■日本車メーカー、相互関税で最大関税42.5％へ跳ね上がる可能性

概要

日本時間2025/08/07に発動した相互関税により、自動車のSection232追加関税25％（計27.5％）に加えて相互関税15％が併課される恐れが生じた。最大42.5％課税となれば、日本の自動車産業全体に深刻なコスト圧力が発生する。

代表的報道:https://www.47news.jp/12979399.html

「上限」か「上乗せ」か──日米の食い違い

• 2025/07/23の首脳合意で日本政府は「15％で打ち止め」と説明した。
• しかし米ホワイトハウス高官は2025/08/06に「15％は追加分」と通告。自動車も例外ではないと明言した。
  • 大統領令と一致する条文
    • Section 1 の冒頭で「imposingadditionalad valorem duties ...atthe ratessetforth inAnnex I」と明記し、Annex I の数字が「追加」関税であることを規定。
    • Annex I に「Japan 15 %」と列挙し、日本向けの追加率を確定。
    • Section 2(c) でEU 品についてのみ「既存税率と追加税率の合計が 15 % を超える場合は追加関税 0 %」とするノースタッキング条項を記載。日本には同条項がなく、追加 15 % がそのまま上乗せされる構造を裏付け。

参考:https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/07/further-modifying-the-reciprocal-tariff-rates/

関税シナリオ

影響試算（粗い目安）

• 対米輸出全品目15兆円×追加15％＝約2.3兆円コスト増。
• 完成車輸出130万台×300万円×追加15％＝約5.8兆円。北米現地生産分は回避可能。
• 円高方向に1円動けば、自動車業界利益▲400億円規模が相殺されうる。

自動車メーカーへの直撃

• トヨタ:北米生産比率が高いものの、日本発高付加価値車（クラウン、レクサスLXなど）は42.5％リスクを直撃。
• ホンダ・日産: 輸出台数依存は小さいが、輸出用部品供給が42.5％賦課対象となるため減産懸念。
• マツダ・スバル: 完成車輸出比率が高く、42.5％ならビジネスモデルの根幹が揺らぐ。

部品メーカーの弱点

• ワイヤーハーネス、シート、電子制御ユニットなど日本国内生産・輸出型サプライヤーは42.5％上乗せで価格競争力喪失。
• Tier1は北米へ金型移設・追加投資を前倒し検討。Tier2以下は資本余力が乏しく、統廃合加速の恐れ。

企業が取るべき即応策

• FOB価格再設定: DDPからDAPへ契約変更し、関税リスクを顧客と折半。
• サプライチェーン再構築:カナダやメキシコ経由で原産地規則を満たし追加15％回避を狙う。
• 為替ヘッジ短期化:関税コスト増と円高圧力の揺り戻しを吸収。
• ロビー活動:五大湖州選挙区へ雇用データを提示し、セーフガード発動圧力を緩和。

政府・交渉の行方

• 赤沢遼成交渉官がワシントンで「相互関税のノースタッキング条項明文化」「自動車税率15％への即時カット」「除外リスト策定」を要求中。
• NAFTA圏追加投資を促す税制インセンティブを国内で整備する動きも浮上。
• WTO提訴は暫定措置終了まで温存される見通し。

まとめ

「15％で打ち止め」という日本政府の説明は、米国側の公式文書と整合していない。最悪42.5％課税が発効する前提で、メーカーもサプライヤーも現地化と契約条件再設計を急ぐ必要がある。状況は流動的であり、法令通達と通関実務を日次で確認する体制が不可欠だ。

追記2025/08/08 00:00

• CBP が CSMS #65829726 を公開し、Section232指定の自動車（HTSUS 9903.01.15）には相互関税 15 % を適用しないと通達。乗用車の実効税率は従来通り 27.5 %。
• Section232 非指定の自動車部品には MFN＋15 % が課されるため、部品単体輸出は 15〜20 % 税率となる。
• EU だけに「既存税率と追加税率の合計が 15 % を超えない」ノースタッキング条項が条文化、日本には同条項が無い。
• 日本政府は「口頭でスタッキング無しを確認」と説明中だが、大統領令は未改訂のまま。書面化されるまで 42.5 %シナリオが完全に消えた訳ではない。
• 次の焦点は Federal Register に出る CBP 暫定規則と、赤沢交渉官・米商務長官の共同声明。法令改訂が無ければ、スタッキング復活の余地は残る。

Permalink |記事への反応(1) | 08:04

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■石破政権敗北後の対米自動車関税交渉

要点

• 参院選敗北で政権基盤が大幅に弱体化。
• トランプ大統領は8/1、日本車に25パーセント追加関税を発動すると通告。出典:https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/03/de0e380a011645d9.html
• 日本製自動車約180万台が対象となり、年2.5兆円規模のコスト増。出典:https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/05/18eb10d8b5913fb5.html

