ここは5年前までウクライナ本土と南部のクリミア半島を結ぶ幹線道路だった。だがロシアが2014年にクリミアを強制的に編入したことから、実質的な国境地帯に一変した。ロシアとウクライナがそれぞれ設けた「税関」の間には、全長1キロに満たない道が延びている。私は首都キエフから9人乗りのバスに乗ってきたが、幼児や高齢者という特殊な事情を持つ乗客以外は、ここから先は徒歩で渡らなければならない。 かすむ街灯を頼りにして、スーツケースを引きずりながら早朝の幹線を歩いた。私だけがウクライナ側の「出国」手続きに時間がかかり、他の客は先に行ってしまった。しばらく進むと、歩道が途切れ、車道に移らなければならない。斜め前に視線を移すと、切れたままで放置されている電線が目に入った。かつては一つの国だった地域が一夜にして、別の国へと分けられてしまう。小説の世界のような現実が目の前に広がっていた。

河野太郎外相とラブロフ露外相は16日(日本時間17日)、ドイツ・ミュンヘンで平和条約締結に向けた2回目の会談を行ったが、北方領土の主権や歴史認識を巡る溝を埋められなかった。中距離核戦力(INF)全廃条約を巡る米露の対立も、日露交渉に影響しかねない。難題が山積し、6月の大筋合意を目指した日本政府の戦略は練り直しを迫られている。【ミュンヘン光田宗義、モスクワ大前仁】 【赤外線カメラでの撮影に成功した北方領土】 「モスクワでは大変歓迎してもらった。その際にもらったカフスはよく使っている」。ミュンヘンにあるロシア総領事館に出向いた河野氏は会談の冒頭、1月の前回会談でラブロフ氏からプレゼントされたカフスボタンを示してみせた。 続けて「日露の貿易額が伸びている。ロシアから訪日する人も前年比20%以上の伸びだ」と強調。ロシア側が重視する日露の経済分野の進展をアピールした。ラブロフ氏も「大臣との対話を楽し

安倍晋三首相は22日、北方領土問題を含む平和条約締結交渉の進展を目指し、プーチン露大統領と通算25回目の会談に臨んだ。日露双方の立場の隔たりが際立った14日の日露外相会談から8日。首相は、首脳間の「信頼関係」をテコに事態の打開を図ったが、目立った進展は得られなかった。プーチン氏は複雑な国内事情を抱えており、日本側が求める領土の返還に応じるのが難しいためとみられる。【モスクワ秋山信一、大前仁】 「戦後70年以上残された課題の解決は容易ではない。しかし、私たちはやり遂げなければならない」。最高気温が氷点下15度と冷え込んだ22日のモスクワの大統領府。安倍首相は共同記者発表で、改めて平和条約締結への意欲を語った。2月に外相間会合や「特別代表」の次官級協議を開き、「交渉を前進させるよう指示した」とも語ったが、当初期待していた成果を得られたとは言い難い。

【大前仁(モスクワ)、光田宗義】河野太郎外相は12日、モスクワに到着した。14日にロシアのラブロフ外相と日露平和条約締結に向けた交渉のため会談する。交渉でロシア側は、北方領土が第二次大戦の結果としてロシア領になったとするロシア側の歴史認識について、日本の考えを表明するよう求めていく方針であることが判明した。日露外交筋が12日までに毎日新聞に明かした。プーチン露大統領が訪日する今年6月までに表明するよう日本に要求するという。 日本はこれまで北方領土を「固有の領土」として返還を求めており、大戦の結果、ロシア領になったとする「ロシアの主張は受け入れられない」(外務省幹部)としてきた。安倍政権はプーチン氏の訪日までに平和条約交渉を「大筋合意」に導きたい考えだが、歴史認識など多くの課題が残され、交渉の難航は必至だ。

安倍晋三首相が11月中旬にプーチン露大統領と再び会談するが、この会談で平和条約問題を進展させられるのだろうか。安倍政権は、プーチン氏が今秋立て続けに平和条約問題に言及したことについて「平和条約締結への意欲の表れ」と評価し、前向きの材料と捉えている。この分析は適切なのだろうか。日本政府はプーチン氏が前回訪日する前の2016年秋の時点で、平和条約問題に「前のめり」になりながら大きく進展させられなかった苦い経験があるのだが、前回の轍(てつ)を踏まずに済むのだろうか。いくつかの点を検証してみる。 まずは平和条約問題が置かれている状況をおさらいしよう。日露両国が北方領土の帰属や返還方法、平和条約締結について話し合う交渉そのものは、現時点で事実上凍結されている。ロシアが「日本との間では十分な信頼関係が築けていない」と主張し、交渉に応じていないからだ。その代わりに両国は平和条約交渉の前提条件となる「信頼

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