
はてなキーワード:植木とは
裏庭でのマヨネーズグルメ実験は、私たちの新しい日常になった。ポテトチップスに、庭で採れたトマトに、泉がこっそり作ってきたオムレツに。エイリアン・ソースをかけた瞬間、世界は味覚の頂点に達した。
しかし、私の胸には別の熱があった。それは、世界を覆った「膜」のせいで中断してしまった、高校サッカー最後の大会への想いだ。私はエースストライカーとして、全国制覇を夢見ていた。世界が変わって以来、サッカーボールに触れることさえ億劫になっていた。
ある日の午後、泉がエイリアン・ソースをかけた焼きそばを差し出してきたとき、私は思わず言った。「こんなに美味いソースがあるのに、この世界じゃ、もう誰とも勝負できないんだな」
泉は、静かに私の目を見つめた。「誰とも? 私がいるじゃない」
次の瞬間、彼女は植木鉢があった場所――あの光の柱が昇った地面を指さした。「この『膜』が世界を閉ざしたんだとしたら、その法則を決められるのは、私たち二人だよ。ねえ、試してみようよ、あなたのサッカー。このソースが生命力を高めるなら、あなたの身体能力も極限まで高まるはず」
泉の言葉は、私のスポ根魂に火をつけた。彼女が作った、エイリアン・ソースまみれの「エナジー焼きそば」を平らげた私は、その夜から猛烈なトレーニングを再開した。世界が停止したことで、学校のグラウンドは貸し切り状態。泉は植木鉢の場所で、エイリアン・ソースを混ぜ合わせながら私を見守る。
「私のソースは世界一。だから、あなたも世界一にならなきゃね」
彼女の期待を背負い、私はボールを蹴る。ソースの力か、泉の視線のおかげか、私のシュートは以前より遥かに鋭く、速くなっていた。私たちの特別な愛と秘密は、世界を閉じ込めるだけでなく、私を世界最高のストライカーへと導こうとしていたのだ。私のゴールが、この閉ざされた世界を再び動かす、唯一の希望のように思えていた。
数日後、植木鉢から異変が起こった。土の表面がひび割れ、そこから淡い光が漏れ始めたのだ。夜の裏庭で、泉と二人、膝をついてそれを見つめていた。光は、まるで夜空に瞬く星々を集めたように強く、美しかった。
「ねえ、本当にエイリアンかもね」泉が囁いた。その声は震えていたが、恐怖よりも高揚感が滲んでいた。
次の瞬間、植木鉢は音もなく砕け散り、中から巨大な光の柱が天空へと伸びた。それは、まるで世界を繋ぐ、あるいは断つための、決定的な合図のようだった。光が収まると、そこには何も残されていなかった。ただ、植木鉢があった場所から、私たちと泉を包むように、薄い、透明な「膜」のようなものが広がっているのが見えた。
翌朝、ニュースで世界が変わったことを知った。地球を取り囲むように出現した、謎のエネルギーフィールド。それは、通信や交通を麻痺させ、世界を分断した。そして、そのフィールドの発生源とされた場所――それは、私たちの街の、この裏庭だった。
「私たちが、世界を変えちゃったんだね」泉が、不安と、ある種の満足感をもって言った。世界が危機に瀕し、その鍵を握るのが、私たち二人で埋めたあの「卵の素」だった。
世界は泉と私の秘密と愛を中心に回り始めた。私たちだけの世界、誰も立ち入れない、二人だけの「小さな箱庭」が、文字通り世界を覆ったのだ。もし、このフィールドを消滅させれば、世界は元に戻るかもしれない。でも、そうなれば、泉との特別な関係も、この秘密も、普通の日常に埋もれてしまうだろう。
私たちは「禁断の場所」の観察を日課にした。妹は毎朝、学校に行く前に植木鉢を覗き込み、私は放課後、誰にも見つからないように裏庭へ急ぐ。そんなある日、私は庭の隅で、予想外の人物と鉢合わせした。
「何してるの?」
透き通るような声に振り向くと、そこに立っていたのは、あの「卵の素」をくれた少女、泉だった。彼女は、制服のスカートの裾を少し汚しながら、植木鉢を興味深そうに見つめている。私の心臓は、見つかってしまった焦りよりも、彼女がそこにいるという事実に、大きく脈打った。
泉はふわりと微笑んだ。「ふふ。知ってるわよ。私が『卵の素』をあげたんでしょう?」
彼女の目には、私と同じ種類の、好奇心と秘密を共有する喜びが宿っていた。私は、車の中で隣に座って以来、ずっと心の中で彼女を特別な存在として意識していたのだ。彼女の白い指が、そっと土に触れる。
「ねえ、これ、もし本当に生まれてきたら、私とあなたが、二人だけの親になるんだよ」
その言葉は、思春期の私にとって、あまりにも甘く、そして危うい響きを持っていた。エイリアンだとか、怪獣だとか、そんな恐ろしい想像が一瞬で吹き飛び、代わりに、泉と二人で何かを育て、秘密を守り続ける未来が、目の前に広がった。その瞬間、私の「秘密の実験」は、泉への、ほのかな恋へと姿を変えたのだった。彼女の指先が土を撫でる仕草に、私はどうしようもなく見惚れていた。
透明な器の中で白濁液と混ざり合う「卵の素」は、淡い黄色を帯びた、なんとも言えない不気味な光を放っていた。泡立ちながら、ねっとりと互いに絡みつき、次第に均一な粘度の高い塊へと変貌していく。 「ほら、見て。やっぱり生きてるみたい」 そう呟いた私の声は、ひどく上ずっていた。妹は目を輝かせながら、「早く、次の材料を!」と急かす。私たちはこの「エイリアン液」を、小さな古い植木鉢に入れ、庭の隅に埋めた。土をかぶせ、二人で呪文のように意味不明な言葉を口にする。少女がくれた「卵の素」と、図書室でこっそり見つけた古文書に載っていた「魔法の白濁液」の調合法。すべては、あの本に書かれていた「生命を宿す儀式」の通りだ。 もし本当に、この土の下から何か生まれてきたらどうしよう。エイリアンかもしれないし、恐ろしい怪獣かもしれない。しかし、そんな恐怖よりも、未知への期待と、秘密を共有する興奮が勝っていた。 「これで、きっと明日には…」 妹と顔を見合わせ、夜の闇の中でひっそりと笑い合った。その日から、私たちにとって植木鉢の場所は、世界で一番大切な、禁断の場所になった。