政権弱体化が交渉に与える影響

• 少数与党化で国会承認を盾にした時間稼ぎは不可。
• 党内右派と参政党が「対抗関税」「消費税減税」を要求し、交渉メッセージがぶれる。
• 米側は「譲歩を取りやすい相手」と認識し圧力を強化。

交渉の主要カード

• 農産物 and防衛装備品追加購入
• EV部品の北米調達比率引き上げ
• 数量枠設定による輸出制限

想定シナリオ

• シナリオ1　限定譲歩で追加関税回避

-日本側:調達比率と数量枠を受け入れ

-産業:サプライチェーン再編コスト増

-政局: 「痛み分け」で一時安定

• シナリオ2　譲歩先渡しで発動延期

-日本側:農産物と防衛装備品を先行購入

-産業:猶予期間に北米投資加速

-政局: 「譲歩過多」批判で改造内閣必至

• シナリオ3　追加関税強行

-日本側: 対抗関税とWTO提訴を検討

-産業:利益率急落、国内生産にも影響

-政局:退陣論高まり9月総選挙の公算

タイムライン

• 7月末　訪米閣僚会合で暫定合意の有無判明
• 8/1　追加関税発動 or回避
• 9月　BOJ金融政策決定会合でインフレ and円安対策を協議

まとめ

政権の脆弱さは交渉力を大きく削ぎ、追加関税発動リスクを高めている。決定打は8/1。交渉結果次第で日本の自動車産業と石破政権の命運が同時に決まる。

Permalink |記事への反応(2) | 14:55

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■はてなの自動車関税の甘い幻想を叩き割る

関税収入は法人税に次ぐ巨額財源

米財務省統計によれば、1〜6月の連邦関税収入は872億ドル、約13兆円である。法人税に次ぐ第2の税源へ膨張した。自動車と部品は25%追加関税の主役で、わずか3か月で25〜30億ドル規模の歳入を生んだと推計される。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16DR30W5A710C2000000/

「国内生産すれば課税回避」論の限界

• 日本メーカーの米国生産比率は既に70〜80%だが、パワートレインや電池、半導体など高付加価値部品を海外から輸入しており、部品関税がコストに直撃する。
• 新規工場やサプライチェーンの垂直統合には年単位の投資と認可が必要。半導体工場なら建設から量産まで5年は下らない。
• 最終組立てだけ米国化しても25%の関税回避は不完全である。

部品の壁

完成車のうち30〜40%は輸入部品の価値で構成される。部品に課される25%が残れば、コスト増の大半は残存する。

リードタイムの壁

工場を建ててラインを立ち上げ、現地サプライヤーを育成するには長い時間と巨額の先行投資が不可避である。

「メーカーが吸収できる」論の危険

• ボルボは追加関税発動後に一部モデルを販売停止し、高価格帯へ絞り込んだ。利益を関税で食われる現実を示す典型例。
• レクサスや日産の高付加価値モデルはマージンの半分近くを関税で失い、値上げか撤退かの3択に追い込まれる。
• 関税損失を価格転嫁しない選択肢は短期的に存在しても、長期では事業継続が難しい。

「高くても買う」需要神話

• 乗用車の価格弾力性は1.0〜1.5。価格が25%上がれば販売量は15〜25%下落する計算になる。
• 4〜6月の輸入乗用車販売は前年同期比18%減（全米自動車協会速報値）。需要は有限であり、国内生産車に置き換わるだけである。

財源化した関税が示す政治的粘着力

• 半年で13兆円を稼ぐ甘い果実を手放す議会は想定しにくい。ガソリン税を上回る規模に達した以上、撤廃は財政論の壁にぶつかる。
• トランプ陣営は「基礎関税10%＋相互主義関税5〜25%」を示唆。25%が天井とは限らない。

https://www.reuters.com/markets/trump-floats-idea-universal-tariff-says-us-not-ready-it-yet-2025-01-21/

これから起こり得る3つのシナリオ

• 部品から完成車へ段階的に北米ローカル化が進み、北中米クローズド市場が形成される。
• 軍や公共調達など高コスト許容領域に国内EV専用ラインを新設し、民生向けは輸入継続という2層構造が生まれる。
• 報復関税やWTO提訴は歳入規模の前に政治的に空振りで終わる可能性が高い。

まとめ: 見るべきは数字だ

関税は「国内で作れば良い」という単純な問題ではない。13兆円という歳入、25%という税率、4,600億ドルという対象額が示すのは、サプライチェーンと企業収益、そして連邦財政を同時に拘束する3重の現実である。1990年代の3%鉄鋼関税を前提にした楽観論を唱える前に、この桁違いの数字を直視する必要がある。

Permalink |記事への反応(1) | 13:28

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