別事業に活路を見出しています。 「MARUZEN」や「ジュンク堂書店」を運営する丸善CHIホールディングスは、2024年度が1.6%の増収でした。ただし、書店運営などの店舗・ネット販売事業は0.2%の減収。成長を支えているのは図書館サポート事業で、5.7%の増収でした。図書館サポート事業は、全国にある図書館の指定管理者制度による運営受託、人材派遣などを行っています。丸善の図書館受託館数は1840。1年で34館増加しました。 丸善が図書館の運営業務に携わっている背景には、図書館流通センターとの経営統合があります。組織再編によるもので、中小の書店が簡単に真似できるものではありません。 そうした中で活路を見出しているのが売場変革。TSUTAYAのメガフランチャイジーであるトップカルチャーは、コスメのECサイトを運営するノインと提携し、化粧品のリアル店舗展開に乗り出しました。 既存の店

出版科学研究所によると、紙の出版物のピークは1996年の2.6兆円。2024年は1兆円で、およそ1.6兆円が消失しました(出版科学研究所「日本の出版販売額」)。電子書籍の市場規模は5.8%増加しているものの紙が5.2%減少しており、全体で1.5%縮小しています。文化庁の2023年度「国語に関する世論調査」では、1ヶ月に本を1冊も読まない人の割合は62.6%で、5年前の調査を15.3ポイントも上回りました。 出版業界全体が縮小傾向にある中で、紙の本を扱う書店が特に打撃を受けているのです。 日本の書店産業は売上、流通の両面で雑誌に依存してきました。この雑誌の落ち込みが特に顕著。1996年の雑誌の販売金額は1.5兆円で、2024年は4000億円ほどにまで縮小しています。インターネットメディアやSNSの普及で需要が激減しました。 かつては、定期的に大量発行する雑誌に依存する形で、小部数発行の書籍

講談社から、これ以上『庭の話』のプロモーションに労力を割けないというメールが来た。発売から1年弱、事前に決めたプロモーションをほとんど当時の担当がサボタージュしたので、仕方なく僕が自腹でここまで数字をつくってきたのだけど、そろそろ限界なので講談社ももう少し動いて欲しいと連絡したら、「リソースがない」ので協力しない、という返事が戻ってきた。 心が折れた。 僕は会社から年収1000万円以上を保証されている講談社のエリートサラリーマンではなくて、働いた分しか金にならない自営業者だ。その僕が、担当編集がまったく動かない(マジで普通にサボっていた)ので仕方なく自前で膨大な資金と労力を使ってプロモーションをして、自分の取り分は印税10%しかない講談社の本を売って来た。 それは自分の作品が「かわいい」からやって来たのだけど、その僕に自分たちが「忙しい」からプロモーションに協力したくないと平気でメールに書

2025年(令和7年)4月に虎ノ門ヒルズにオープンした書店について、「あれは松丸本舗と同じではないか!?」との問い合わせが、なぜか僕のところにくる(笑)と言う可笑しなことが多かったので、「自分は関係者ではないけど」と前置きして、「似て非なるもの」と返答してきました。 さらに説明を求める数人の方がいたので、ここで、あの『松丸本舗』とはなんだったか!を覚書として、残しておきます。 社長からの挑戦状『松丸本舗』(2009年〜2012年)が、丸の内にできることを知った時、これは「社長からの挑戦状だ!」と言う話を、『第2回 続「本を売る」ことに魅せられて』で解説しました。 書店は、常に新しい切り口を読者に示し続けなければならないという意味において、セレクトショップは、間違ってはおりません。 しかし、ショップであるならば、「本を売る」ことが第一であると言うのが僕の信条です。 僕は『松丸本舗』を見た時に

日本初!※1 紙・電子・図書館を横断した複合書籍チャート誕生Billboard JAPAN、音楽チャートのノウハウを書籍業界に水平展開 「Billboard JAPAN Book Charts」 スタート Penske Media Corporation(本社所在地:米ニューヨーク)のグループである「米国ビルボード」と「ビルボードジャパン」(日本におけるBillboardブランドのマスターライセンスを保有する株式会社阪神コンテンツリンク)は、日本初※1 となる紙書籍・電子書籍・図書館貸出を統合した総合書籍チャート「Billboard JAPAN Book Charts」を新たに公開いたしました。 ※1 日本国内における「紙書籍・電子書籍・図書館貸出を統合した総合書籍チャート」として初 ○調査手法:自社調べ(書籍業界関係者へのヒアリング調査に基づきます。) ○調査時期:2025年4月~9月