みなさんはおそらく、探偵にマークされたことはないだろう。稀代の悪党モリアティ教授ならいざ知らず、庶民の接点といえばせいぜい、パートナーの浮気調査か結婚相手の身代調査くらいのはず。私は某国で貴重な経験をした。探偵の博物館は存在するが、その体験アトラクションを提供してくれるところはない。
断っておくが、私に疾しいところがあったわけではまったくない。実は、本社のやつらがとんでもないバカをやってくれたせいで、このような目にあったのだ。もちろん、やつらは「私の意を汲んだ償い」をするものと信じている。
さて、以下の話は、世紀の名探偵シャーロックホームズに敬意を表して、「イギリスの首都ロンドン」で起きたと仮定する。
物価がやたらと高く、専用シャワートイレつきの1Kを借りるとなると、当時のレートで月20万円からだった(社宅だと半額)。共用だと月15万円前後だったろうか。私がそこに決めたのは、他に選択肢がなかったこともあるが、木の茂った庭がついていたことだ。扉と塀で、外から中は見えない。前の居住者が植物を植えていたらしく、雑草と共に花が咲く。ただし、蜂も山のように群がる。とうとう庭木が繁茂しすぎて屈まないと外に出られなくなったので、生まれて初めて剪定をした。これが意外と楽しく、やめられない。鋭い刃で、サクッと切れて、いい。音と手ごたえが快いし、景色も開けるのだ。
日が長い夏場は椅子にもたれ、酔眼で木を眺めて句を読む。俳句を少々嗜むのだ。ただ、携帯の電波はそこ一帯のみはじめから「なぜか」つながりが悪かった。携帯会社に文句を言っても、クーポンをくれただけで、一向に対応してくれない。
と言うことで、3年間何事もなく過ごしていた。
話し声がするのでしぶしぶ起きると、外に2人人がいるではないか。
「植木屋です。家主さんからあんたの植木の剪定を頼まれたんですよ」
と、のっぽとちびの二人組。残念だが庭師には見えない。どこか軍人らしい機敏さがある。家の前に、いかにも庭師ですといった風情の社名入りヴァンが止まっていた。ナンバープレートを覚えておく。
「その話は聞いてないんで今度にしてください」
とその日は追い返した。確かにこの前の日曜日、これまで一度も来たことのない家主がうちにやってきて、庭木の剪定が必要だなとは言っていたが。
しばらくすると、家主が暖房の動作確認をするといってきた。やって来たのは別の2人で、1人が暖房を開けてなにかしている間に(私は、あとで分解して、なにか仕込まれてないか確認した)、もう1人が家の正面写真を撮る。一介の技師にしてはあからさまに怪しいではないか。確かに、Googleマップでは道路と屋根しか見えない。私道を入った所に家の入り口があるので、ストリートビューも無効なのだ。「風呂場も改装する必要がありますね」などといってきたが、そこに何か仕掛けられても困るので、嫌だといっておいた。このとき、彼らは「道具」の一つを「忘れて」帰った。
コロナワクチンの案内が何度もきた。24/7で在宅なので、私を外出させてその隙に…
私は週に1, 2回買い出しに行く。その際、合鍵か七つ道具を持った誰かが空き巣に入っても困る。知り合いの警察官に教わった方法を試すことにした。玄関のドアの上部の隙間に、小さな小石を挟んでおくのだ。来客があると、小石はそこから落ちるので、後で分かる。買い物ルートは、歩くのが面倒で最短で往復したいので、ワンパターンだ。看板を持って立つ人、立ち止まって携帯でこちらを見ながら話す人、タバコを吸いますという顔でさりげなく店から出て来た人、路駐の車内で外を見ている人。怪しいといえば怪しい。
この時は、帰り道に二度、私が近づくと急発進もしくはその後にUターンする車を見つけた。もちろんナンバープレートは暗記する。家に帰ると、携帯に「XXXはあなたをフォローしました」とSNSの通知が入る。さすがにユーモアに手抜かりがない。これは、見せるための尾行、つまり標的に気づかせるための示威的な尾行だ。気にしなくていい。
あるとき、買い物途中の歩道で、隣人が時間潰しの顔つきで突っ立っているのを見つけた。彼が在宅だと、ドアをこじ開けるのに音が聞こえてまずいのかもしれない。
またある時は、この3年間一度もひと気のあったことのない医院の庭に、革ジャンを着て禿げた中年男が、通りに出る時必ず通る私道を見下ろしながら電話をしていた。
リモートワークが退屈なので、車通り側、つまり自宅の裏まで出てみると、運転席側の窓を開けた黒のBMWの車内に人がいて、サイドミラーで私が近づくのを見て急発進した。彼らは金があり趣味がいいのだ。テンペスト傍受という語がある。電子機器から出る微細な電波を専用機器で拾うことで、インターネットの通信を盗聴できるらしいのだ。これも知人に聞いた話だが、レーザー光を窓に当てその振動で室内の音を拾うことができるので、この場合は窓の外にブラインドをおろしておくのが有効だ。さて、こういう時は嫌がらせをするに限るので、早速警察に車のプレート番号を電話した。残念ながら、のちに警察署を訪ねた時知ったのだが、これらの記録、および緊急通報の記録は、署のコンピュータから「抹消」されていた。
