はてなキーワード:フォアグラとは
深夜23時、原稿の締切に追われる私のスマートフォンが震えた。編集者の荒木さんからのLINEだった。
「今回の連載『東京グルメ迷宮案内』、読者から『描写が淡白』って苦情が来てるんだ。明日までに食べログ5つ星レベルの文学性ぶっ込んだ文章を書いてくれない?」
冷や汗が背中を伝う。パソコンの前で12時間、カップ麺の残骸が積み上がるデスク。窓の外で救急車のサイレンが遠吠えする。
ふと目に留まったのが、亡き祖母がくれた手帳。革表紙の隙間から銀杏の葉の標本がはみ出している。あの秋の日、認知症が進んだ祖母が最後に連れて行ってくれた老舗洋食屋の記憶が蘇る。
「そうだ…『銀杏亭』なら」
銀座駅から歩いて15分の路地裏。ネオンの海から漏れた月光が、ひび割れた看板を撫でる。「洋食銀杏亭」の文字は昭和のレタリングで、金箔が剥がれた部分から下層の青が滲んでいた。
ドアを開けるとベルではなく実際の鈴の音。1920年代の蓄音機から流れる「銀座の恋の物語」が、ハムスター小屋のようなカウンター席を包む。店主・岩崎老人の背広には、長年の油煙が抽象画のように染み込んでいる。
「親子丼は終わったよ。今日はデミグラスソースが深いからオムライスがお勧めだね」
声の主は厨房の影にいた。白髪交じりの頭髪を七三分けにした老紳士が、銅製のフライパンを錬金術師のように操っている。卵を割る音が教会の鐘のように清冽だ。
現れたオムライスは生物学標本のようだった。半熟の黄身が薄絹をまとった古代都市のドームか、地殻変動で現れた黄金の泉か。ナイフを入れると、記憶の封印が解ける。
トマトの酸味とフォアグラの深みを併せ持つ謎のソースが、舌の上でフラメンコを踊る。中から現れたのは、松茸と謎の赤い実のコンフィ。突然、祖母が病床でつぶやいた言葉を思い出す。
厨房から聞こえる岩崎老人の咳払いが、チェロの重低音のように響く。窓ガラスに映る自分の目が、なぜか少年時代の祖母に似ている気がした。ふとテーブルの下を見ると、銀杏の葉が一枚、消えかけたインクで「1946.11.3」と記されていた。
帰り道、スマホの食べログを開く。銀杏亭のページは存在しない。いや、正確には検索結果が常に波打ち、星の数が4.8と3.2の間を振動しているのだ。近所のコンビニで買ったブラックコーヒーが、突然、あのデミグラスの余韻を帯びてきた。
荒木さんへの返信欄に指をかざす。「今回の原稿、たっぷり文学性を仕込みました。でも本当の謎は、私がいつからこの店の継承者候補になったのかということです」
送信ボタンを押す直前、画面が銀杏色に輝いた。ふと気付けば、手の甲にシミのように滲んだソースの跡が、月齢図のように瞬いていた。
exciteによれば、ノーパンしゃぶしゃぶは飲食店という扱いであり、風俗店とは異なり「飲食費として領収書を落とせる」ことにより、国家公務員の接待に利用された[1]。
朝日新聞出版/週刊朝日によれば、この事件で話題となった店舗については、新宿区歌舞伎町にあった会員制の店舗であり、コースの料金は2時間で税込み1万9980円と言うもので、フォアグラや松阪牛などが提供されていたと言う。また、従業員の証言によれば、接待する側は冷めていたが、接待される側は「一心不乱に見ている」状態であったと言う[3]。
また、講談社・「週刊現代」2016年12月17日号掲載「風俗界の大発明『ノーパン喫茶』は、こうして男たちをトリコにした」において、みうらじゅんは「ノーパン喫茶は若年層に人気があったが、ノーパンしゃぶしゃぶはオッサンに人気があった」と述懐している[4]。
