
はてなキーワード:溶岩流とは
岩手県内陸北部を2つに分けるとすれば、国道4号周辺と国道282号周辺となるだろう。国道282号沿いが八幡平市である。
名前の通り、ここの一番の見どころは八幡平である。八幡平そのものはなだらかな山ではあるのだが、岩手山の裏側からこの山周辺までがだいたい八幡平扱いされている。最近一番注目されているのは鏡沼。雪解け時の、沼の周辺だけ雪が融けて中央部に残っている状態を"ドラゴンアイ"と名付けたのは台湾の人らしい。というわけでここはこれが見られる6月上旬だけ典型的なインバウンド観光地となっている。ただ、Google Mapsでも開いて探してみてもらえばわかるが、この鏡沼、八幡平市にはない。八幡平は岩手と秋田にまたがった山で、この沼は秋田県に属した場所にある。まあこの場所のPRはなぜか岩手が励んでいるのではあるけれどね。夏はこの沼からほど近いところにある八幡沼近辺の方が見どころかもしれない。秋には山全体で紅葉の名所となる。
ドラゴンアイが見られる近辺の季節にはまだこの辺には雪が残っていて、八幡平山頂近辺まで登る道路だけが除雪される。この結果この道路、八幡平アスピーテラインは雪の回廊となる。立山ほどの高さではないが、それでも7mはある雪の回廊はそれだけの見どころになる。
アスピーテラインに沿って登る最中にコンクリートのアパート廃墟と思わしき建物が見えてくるが、これが松尾鉱山宿舎跡。ただこの宿舎の建物に近づくことはちょっと難しい。あくまで道路周辺から見守ることしか出来ない。いちおう松尾鉱山の中和処理施設(事前予約で団体のみ見学可能)に行く途中に1棟だけある建物(旧独身寮)の側に行くことは可能。ただこちらも建物には入れない。これらの廃墟に興味がある向きは、さらにアスピーテラインを降りたところにある松尾鉱山資料館を訪ねるといい。入場無料で資料が充実している。この近辺が八幡平のリゾートととしての入口(別に中心ではない)である。
アスピーテライン側から川(松川)を渡ると、その近辺のエリアが八幡平温泉郷である。個人的にはそのほぼ入口にあるトラウトガーデンが、5分で釣りを楽しめる釣り堀としてお勧めだったのだが随分前に閉鎖して、今はクラフトビールの工場になっている(見学は基本受け付けていない)。八幡平温泉郷はいくつも宿泊施設があるのだが、そのいくつかだけが日帰り入浴解放していて他は宿泊者のみ利用可だったりする。たぶん日帰り入浴施設として作られた森乃湯を利用するのが一番わかりやすい。
この近辺から松川に沿った道を登っていくと松川温泉があり、さらに登っていくと藤七温泉があるのだが、松川温泉から藤七温泉への道路は現在通行止めで通れない。藤七温泉に行くためにはアスピーテラインの頂上付近から降りる必要がある。
八幡平市は漫画家・小田ひで次の出身地であり、282号で八幡平市の入口近辺となる大更周辺は彼の著作で舞台になったこともある。そんな大更にある酒蔵が鷲の尾。いちおうここも見学を受け付けている(要予約・期間限定)。ただ、県外では幻の酒扱いされているけど、岩手県内ではそれほど珍しくなく飲める酒なので、盛岡に泊まった時に飲むほうが馴染みがいいかもしれない。
大更から282号を南下すると道の駅にしねがある(別にここで自殺勧告をしているのではなく、この近辺が旧町名"西根")。この近辺から岩手山方面に向かうと焼け走り溶岩流がある。これは数百年前に岩手山が噴火した時に出来た溶岩流の跡地で、現在も溶岩流だったらしき岩石で覆われていて草木はほとんど生えていない。これは一見の価値がある。