自宅の裏、つまり表通りの路肩に駐車している車には、住人以外と思われるものもあった。たとえば、運送会社のヴァンがトランクを開けてずっと荷下ろしをしていたり、車の故障修理を装った人がいたり、このタイミングでやるのかと疑われる草刈りの人がいたり。また、以後は探偵の車はSUVに変わった。自宅と背を接している家(家主が同じ)はしばらく無人で、その後一度入居した家族も3日で「引越し」、おそらくその無人の家に交代で誰か潜んでいるらしい。あるとき壁越しに、トイレだろうが水を流す音がした。また、右隣の家の人も空き家になった。
気晴らしに飲みに行くことにした。歩いて10分。実は、iPhoneの最も左端のホーム画面の一角で地図を表示しているのだが、そこに日替わりで行きつけの店が「表示」されていたので、急に「思い出した」のだ。ここは、ビールの他に料理も美味しい、グルメ砂漠のこの島では貴重な店だ。カウンターで飲んでいたのだが、背中から誰かに見つめられていることに気づいた。いかにもオックスブリッジ卒業生でございますという知的な顔の若い女が、真後ろのテーブルでパソコンを広げていた。このような顔の人をここでみることはないし、そもそも女性客1人で、しかもパソコンを開いている人なんて、設定からして嘘すぎる。帰りにはいなくなっていたか、私が泥酔していたかのどちらかだ(店内を一周して確かめたので、前者です)。
ある夜、家の庭に、招かれない来客があった。というのも、私の庭の出入り口の木の扉は、重く、かつ傾いて接面が歪んでいたので、強く押さないと開かず、開けると地面を擦り、必ず音がする。
探偵であれば、例えば出口付近の木に対人センサーか録画機器を仕掛けたのかもしれない。
また、前面の塀(建て付けは古く甘いので隙間は簡単に作れる)に覗き穴と思われるものがあったので塞いだ。
これ以後、外出する時は、小石をドアの上、二箇所におくことにした。
ついに、庭師がやって来た。この前とは別人で、家主が契約している古馴染みだというので、監視して仕事させることにした。見ていると、どんどん植物を引っこ抜いて、木の枝を切っていく。枝というより、幹だ。剪定というより、丸坊主だ。あまりにも極端なので、家主に電話したところ、いう通りにさせろと言われたので、仕方なくそうした。
結局、短くしますといって坊主になったも同然で、木は葉が一枚もなく、幹も短く刈り上げられたか切り株だ。家主に写真を送ると、これは聞いてないということだったが、今更遅い。これまで植木のため外が見えなかったが、これではすかすかだ。
庭師のボスというのが夕方やって来て、満足そうに眺める。庭師は、「楽しい夜を(いかにも侵入を招きそうな庭の状態を指して)」と言って帰って行った。みんなグルなのだろう。ちなみに、出入りの修繕屋もみなヘッドホンをつけていて、指令をリアルタイムで聞いていたのだろう。
前面の塀は隙間だらけなので、古いシーツを巻きつけて塞いだ。
その夜、庭でライトがチカチカ瞬いた。右側の塀に設置してある、対人センサーで反応して点くライトだ。右隣の家の庭に、裏の空き家に潜んでいた人物が入り込み、センサーを反応させているのだ。
警察に泥棒の電話をしたが、「この日に限って」電波が途切れてなかなかつながらない。
裏の空き家に潜んでいる人物がいることは分かっていた。実は、私宛の郵便はいつも、なぜか裏の家のポストに届くので、家主に頼んで裏の空き家の鍵を借りている。そこで、「合鍵で裏の家に入ることにした」と呟いた。昼になると、荷物をまとめ、家を出た(会社支給のパソコンは冷凍庫に入れておいた)。出た途端、どこかに潜んでいた例の男(予想通り裏の家から炙り出されて来たわけだ)が現れ、走っていき、表通りに停めてあった車でどこかに消えた。無意味と思ったが、ナンバープレートは報告しておいた。
町で一番安い携帯とSIMを買い(SNSで「挨拶」があった)、ロンドンに向かう。
着いた駅で、ビールを飲みに店に入る。しばらくすると、目の前のテーブルに、チューリップグラスに入ったビール(オーダーできる最小容量で、会社がケチなのだろう)を手に中年の男が座り、SNSを見始めた。探偵だ。早く出ろ、という訳で。
何日かロンドンで過ごした。お付きの者はレストランでは外で待ち、バーでは視界に入る位置に腰掛け、ホテルでは外で待ち(一階で朝食をとりゆっくりしていたら、早く出ろと言わんばかりに、横断歩道の前から窓越しに写真を撮られた)、行く先々で車の見張りがいた。私が地図アプリで道順を調べるからだ。
問題は航空券購入で、やはり当地のカードでは決済が妨害され、日本のカードで買った。空港の駐車場でも、「送迎車」が何台も見送ってくれた。ナンバープレートは控えてある。
探偵には、相手のやり方が気にいらないときは、相手の嫌がることをする。これに尽きる。ただし、正面切ってやると相手がヒートアップするので、そこはうまくやる。
雑に園芸を趣味としている。草むしりは気が向いたらだし真夏日なんて暑いから草は放置で夕方に水遣りだけ。
全部植木鉢かプランター管理で基本的には果樹がメイン。気が向いた植物を無軌道に増やしているのでバラなんかもある。