「死刑にしましょう。現場での目撃証言はあやふやだけれど死刑にしましょう。被告人の部屋から押収された毒物が犯行に使われたものかどうか確たる証拠はないけど死刑にしましょう。現場に別の毒物らしき瓶が落ちていたという証言があるけれど、気にしないで死刑にしましょう。証拠も証言も関係ない、高級外車を乗り回しブランド服に身を包み、フカヒレやフォアグラを食べていたのだから死刑にしましょう。それが民意だ、それが民主主義だ、なんて素晴らしい国なんだ」
「民意なら正しい、みんなが賛成していることなら全て正しい、ならば、みんなで暴力をふるったことだって正しいわけだ。私のパートナー弁護士をよってたかって袋だたきにしたことも、民意だから正しいわけだ。……冗談じゃない……冗談じゃない!」
「本当の悪魔とは、巨大に膨れあがったときの民意だよ。自分を善人だと信じて疑わず、薄汚い野良犬がドブに落ちると一斉に集まって袋だたきにしてしまう、それが善良な市民たちだ」
「だが世の中には、ドブに落ちた野良犬を平気で助けようとするバカもいる。己の信念だけを頼りに、危険を顧みないバカがね。そのバカのおかげで今日、江上順子さんは民意の濁流から逃れ、自分の意思で証言をして下さいました。それは江上さんたった一人かもしれませんが、確かに民意を変えたのです。私はそのバカを、誇らしく思う」
「民意などというものによって人一人を死刑にしようというのならすればいい。所詮この一連の裁判の正体は、嫌われ者を吊そうという国民的イベントに過ぎないんですから、己のつまらない人生の憂さ晴らしのためのね、そうでしょう醍醐検事」
「あなた方五人はなんのためにそこにいるんですか? 民意が全てを決めるなら、こんなに格式張った建物も、権威づいた手続きも必要ない。偉そうにふんぞり返ってる爺さんも婆さんも必要ない。判決を下すのは、断じて国民アンケートなんかじゃない。我が国の碩学であられるたった五人のあなた方です。どうか、司法の頂点に立つものの矜持を持ってご決断下さい。お願いします」
コメにバンコクのレストランでの存在しない記憶体験書いてくださった方がおり、出張と重なっていたこともあり勢いで行ってきた、ほんとに今さっき。
前に書いた増田
https://anond.hatelabo.jp/20240914232747
店を教えてくれた方
https://anond.hatelabo.jp/20241010005731
バンコクのプルンチット駅のホテルオークラにあるエレメンツ。タイの公式観光サイトでも紹介されていてあのマシュマロマンにも認められた名店だ。
まあそれなりの値段ではあるもののゴチレベルのスゴイタカイ感じではなかったため、勢いでメール予約した。ただし予約後に一部前払いしないといけなかったのでちょっとびっくり。
プルンチット駅含めてのロケーションは静かで綺麗で落ち着いた印象。まあ流行りの某駅まわりはアカン葉っぱの看板がやたらめったら増えたので余計にそう思うのかも。内装が海外とは思えないぐらいぴっちり綺麗だった……。
まずテーブルにデカい碁石みたいなのが置かれていく。碁石のはしっこには可愛らしいあひると、ケーキのミニチュアと、そして小さいタルトがのっかっている。ウエイターさんの英語が流暢すぎてよくわからないものの、あひる、ケーキ、タルトの順で食べろということだ。
緑がかったつやつやのあひるは、小さな花が散りばめられたクッキーでできた台の上に乗っている。初っ端から可食部が分からないやつがきてしまった。昔コラボカフェとかのキャラが印刷されたウエハースを発泡スチロールと思い込んで避けて残したことを思い出すものの、さすがに花は発泡スチロールよりはちゃんと胃で消化されることだろう。花ごとあひるを口に入れるとフォアグラの味とサクサクとした食感がする。シンプルに美味しくて見た目が良い枠だ。