スマホ上での「1450億時間」。エクサバイトの情報消費と『書店』という不図の中で触れたように2003年度に20880店あった書店は、2023年には10918店と、約半分に減り、書籍の市場規模は約1兆円から約6500億円になった。 日経MJで「作家・北方謙三氏、出版不況に物申す」が書かれたのは、今から2年前。北方氏は図書館で新刊を取り扱うことに対して苦言を呈していた。図書館の存在が市場の縮小にも影響していると云う。 意外? 公立図書館数は20年で800館近く増図書館の数は公開されている。文部科学省の公立図書館関連データによると、1999年には2592館だったが、2021年には3394館と増えている。また、蔵書数は2001年の1億9千5百万冊から、4億4千8百万冊に増えている。図書館の利便性、そして、本を通して知識を欲しい人にあまねく行き渡らせるという図書館の役割を考えると、図書館における新

ビルボードジャパンの書籍ランキングに図書館の貸出数が反映される!?図書館司書が注目する取り組みのおはなし 詳しい内容はぜひ元記事を読んでいただければと思うのですが、ざっくり言うと書店の売り上げ+図書館で貸し出された回数を合算してランキングにしたチャートをビルボードジャパンが発表していきます! という内容です。 公共図書館のルールに詳しい方は「図書館って個人情報保護のために貸出記録を公開・保存しないのが原則なのでは……?」 と首を傾げるかもしれませんが、この取り組み、おそらく個人情報を侵害せずに民間利用を可能にした超画期的な方法です。 今回はこの取り組みの何がすごいのか? を元図書館司書として解説していきたいと思います。 この取り組みに参加する「図書館の運営会社」って?メディアニュースでは「図書館の運営会社」がビルボードジャパンに情報提供を行うとシンプルに書かれているので、まるで市町村から委

往来堂書店のシェア本棚を始めます往来堂書店の棚をお貸しします。 なぜか? 「どうして本屋になったの?」とたまに聞かれます。今の世のなかで、本屋はそれほど「おいしい」商売とは思われていないのだろうと思います。あえてそんなことしているのだから、なにか強い物語があるのでは?と考えてもおかしくはない。 「本屋」で何がしたいのか? ものすごく牧歌的ですが 「この本、面白いですよ!」 「これは、いま、読むべき本です。なぜなら・・・」 「おすすめされた本、読んでみたら、すごくよかった!」 こういったやり取りができたとき、私は本屋をやっていてよかったなぁと思うのです。 普段からそういうつもりで本を仕入れ並べていますが、この場所でもっとたくさんの人にそれをやっていただいたら、もっとにぎやかな本屋ができるのではないか。思えば、「D坂文庫」も、その前身の「不忍ブックストリートの50冊」も、そんな、本をあいだに置

「儲かる商品」を捨てたら、売上が上がった書店。「100人に聞いてわかった、本屋が見落としていたこと」奈良・啓林堂書店 奈良の書店といえば、啓林堂書店。まちの本屋さんとして、1974年に創業。昨年11月に50周年を迎え、次の50年に向けた50周年記念イベントの企画をライツ社もお手伝いさせていただきました。本が生まれる瞬間から、本づくり、本の出会いや味わい方、そして読み終わった後まで、様々な本の楽しみ方を知ることができる啓林堂書店さんには、「すべてのブックライフによりそう」というミッションがあります。半世紀の歴史を持つ老舗書店がどうしてこんなことばを? あらためて、そのことばに込めた思いを聞いてみたい。そう思って3代目社長・林田幸一さんを訪ねました。 話を聞いてみると、このミッションを実践した結果、全国平均を大きく上回る売上が続いているとのこと。しかも、集客のための生活消費財は置かず、「本が

本がだいすきプロジェクト(茅ヶ崎市立図書館・川上書店・長谷川書店・認定NPO法人まちづくりスポット茅ヶ崎)による「ビブリオバトル1・2・3」が11月1日(土)から3日(祝)までの3日間、開催されることになった。 ビブリオバトルは発表参加者が「読んで面白いと思った本」を持ち寄って発表し、その後「どの本を一番読みたくなったか」を投票で決定する知的書評ゲーム。今回は秋の読書週間(10月27日〜11月3日)と本の日(11月1日)に合わせて行われる。 日時と会場は、11月1日が長谷川書店ネスパ茅ヶ崎店6階ギャラリー(【電話】0467・88・0008)、2日が茅ヶ崎市立図書館第1会議室(【電話】0467・87・1001)、3日がハマミーナ図書館(【電話】0467・81・7148)で、いずれも午後2時から4時まで。 参加は事前申し込み制だが、飛び入りや観覧のみの参加も可能。問い合わせは各会場へ。

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