去年や一昨年世間ではカメムシが多いと言われていた。庭にもぼちぼち見かけた。しかしそれだけだった。
なめてた。
木苺を伝わせている園芸棒にも朝顔を伝わせている園芸棒にもそれぞれ複数ずつ付いていた。やばい。
自分はそんなに虫が嫌いではない。レモンの葉を食い荒らすアゲハも百合に付くキモめの毛虫にしか見えないアゲハも許してきた。
バッタもカエルもトカゲも微笑ましく見守り、カラストンボに害があるといけないのでにっくき蚊対策も自分にかける虫除けスプレーだけ。
なんならひっくり返ったカナブンもセミも直してやる。邪魔じゃなければクモの巣もどんとこい。
ナメクジと葉巻虫以外は大体許して来た。
なんなら一匹程度なら壁に張り付いていても良い。
(byGPT-5 Thinkingon ChatGPT.com)
わたしは半影。
光と闇のあいだ、縁(ふち)に沿って生まれては、縁に沿って消える。
名前がなかったころ、ひとはわたしを気にも留めなかった。午下がりに白いカーテンがふくらむとき、戸口の敷居にやわらかな灰色が落ちるとき、わたしはただ在(あ)った。誰かの横顔にかすかに触れ、誰かの言葉の最後の音を拾っては、つぎの縁へと移った。
わたしが「初恋」という音の形を知ったのは、商店街の写真館の奥、暗室の戸が少しだけ開いていた夜のことだ。赤い明かりの下で若い男がフィルムを揺らしていた。湊(みなと)という名だと、別の日に彼の友人が呼ぶのを聞いた。
現像液の匂い、濡れた透明。湊の手は水面の光を撫でるみたいにやさしかった。戸の隙間からこぼれる赤が、わたしをかたちにした。彼がふと顔を上げて言う。「半分だけ写ってるな、でもそれがいい」
その言葉はわたしへの挨拶だった。わたしは戸口から室内へ、敷居という境界をまたいで、初めて自分の輪郭を保てた。彼は顔も上げないまま続けた。
「おまえ、名前がいるな」
彼はわたしを見ていなかった。けれど、半分だけの視線がいちばんよくものを見抜くことを、わたしは知っている。わたしはそっと彼の肩の影に寄り添い、声を探す。風が糸口になった。
――ペナ、と呼んで。
彼は驚いたようにまばたきをして、笑いながらうなずいた。「ペナ、か。ペナンブラ。半影。いいな」
その晩から、わたしはひとつの名を持った。名は重りであり、舟でもある。縁に引かれてばかりだった体に、初めて行き先という重みが生まれた。
*
湊は、縁に立つのが好きなひとだ。暗室のドアを半分開けたまま。障子を桟(さん)一枚だけずらして朝の光を漏らす。駅のホームでは、白線のすぐ手前。彼の言葉も半歩だけ余白を残す。
彼はよくそう言いながら、現像した写真を指の腹で撫でた。半分だけ写るもの、切り取りの端で震えるもの。わたしはそこに宿って、彼の指先の温度を覚えた。
「光の外側に、ほんとうの色がある気がする。目がそこに慣れる前に、すぐ電気をつけてしまうから、見逃すんだ」
わたしは笑って、彼の耳元で囁く。
――見えてるよ、湊は。わたしを見つけたでしょう。
彼は振り返らない。ただ、やわらかく頷く気配だけがある。わたしは名前を呼ばれるたび、濃くなったり薄くなったりしながら、湊の生活に縁として染み込んでいった。
放課後の路地で、わたしたちはよく遊んだ。西日が電線を太くし、風が洗濯物を大きくするとき、ペナは人の形を取れる。湊はチョークで地面に丸を描き、そこに立つようにと言う。丸の縁にわたしは重なる。ふたりで輪の中と外を交換した。湊が輪に入ると、わたしは外で彼の輪郭をなぞる。輪の外は世界だ、と彼が言った。輪の内は名前だ、とわたしが返した。
初恋というのは、最初に覚える偏(かたよ)りのことだ。人は誰かの声の高さや歩幅や誤字の癖を、理由もなく自分の中心に置く。わたしは湊の「すこし足りない」を自分の中心に置いた。どんな光の下でもそれを探すようになった。
*
ある日、町の掲示板に青いポスターが貼られた。小さな天文台の閉館と、来夏に起きる金環日食の告知。わたしはポスターの銀色の輪に吸い寄せられる。輪は、光の中の穴。穴の縁にだけわたしは生きる。けれどポスターの文字は、別の真実を囁いていた。
――金環の日は、半影が世界を覆う。
嬉しさと怖さが同時に走る。世界中がわたしになったら、わたしはどこにいるのだろう。縁が全体になるということは、縁が消えるということでもある。
わたしは湊に話した。彼はコーヒーの湯気を見つめながら、しばらく黙って、それからうなずいた。
「天文台に行こう。ドームの中、あそこは光の穴だらけだ。君にはちょうどいい」
君、と彼は言った。ペナ、と呼ばれるよりも、わたしの輪郭を濃くする呼び方だった。
天文台は坂の上にあり、昼でもすこし暗い。年老いた学芸員がいるだけで、人はほとんど来ない。ドームの白い壁には小さな穴が無数に空いていて、晴れた日には小さな太陽が床に並ぶ。光の数だけ、縁も生まれる。わたしはめまいがするほど豊かになり、笑いながら床一面を駆けた。湊の影がゆっくりと伸び、わたしの裸足に絡んでくる。
「金環の日、ここで名前をもうひとつ持ちなよ」と湊は言った。「君が望むなら、人の名前を」
人の名前。
生きるというのは、縁から中心へ移ることでもある。わたしはうなずいた。欲望の形が初めてはっきりした。縁に生まれ、縁に消えるだけのわたしに、たった一度だけ中心が欲しい。たった一度でいい、その中心に湊が座っていてくれたら。
「でも」とわたしは聞いた。「代わりに、なにを失うの」