次のケーキは、便宜上ケーキと言っているがイクラが乗っかっている。そのまま食べるとほんのり魚介のテリーヌの味で、ディルの香りがする。時間差でこぼれたイクラがはじけて味変して面白い。
最後は胡椒のかかったクリームのミニタルト。こんなの絶対おいしいよ。タルトがサクサクしてたぶんホタテみたいなクリーム、その中に強烈なうまみ、そして、シャキシャキの……これはたぶん長ネギのはずなのだが、長ネギの中でもSSRのスーパー長ネギを複数本引いて重ねてボーナスまでつけて強化でもしたかのようなLRレジェンド長ネギ+99みたいな長ネギが満を持して出てきちゃった。サクサクシャキシャキシャキシャキジャキジャキ……歯応えがよすぎるうえに後を引く。今いちばん好きな食べ物聞かれたら絶対この長ネギって言うわ。MVS(モーストバリュアブル食材)だわ。
次にパンが3種類やってきた。ウエイターさんはどれにする?と訊いてきたがイヤしんぼなので3個もらえないか聞くといいよとのこと。ツチノコの形をしたソフトフランスときめ細かいクロワッサン、あとよくわからない真っ黒なパン。同時にバターが2個出てきたが、片方はどうやらみそバターということらしい。
ツチノコフランスは初見普通に美味しいフランスパンだったが、試しにみそバターを塗ると豹変した。インチキ英語力の私にはみそバターなのかどうかすらわからないが、これは、美味いハムの味だ。おめでとう、ツチノコは生ハム原木に進化した!
クロワッサンは、純粋にクロワッサンとしか言いようのない味であるものの、これもまた不思議なクロワッサンであり、脳の中に直接うまあじと多幸感が送り込まれてくる。これは紛れもなくカロリーの味だ。数ヶ月苦楽を共にしてきたあすけんの女の血の気が引いていく。飽和脂肪酸、禁じられたそれに手を出してしまったんですかと震える声がする。その罪悪感が多幸感を倍プッシュする……罪の味ほど美味いものはないのかもしれない。
黒いパン。これは普通の良いパン味のような気もしたが、食べたことのない食感だ。ちぎったところで別にトーストされたわけではないバターロールのテクスチャなのだが、歯触りが胡麻でも練り込んだみたいにプチプチで面白い。みそバターにもよく合って美味しかった。
ブリのカルパッチョにウニのエスプーマ、ペアリングのコンブチャ。
ウニは見た目どおりストレートに美味しい。ブリを一緒に食べるとこれが複雑な味になる。わざと奏でた不協和音みたいなえぐみのノイズが入る。好きだった地元のラーメン屋のスープの、今はもう失われてしまった大好きなあのえぐみに少し重なった。切ない。
ペアリングのコンブチャを一口。コンブチャってタコピーに出てきたアレだなあ、ピーチウーロンとかアップルグリーンティーみたいなノリかなと思って軽い気持ちで頼んでみたらドギツイ酢だった。普通に果実酢。これはそういうものらしく、単純にリサーチ不足。だけどウニコンブチャブリコンブチャと繰り返し口に運んでいくと、何かが「理解って」いく。そういうことね、完全に理解したわ。
鯛のムニエルが運ばれてきた。最初は鯛とイクラだけが皿に乗っていたが、後からウエイターさんがバターソースをかけてくれた。ライブ感。
ナイフを取ろうとしたら、その場所にはペインティングナイフみたいなのが置かれている。明らかに切るには向いていないペインティングナイフでどうせぇっちゅうんやと思ったものの、鯛の皮はパリパリで身はほぐれやすくてイクラとかソースとかをすくうにはちょうど良かった。