大更から282号を北上すると、平舘を経由して安比高原に近づく。安比高原は春~秋もリゾートとしていくつかの施設が稼働しているけれど、基本的には宿泊者向け(日帰りでも使えるけど)。温泉的には、そこから少し北に行ったところに日帰り入浴できる施設が2つあり、どちらも個人的にはお勧め(ただ、片方は最近閉館したらしい)。さらに北に走っていくとふうせつ花という豆腐店があり、ここの豆腐ドーナツは(豆腐よりは)日持ちもするし、お土産に買うにはちょうどいいと思う。さらに北に行ったあたりが東北自動車道の安代JCTで、これに面した新安比温泉(ここまでの説明の通り、安比高原からはかなり離れている)は岩手唯一の強塩泉で泊まるときも日帰り利用もどちらもお勧めである。
ハワイ島の東の果てが噴火で大変そうである。ただ、あの噴火の起きてるあたりはあんまり観光客が通る所ではない。
もう大分昔前の話だが、ベタな僕たち夫婦はハワイ島に新婚旅行に行ったのだった。両方とも結婚式とやらは頑としてやる気が起きず、その結果、双方の両親から若干多めの祝儀を頂いたので贅沢が出来るという事情もあった。カミさんは英語とフラが出来、僕は運転と旅行の手配が出来る。なので、あの辺を旅行するにはちょうど良いコンビ。長い協議の末、僕らはレンタカーで島を半周して帰るという1週間の旅程を組んだ。
今も当時も、ハワイ島の活火山というのは観光資源だ。島の南側の内陸には直球すぎる「ボルケーノ」という地区さえある。僕らは道中そこで一泊して、溶岩流が流れているのを見物しに行くという計画を立てた。これをすると、今噴火しているレイラニの外縁をかすめて海まで下る道を通ることになる。
さて、その道のことだ。ちょうどそのレイラニの外縁をかすめるあたり、若干曇りがちの道の先を歩いている人が道に向かって親指を立てている。今なら「いいね!」だが、フェースブックはまだ有名じゃない。万国共通ヒッチハイカーだ。
僕は全くそういうことをする人間じゃない。しかし、なぜだかこのときはやや急ブレーキ気味に車を止めた。カミさんはやや不審そうに僕の方を見た。
ハイカーは、若干ヒッピーっぽいというかサーファー風というか、こ汚めの白人の男である。おっさんとまではいかないが、そこまでは若くないはずだ。たしか空のペットボトルがいくらか入ったビニール袋を持っていた気がする。まあ、とにかく若干怪しい風体ではあった。だが旅の気楽さか、アロハの心が移ってきていたのか、とにかく、気まぐれで僕は車を止めて彼を拾った。向こうも向こうで、謎の東洋人夫婦をみて少し面食らったようだった。止まってくれればラッキー程度の軽い気持ちだったのかもしれない。そういうこと、あるでしょ?
後部座席に収まった彼が言うには、僕たちの行こうとしている溶岩流へのちょうど道なりにしばらく乗って行けば、大分歩かなくて済むらしい。天気も怪しい。一方で僕たちも寄り道はせずに済むので、彼が言う辺りまでのちょっとの間、一緒にドライブをした。まあ、こういう時どうすればいいのか、よく解らないのはお互いさまだったと思う。そして彼が言う地点で車を止めると、別れ際に礼のつもりなのか、やはり何かの気まぐれだったのか、こんなことを言い出した。
「いいか、君たち。この先の道を行って、何某というところで曲がって海に出な、そこの夕陽は、それは見事なものだ。今日はちょっとダメだけど、明日は晴れるであろう。見て帰ってくれ。乗っけてくれてありがとう。絶対見てくれよな」
ただ残念、僕たちには僕たちの予定があったし、彼には信じがたいことかもしれなかったけれど、次の日にはまた別の街まで進まなきゃいけないのだ。だから僕たちは彼にやっぱり礼を言ったけれど、そこに行くことはしなかった。その後も今までもう一回ハワイ島に行くことはなかったし、国内含めて-そもそも国内ではあんまり見ないけどねー、ヒッチハイカーを拾ったのはこれが最初で最後だった。
テレビのニュースを見て思い出したのは、あの男である。火山に追われ、避難先でインタビューに答える住人は、なぜかやっぱり若干小汚くヒッピー或いはサーファー風味。あの男ではないにしろ、なんとなくその風体は、彼を思い出させるものだった。まあ、今思えば普段着なんてあんなもんなのかもしれないけれど。
とにかく、あいつは息災だろうか。