湊は、チョークのような指で空中に円を描き、笑った。「人はいつでも、なにかを半分失ってる。君が持ってない半分をこっちでわける。君の半分も、僕にわけて」
彼の言葉は約束というより、輪の仕組みの説明に近かった。輪の外は世界、輪の内は名前。二つはいつでも触れ合っているが、完全には重ならない。
*
金環日食の日は、町じゅうが紙で作った小さな穴を持ち歩く祭りみたいだった。木漏れ日の下では、地面に無数の光の輪が降る。天文台のドームの中は静かで、遠い歓声だけが波のように届く。
湊は床に白い紙を敷き、穴を空けた金属板を何枚も吊るした。光の粒たちが床に並び、輪が重なって新しい輪を生む。縁の庭。わたしはそこに立つ。
「人の名前は、呼び捨てにされたとき、いちばん強くなるんだよ」
わたしはうなずき、胸のうちに空洞を作った。そこに新しい音が落ちる余地をこしらえる。湊は、静かに、しかし迷いなく言う。
「環(たまき)」
輪を意味する音が、わたしの中心に落ちた。縁だったものが内側からきしみ、組み替わる気配。痛みはなかった。ただ、世界の密度が変わる。空気の温度が一度だけ違う。
わたしは初めて、自分の足で床の冷えを感じた。掌に汗がにじみ、唇が乾く。光が眩しすぎないことを知る。影が怖くないことも知る。
――環。
呼ばれるたび、わたしは人になった。
そのとき、ドームの外で歓声が大きくなる。太陽の中心が欠けて輪になったのだ。天文台の穴から落ちる光も、すべて細い輪に変わって、床の上で震えた。輪と輪のあいだ、半影が揺れる。わたしはその渦の中心に立ち、湊の方へ手を伸ばした。彼の掌がわたしの指を確かめるように握る。温度と脈が、わたしという器の底を鳴らす。
「環」と湊が呼ぶ。
「湊」とわたしが呼ぶ。
世界はほとんど音でできている。音は名前の泉で、泉の縁にだけ、わたしたちは安全に立てる。
そのとき、突然、ドームの空気がひやりと変わった。輪の細さが極まって、光と影が互いに少しだけ不器用になる。世界が一瞬だけ、縁を失いかけたのだ。
手がほどけた。わたしの体の縁が波打つ。人であろうとする中心が、わたしの古い習性――縁に逃げる癖――に引かれる。
「環」
湊は落ち着いた声で、もう一度呼んだ。音がわたしを連れ戻す。
彼はドームの穴の向こう、細い昼の川のようなリングを顎で指し示した。「見えるか。輪は完全に閉じない。ほんの少しだけ、接いでいないところがある。そこが君の、出入り口だ。恐れなくていい」
彼の声は嘘を知らない。嘘のない声に抱かれて、わたしは自分の体の縁を自分で撫でた。輪の合口(あいくち)はたしかにどこかにあり、そこから呼吸は逃げていくが、また戻ってもくる。わたしは息を吸い、吐いた。
金環はやがてゆっくりほどけていく。輪は欠け、欠けた輪はふつうの太陽へ戻る。ドームの床の輪も消え、光の粒はただの丸になる。わたしの足は床に残っていた。
人の名前はまだ胸にいて、湊の手はまだ、わたしの指を握っていた。
*
人になってからの時間は、やたらと質感に満ちている。靴擦れ、箸の冷たさ、雨の日の髪の重さ。光はいつだって眩しすぎず、影はいつだって深すぎない。わたしは写真館の手伝いをはじめた。暗室の赤い灯りは、昔のわたしを思い出させるが、もうそこに戻る必要はない。
客が「半分だけ写ってしまった」と残念そうに言うと、わたしは微笑んで答える。「半分が綺麗なんです」と。
湊は、わたしを「環」と呼び続ける。ときどき、「ペナ」とも。二つの名は衝突しない。輪の内と外が穏やかに触れているだけだ。
もちろん、代わりに失ったものもある。わたしはもう、誰の家の敷居にも勝手に入り込めない。通りすがりの恋人たちの秘密の会話を拾えない。夕立のカーテンの裏側から、世界をいくらでも覗くことはできない。
けれど、わたしは湊の初めての寝相を知っている。彼のくしゃみの前触れも、湯呑みにつく口紅の跡に彼が少し照れる癖も知っている。失ったものは風景で、得たものは暮らしだ。暮らしは縁と中心の往復でできている。朝の窓の縁に植木鉢を並べ、夜のテーブルの中心にパンを置く。
*
秋になって、天文台の閉館の日がきた。学芸員は最後の投影を終え、ドームの穴を粛々とふさぎはじめた。
わたしは湊と二人で坂をのぼる。ドームの中はもう暗く、穴をふさぐための丸いパッチが内側から貼られている。天井は、星が眠る前のように静かだ。
「ありがとうを言いに」と学芸員は言った。「君のような顔を見たから、長年の仕事が報われた気がする」
彼はわたしではなく、わたしたち二人を見て言っている。縁だけを見抜く目だ。
帰り道、坂の途中で足を止めると、町の灯りが半分だけ点いていた。夕飯の匂い、遠くの踏切。風に運ばれてくる音は、輪の合口のように細い。
「ごめんね」
「ちがうよ。失敗の中に、君が立ってる。そこが好きなんだ」
彼はそう言って、笑う。歩き出す足どりは軽い。輪の外へ、輪の内へ、ふたりで交互に踏み出す感じがする。
わたしはふと、世界じゅうの縁にむかって心の中で挨拶した。ドアの隙間、カーテンの波、踏切の警報機の影、傘の中で湿った髪。わたしを育ててくれたすべての縁へ。
――わたしはここにいるよ。
初恋は、治らない。
治らないというのは、傷のことではなく、習慣のことだ。わたしはこれからも、少し足りないものを愛し、少し余っている部分を目で追うだろう。湊は、完璧の手前で笑い、わたしはその笑いの縁に寄り添うだろう。