鯛の皮はパリパリサクサクのいいしょっぱさで、普段は焼き魚の皮アンチの私でも永久に食べていたいと思うぐらい。身も柔らかくまったりとしたバターソースと上手く調和していてとても美味しい。そして主役を食うぐらいの主張をするのがソースに浮かぶイクラだ。プチプチとかじゃない。バツン、バツンぐらいの弾け方をしていて大変に良い。いつもスシローとかで食べている無抵抗なイクラとは全然違う。まあ人間にも自分のような凡人もいればオオタニサンだっているんだしそんなものなのかもしれない。凡人でも頑張ればイクラ界のオオタニサンを口にできるのである。しらんけど。
食用の鳩が映える塩竈に包まれてやってきた。塩竈をはずしながら、ウエイターさんが流暢な英語で説明してくれる。10%ぐらいしらわからんものの、鳩は骨だらけだから後でもう一度持ってくるから撮影用に持ってきたんだよということだそうだ。実際めっちゃ映える。
しばらくするとさらに調理された鳩がやってきた。盛り付けが素晴らしく綺麗だった。鳩なんて後にも先にも今しか食べないものだから、味なんて想像すらつかないのでおっかなびっくり口に入れる。お肉はレアでしっとりと柔らかく、ちょっとだけレバ刺しの感じがしてそしてほろ苦い。付け合わせの玉ねぎがこれも甘さ辛さ食感と三拍子揃っていて良いアクセントになっている。ただやはり日本人には食べ慣れない味かもしれない(し、生っぽい鳥類はどうしても怖い)……これはちょっとだけ選択肢をミスしたと思われる。情報元の方と同じ牛肉にしておくべきだったかな。
何を言っているのかわからねーと思うが、メニューに無いデザートとメニューにあるデザートとメニューに無いデザートが出てきた。
まずメニューに無いやつ。かぼちゃのかき氷とアイスクリーム。これはちょっと全体的に酸っぱくて好きな味ではなかったかも。上述のとおり酸っぱいのが嫌いなわけではないものの……。
つぎにメニューで選んだやつ。キャラメルプリンのようなものとアイスクリーム。キャラメルプリンだけ食べてみるとちょっと野暮ったい印象。だけど飾りのクッキー細工と一緒に食べると甘さと苦さと食感が程よくなって楽しい。アイスクリームのほうも甘すぎないミルク味でいい感じ。逆にアイスクリーム単体だと物足りない甘みだから、匙加減が絶妙だと思った。
さいごにまたメニューに無いやつ、アンコール枠。テーブルに箱が置かれて小さなデザートが置かれていく。マカロン、クリームのはさまった抹茶クッキー、フィナンシェ的焼き菓子、ネスプレッソのカプセル……ネスプレッソのカプセル。二度見したけどやっぱりネスプレッソのカプセル。まんまキラキラで2色のやつ、マシンのスターターキットにいくつかだけ入ってる普段使いはできないレアなほうのカプセルでしかない。
ギョッとしているとウエイターさんが「これはスペシャリテのチョコレートだよ」と教えてくれた。しかし何故この形にしたグランプリ最優秀賞という感じではある。作ろうと思って精巧に作れたからお出ししたのかもしれない。そんなことを思いながら食べてみるとチョコレートの中にふわりとオレンジの味がする。騙し絵グルメとしてかなりの完成度でとても良かったです。
マカロンは美味しい(ねちょっとしない)タイプでアーモンドとフルーツのフレーバーがして、クッキーサンドはしっかり抹茶の味がしてこれも美味しくて、ハロウィン仕様でカボチャ型の焼き菓子も、焼き菓子のなかでは弾力があって不思議な食感だったもののとても美味しくいただけた。
味で色々な気持ちになれて楽しい良いお店でした、ウエイターさん達もタイ人あるあるのすごく優しくて色々教えてくれて高いホスピタリティを感じたものの、あまりにも相手の英語ペラペラすぎて何が何だかわからなかったです、美味しかったです、情報ありがとうございました!