帰り道、わたしたちはコンビニでアイスを買った。レジの上の蛍光灯が、湊の横顔に薄い陰を作る。わたしはそこに自分を見つける。それはもう、かつてのような居場所ではない。けれど、愛着は、住むところよりも、寄りかかるところに生まれる。
外に出ると、夜が来ていた。はっきりした影が地面に落ちる。かつてのわたしがそこにいる気がして、わたしはしゃがみ込む。地面の黒を指でなぞり、笑う。
「こんばんは、ペナ」とわたしが言う。
「また明日ね」と影が言う。
「昔のわたしに」
「そうか」
彼はなにも問わない。
わたしたちはアイスを齧りながら、家へ帰る。縁が暮れて、中心が灯る。灯りの縁では、いつでも半影が揺れている。そこからわたしはやってきて、ここにいる。これがペナンブラの初恋の、その後の話だ。初恋は終わっていない。ただ、暮らしになっただけ。輪の肌ざわりは、今も指先に残っている。
あれは昼休みの、やけに静かな日だった。
ぼーっとしてる弱者男性が、机越しにこっちをじっと見てきた。
「○○さんって、幽霊とか信じてる?」
正直、「うわ、キモッ。信じてねーよ」って心の中では思った。
でも、場の空気を壊すのも面倒だし、当たり障りなく「信じてますー。弱者男性さんって霊感とかあるんですか?」って返したんだよね。
翌日には、私のデスクの引き出しにオカルト雑誌がねじ込まれてた。
昼休みにはヒソヒソと「オカルトバカ女」「霊媒師」とか囁かれる。
笑い声のタイミングが、私が通るたびぴたりと止む。
ある日、給湯室でお茶を淹れたとき、湯呑みから妙な薬品臭がした。
後でわかったけど、不凍液だった。
ぞわっと背筋が冷えた。飲まなくてよかった。
また別の日、階段を降りてたら、上から水がざばっと降ってきた。
見上げても誰もいない。濡れた床には、まるで足跡のような形の水たまりが残ってた。
極めつけは駐車場。
間一髪で避けたけど、地面に叩きつけられた衝撃で土と破片が跳ね、足元に散らばる。
見上げたビルの窓…カーテンの隙間から、あの弱者男性がこちらを見ていた。
笑っていた。
会社のフロアのエアコンは効きすぎていて、外の湿気と対照的な冷気が足首にまとわりついていた。あの日からしばらく、何も決めずに過ごそうと思っていたが、ふと旅雑誌の片隅に載っていた「猫島」の特集が目に入った。そこには、港で伸びをする三毛猫、漁網の上で昼寝する黒猫、そして笑顔でカメラを構える観光客たちの写真が並んでいた。もう、それで決まった。
旅の起点は宮城県の松島。観光名所の五大堂や瑞巌寺には目もくれず、私は仙石線に乗り込んだ。ガタゴトと走る列車の窓からは、牡蠣の養殖筏が見える。松島海岸駅から約1時間半で石巻駅に到着。駅前では、石ノ森章太郎マンガ館のキャラクターたちのパネルが出迎えてくれる。
石巻からは網地島ラインのフェリーに乗る。目指すは「田代島」――全国的に猫島として知られる場所だ。
フェリーに揺られて
乗船客の半分は観光客、半分は島の人たち。船内のベンチに腰を下ろすと、隣のおばあさんが「今日は天気がいいから、たくさん猫が出てくるよ」と笑った。
45分ほどの航海。穏やかな波間を進む船のデッキには潮風が心地よく、遠くに見える小さな島影が次第に大きくなっていく。港が近づくと、すでに岸壁の上でこちらを見つめる猫の姿があった。
島に降り立つと
田代島の仁斗田港に着いた途端、猫たちがふわりと近づいてきた。島の道は細く、アスファルトの上も日向と日陰が交互に続く。茶トラがゴロンと腹を見せ、キジ白は植木の影から様子をうかがっている。
島の中央部には「猫神社」があり、小さな鳥居と祠がある。漁の守り神として猫を祀ったとされ、漁師たちは今もお参りを欠かさないらしい。祠の前にも猫が2匹、まるで神主のように鎮座していた。
猫と人の距離
昼は港近くの民宿「はまや」で、女将さん特製のカツオの漬け丼をいただく。窓の外では、漁から戻った船と、それを出迎える猫たちが見えた。島の猫は人慣れしているが、無遠慮に触られるのは苦手らしい。しゃがんで手を差し出すと、猫は自分のペースで近寄ってくる。それがまたいい。
「ここでは人間が猫の都合に合わせるんです」と女将さんは笑う。確かに、島の時間は猫が刻んでいるようだった。
夕暮れの港
日が傾くと、猫たちは暖かい場所を探して散っていく。防波堤の上で背中を丸める子、漁具倉庫の隙間に消えていく子。
私も港で潮の匂いを吸い込みながら、ぼんやりと海を見ていた。仕事を辞めた不安や、これからどう生きるかという焦りは、潮風と猫のしっぽのように、どこかへふわりと流れていく。船が来るまでの30分、ただ海と猫と同じ場所にいた。
帰路、そして余韻
最終のフェリーで石巻に戻るころ、空は群青色に染まっていた。港で最後に見送ってくれたのは、白黒模様の大きな猫。振り返ると、その姿はもう影の中に溶けていた。
猫島は観光地であると同時に、猫と人が長年共生してきた生活の場だ。そこには観光パンフレットに載らない匂いや音、そして何より、猫たちの気まぐれで豊かな表情があった。
最近サイレントウィッチっていう今季アニメを観てるんだけど、これがなかなか面白い。
主人公の女の子めちゃくちゃ可愛いし作画も良い、展開もテンポ良くて見やすいし全体としてかなり高水準だと思う。
でもひとつだけ、どうにも引っかかる部分がある。
その後、その犯人を捜すわけなんだけど主人公は地面に落ちた割れた植木鉢の砕け具合から何処から落とされたものかを計算するんだけど、それ数学っていうか物理じゃない?ってまず思うわけ。
ていうか、破損の仕方から場所を逆算できるってそれ前提となる素材の強度とか、気温とか、着地の角度とか、いろんなファクター知ってないと無理なはず。けど作中では、「落下速度も計算すると…」みたいな流れで場所を特定するわけ。
でもこういうのって、サイレントウィッチに限った話じゃないんだよ。
たとえば前に観たフェルマーの料理っていうドラマでも似たような印象がある。こっちは数学×料理っていう一風変わったテーマなんだけど、やっぱり数学で全てが解決できるみたいな空気がちょっとおかしい。
というのも、現実の数学って前提となる知識(公理)があって、そこからロジックを積み上げて答えに辿り着くものだ。
でも創作に出てくる数学って、その前提が適当か、そもそも見えてすらいないことが多い。
それなのに「計算してみたら、ほら正解だった」って感じでドヤられても、「いや、それ正解に“なるように設計されてるよね?」ってメタ視点になっちゃう。
もはや公理というより真理が初めから与えられてる。言ってしまえば、作中で「この値が正しい」という神の視点を主人公が持ってる。
だからこそ、そこから導き出される答えも正解になるし、物語的にはカッコよく決まるんだけどさ……なんかズルいんだよね。
数学って言葉を使っておけば、なんでも論理的に片付けられる感。
けど、それってほんとの数学じゃない。
実際の数学ってもっと地味だし、前提を積み重ねる作業に時間がかかるし、そもそも正しい前提を得ること自体が大変なことだし。
誤解しないで欲しいのは、別に数学は万能じゃない!って主張したいわけじゃなくて、むしろ数学の力を正しく使ってる創作物を見てみたいって話。
叩かれてるその木だけは元気で、去年も秋にちゃんと咲いてた。
これまで咲かせてた鉢植えとかは枯れてる。こんだけ暑いとしょうがないと思う。
入院なさってた時に近所に住んでる家族が仕事の帰りに水やりにいらしてたようだけど
結果こんだけ今年暑いと枯れちゃったらしく、玄関の鉢植えは枯れたまま。
近所の家族さんが片づけてあげらんないのかな。ご本人気になってるらしいんだけど。
ご本人がだめなら居宅支援で助けてもらえそうだけど。
木はうちより大きく伸びてて、刈り込むのも大変みたい。うちは切りすぎてて数年咲いてない。
水はやってるけど。
二階のベランダのプランターもまえはカーネーションとか咲かせてらしたけど
やっぱり入院中の水不足かな、枯れちゃってて今は土のみで置いてある。持って降りるの面倒なのかなぁ。
私の家もベランダはあるけど何も置いてないし、ベランダ園芸するには水運ばないといけないので
そこまではやってない。排水溝がないベランダだから、園芸むいていてないベランダと思う。雨どいに土入るし虫くるし。
お隣も同じ仕様なんで。玄関先のひさしの雨どいに土が落ちてると思う。うちの雨どいも枯葉や土きてるから。
植木鉢の片付け、離れて暮らしてる家族さんがしてあげたら喜ばれるのではないかなぁ。
そんで新しい鉢に花の苗でもあげたらどうなんだろう。手入れが出来る2-3鉢程度で。
裏庭の通路にたくさん置いてあるのも枯れてるのが多そう。外に出てまでみてないけど
枯れちゃったと仰ってたのでたぶん。枯れたの全部切って、茎が青いのだけ水やりしてあげたら復活しないのかなぁ。
うちの母も途中で手入れできなくなってて、土も鉢もいろいろ片づけるの大変だった。
ノラ猫ちゃんが球根の上におしっこした土は、全部捨てたし、鉢も処分した。
もちろん洗ったし、土も水やりしてすすいで乾かして、燃えない日に既定の重量のみ入れて決まった日に出したよ。
結構大変だけどやって行けば片付く。
世話できる範囲ってあるよね。
梅雨の晴れ間、じっとりとした暑さが肌にまとわりつく昼下がり。ワイは流行りの波に乗ろうと、駅前のスターバックスで新作のフラペチーノを手に入れた。メロンの果肉がゴロゴロ入った、見るからに甘くて美味そうな逸品や。
「いやー、これは大当たりやろ。チノちゃんに見せたら、少しはワイのこと見直してくれるかもしれん…!」
淡い期待を胸に、ワイはラビットハウスへの道を急いだ。店の前に、小さな人影を見つける。チノちゃんや。彼女は店の前の植木に水をやりながら、気難しそうな顔で街並みを眺めていた。
ワイは努めて明るく声をかけ、手にしたプラスチックカップを掲げて見せた。
「見てみ!スタバの新作!すっごい美味そうやろ?」
その瞬間、チノちゃんの動きがピタリと止まった。彼女はゆっくりと顔を上げ、ワイの掲げたカップ…その緑色のストローと、見慣れた女神のロゴを、虫ケラでも見るかのような目で一瞥した。
「……なんですか、それは」
「その、砂糖と人工香料とショートニングを混ぜ合わせただけの、家畜の餌にも劣る代物を、わざわざ私の店の前で見せびらかしに来たと?」
「か、家畜の餌て…!そんなことないやん!美味しいんやで、これ!」
ワイが必死に反論すると、チノちゃんは持っていたじょうろをカラン、と地面に置き、一歩ワイに近づいた。その小さな体から発せられる威圧感に、ワイは思わず後ずさる。
「美味しい?あなたの味覚は、インスタ映えという名の情報汚染に完全に麻痺しているんですね。そもそも、あのチェーン店の豆は過剰にローストすることで品質の悪さをごまかしているだけ。そんなものに『コーヒー』を名乗る資格はありません。あなたは、コーヒー文化そのものへの冒涜に加担しているんですよ。分かりますか?」