気づいたら伸びてた、ありがたい。
店の名前言った方がいい→これは何人か推測されてる通りKOZO、ありがとうKOZO。
金に糸目をつけない美食か→決してそこまで敷居は高くない。食べログに値段出てたけどソシャゲのガチャ20連と同じ程度なので庶民にも十分手が出る。何に価値を感じるかってあると思うけどこれは本気でいい体験だった。
ステマとかではない。よっしゃ再訪のチャンス!とか思っていたらお店が閉店になっていてショックを受けた。
なんなら親の還暦祝いを絶対そこでしたかったぐらいの勢いだし親が死ぬまでには、いや自分が死ぬまでにもう一度あの店(シェフ)の料理を食べておきたいと思った。
辞めた理由ってのもあるだろうけど正直有名店の半額以下だしコスパ良すぎて儲からないなら倍払っていいまであるからもう一度店出してという、中毒患者の呻きみたいなものだと思ってほしい。
京都にあるガストロノミーのお店。分類がこれであってるかはわからんけど一見これ食べるの……みたいな騙し絵的な料理が出てきたらだいたいこう言ってる。
同僚とランチをしに行った。値段は安くはなかったのだが、この食事、いや、体験に比べると絶対に安い。繰り返すようだが別の店で倍払ってもなかなかこうはならない。ならなかった。ガチでオモコロの「味でめちゃくちゃになりたい」ができる店だった。
まず前菜ではなく、いきなりフィンガーフードとよばれる小さなおつまみみたいなものがやってきた。この時点では我々はシェフの力量を知らず、一気に不安になってざわついた。だってあんまりにも小さいんだもん。小さい、ホタテとトマトソースがのったタルト。こんなの一瞬でなくなっちゃうよ……そう思いながらとりあえず食べる。
──凄まじいとしか言えなかった。最初は普通にホタテの旨み溢れる味わいだったのが、次の瞬間ドライポモドーロの奥行きのあるソースが支配的になる。最後はタルトをかたちづくる良質な小麦粉の素朴でいて贅沢な味わい。こんなに小さいのに、こんなに激変する。これはボヘミアンラプソディと同じぐらいの変わりっぷりでいて、そして同じぐらいのまとまりだ。
「なんか、ディズニーランドに行った記憶とか、パレードみたいな味がする。すごくないですか?」同僚はそう表現した。語彙を失って壊れたように「おいしい、これおいしいよ!」と繰り返す自分とは大違い。たしかにこれは極小のディズニーランドであり、エレクトリカルパレードであると首を縦に振った。ふたりして若干何かを吸った後の人みたいになっているが何も吸わずにこれはひたすらすごいことである、経済的なうえに健康的だ。
次に来たのは本日のお目当て、「盆栽」である。といっても全てが食材で作られたミニ盆栽である。フォアグラの入ったなめらかなマッシュポテトの土に、青のりの苔がむしている。ディルなどのハーブを飾ると大自然の植生があらわれ、そこに黒白の米で枯山水が設えられている。
はっきり言ってこれは普通に盆栽の見た目である。レストランよりホームセンター、いや、オシャレ花屋さんあたりにお還りとでも言いたくなるぐらいだ。ただし、さっきのディズニーパレードのおかげでこのシェフに絶対的な信頼感が生まれていたわれわれは臆することなく土や石にスコップを入れて、自分の口に放り込んだ。
「石!おいしい石!すごい!」人生で石が美味いなんてなかなか出る言葉ではないだろうが、だって石がおいしいのだから仕方がない。フォアグラポテトの土はひたすらなめらかで濃厚で、そこに海苔とハーブで味の奥行きが作り出されている。さらに、枯山水の米がパリパリプチプチと舌触りのアクセントを生み出している。こんな佇まいなのになにも難しいことはない、「無限に食えるやつ」なのだ。こんなことならミニではなくノーマルサイズの盆栽で良かったのに……あっという間に盆栽は消えてなくなってしまった。
ここまででじゅうぶん楽しかったのに、ようやく前菜がお出ましになる。蛤と椎茸に出汁ジュレが乗って菊の花びらが散らされている。今までとは違ってハッキリと高くて美味い見た目である。そして──この一皿は見た目に違わぬ高いパフォーマンスを見せてきた。
まず一口食べてみる。ぷりぷりで柔らかな蛤が爽やかなジュレで包まれてもう大好き。そのままのテンションで奥に進む。スモーキーな椎茸としゃっきりと野菜が口の中で主張する。
次、次と進むとどこかからぷちぷちとした食感が弾けて、柑橘のシャキッとした引き締めに行き当たる。計算されつくした絶えず移り変わるその味わいは、ただの層のある料理とは違う。不思議のダンジョンの階層ぐらい全然違う。もうダンジョン飯だし私のためのパーティー開かれてる。最高。未知の階層への好奇心のままに食べ進めると、あっという間になくなってしまった。かなしい。
そしてメインの肉料理。皿に配置された料理とソースがまるで絵画に見えてしまう。赤蕪のほろ苦さや素揚げされた蓮根の歯触り、そしてもう一度出会えた無限マッシュポテト。今度はチーズ風味でさらに止まらない度がアップして帰って来てくれた。かなり嬉しい再会だ。同僚とうわごとのように「無限に食える〜」と繰り返してしまった。
しかし肉料理の話だから肉の話をせねばなるまい。肉は鴨肉のローストで、みるからに食欲をそそる茶褐色のきのこのソースがかかっている。
肉を食べると、鴨の味と並走するかのようにはっきりと存在するはずのないクレームブリュレの味がした。何を言ってるのかわからねーと思うが、何をされたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……。
存在しないその味の記憶にたじろぎながら控えめに同僚に「これ、クレームブリュレの味しません……?」と言ってみるとすかさず「思いました!」と返事があり安堵した。いや、集団でスタンド攻撃や呪術をうけていたなら安心して良くはない。ただしっかり破綻せずに美味いので幸せならオッケーである。
出てきたものの半分も紹介できていないが、しっかりとボリュームがあり、はっきり全てが美味しかったし、それ以上に驚きと楽しさがあった。正直なところガストロノミーに半信半疑だったものの、こんだけパレードで不思議のダンジョンでスタンドの気配まで感じられて、十分に味でめちゃくちゃになれてほんとうに行って良かった店だった。
叶うならもう一度再訪したい。叶わなければそれでも一生に1番レベルで美味しかったとシェフに伝えたい。こんなところに書いて伝わるかは知らんけど……。
Permalink |記事への反応(11) | 23:27
フランス料理ってコースばっかりのイメージで、たまに定食形式で一品ドンと食わせてくれよって思う。
俺のフレンチとかあった気がするけど、あれがそうだったんたろうか。昔ちょっと話題になってたけどあんまり浸透してるイメージはない。
何かしらのオードブルが出て、何かしらのスープが出て、グラニテが出たり出なかったりして、何かしらのソースがかかった何かしらの肉や何かしらの魚のポワレなりパイなりが出て、デザートとコーヒーで〆る中で「これぞフレンチ」って感じのものがあんまり浮かばない。この食材を使ったこの調理法のコレ!って感じのが。
ロシアならボルシチピロシキなり、イギリスならフィッシュアンドチプスなりジェリードイールなり。アメリカもチリコンカーンやらハンバーガーやら、分かりやすい感じの代表メニュー的なやつがある。中華なんて日式の微妙なラインも含めたら無限にあるのに。
コロッケがフランス料理というのは有名な話だけど、ひき肉混じりのハッシュポテトを揚げたいわゆる日本のコロッケがそうかと言われると微妙っぽい。
エスカルゴもサイゼ以外では中々見ない。あそこ一応イタリアン名乗ってるし。
フォアグラもそう日常的に食うもんでもない。自分の肝臓がフォアグラになっちゃうし。
イタリアンは定食かと言うと微妙だけど、それこそピザパスタのメイン一品軸でサクッと楽しめる。フレンチもそんな感じで食いたい。
フランス人とて毎食毎食コース料理食う訳でもなかろうし、日常的な飯の中で自然に入り込んでくるフランス色みたいなのを楽しみたい。