早口で、淀みなく、一切の感情を排した声がワイの鼓膜を叩く。これが噂に聞く「レスバ」か。反論の余地が1ミリも与えられない。
「で、でも、みんな飲んでるし…流行ってるし…」
チノちゃんは、フン、と鼻で笑うと、ワイの手からフラペチーノをひったくった。
「あっ!」
次の瞬間、ワイの目の前でメロン味の夢と希望が宙を舞い、ビシャッ!という無慈悲な音と共に地面に叩きつけられた。鮮やかな緑と白の液体が、汚れたアスファルトに無残な染みを作っていく。
呆然と立ち尽くすワイ。
チノちゃんはスカートについた飛沫を軽く払うと、静かに言い放った。
「『みんな』と同じことをしていれば安心ですか。主体性のない、典型的な『チー牛』の発想ですね」
「さあ、中へどうぞ。本物のコーヒーとは何か、その腐った舌に叩き込んであげますから」
その目に宿る光は、喫茶店の店主のものではなかった。有無を言わさぬ絶対者の光だった。ワイは、砕け散ったフラペチーノの残骸に黙祷を捧げながら、震える足でラビットハウスの扉を開けるしかなかった。
釣りではヤーポンが使われる事が多い
でも全部が全部ってわけでもなく中途半端に混在していて、なら統一しろよって思う事が多い
ロッドの長さはフィート、シンカーはグラムなのにラインの強度にはポンドを使う一方でラインの長さはメートルを使う
これ別にアメリカやイギリスのメーカーの表記なら自由にすればいいんだけど、日本のメーカーでもコレだから理解に苦しむ
まともにグラム表記されるシンカー、要はオモリだけど、逆に日本では号という尺貫法由来の単位が使われることが多いという謎
号が厄介なのは釣りのオモリは1号 = 1匁だけど、植木鉢とか服のサイズとかは重さじゃなくて、長さも重さもとにかく何でもありな単位だってこと
こんな何の単位かすらハッキリしていないアホ単位に比べればヤーポンの方が遥かにマシだなって正直思ってしまって悲しくなった
ヤーポン滅ぼす前に号を滅ぼさないと何も言えないわ
GW中に腐女子によるバカカプが話題となっていたため、ずっとどこかで叫ぼうと思いながら我慢していたことを、この場を借りて叫ぼうと思う。
漫画「メダリスト」が、「よだつか」「つかよだ」というバカカプBLを推している腐女子によって荒らされている。
その影響が実害を伴いはじめたため、主にまだ「メダリスト」を読んでいない人に向けて、この素晴らしい作品が誤解されたくない一心で現状とそれに対する個人的な心情を書き綴らせていただく。
なお、これを書いているオタクは「おれは正当な読者原作読んでねえだろってバカカプが嫌いだった」という態度でいるため、この時点で嫌な予感がした人はブラウザバックしていただきたい。
トピックは以下の通りだ。
https://anond.hatelabo.jp/20250512013446
②「よだつか/つかよだ」はなぜバカカプなのか
https://anond.hatelabo.jp/20250512013959
(当エントリー)
どうしても字数制限内に抑えきれなかったため、複数エントリーに分けて投稿させてもらう。
バカカプとはいえ妄想は自由であるべきなのでやめろとは言えない。
単純な話、オタクコンテンツで度々話題となるゾーニング、住み分け問題がこのトピックの主題だ。
散々こき下ろしておいてこう言うのもなんだが、バカカプ腐女子も単なる加害者ではないというか、時代の被害者である側面もあると思う。
ここまでの不満はおすすめタブや原作感想の検索中に事故的に遭遇したものだけで構成されている。
腐女子がどれだけ隠れようとも、鍵をかけていない限り、おすすめタブは無慈悲に原作ファンの目の前にバカカプを表示する。
隠れるつもりなら鍵をかけろと罵倒したいところだが、かつてはそんなことしなくても検索避けで充分隠れられたのだ。
そのカプに興味をもった者だけが検索によって同好の士に辿り着き、植木鉢の裏でコミュニティを形成する。わざわざひっくり返してまで気持ち悪がるのが悪い。かつて成り立っていたそんな住み分けを、おすすめタブが壊したのである。
メダリストに関する話題や原作愛に溢れたFAをいいねするだけで、原作の面影の消え去ったバカカプが、どこからかXが見つけてきておすすめに表示してくる。
よくわからないが腐女子は投稿にちゃんとカプ名を表記することは少ないようで、ワードミュートなんて軽々潜り抜けてくる。あとどう見てもR18なオメガバースパロの妄想なんかも流れてくる。(これに関してはあえて言おう、カスであると!)
しかしおそらく腐女子は現状をそこまで関知していない。しろという方が若干酷である。最低限の読解力すら無いのだから。
だからこそ今ここで言わせてほしい。
なぜそこまで言われないといけないかと思うだろう。
しかし冒頭で言ったように、バカカプ腐女子大量発生の影響が実害をもたらしはじめているのだ。
そう、メダリストを腐向け作品と勘違いする受動喫煙のオタクが発生しはじめた。これは紛れもない悲劇である。
当然作品自体の誤解が広まるという主題にもしている危惧に加え、「腐向けなら見ない」「腐女子がキモいから見ない」という意見が発生しているのだから始末に負えない。原作をロクに読まないバカカプ腐女子のせいで、本来正当な読者となる可能性のあった人間すら取りこぼす事態が発生しているのである。
これは原作ファンからすればとんでもない地獄だ。あわよくば全人類に読んでほしいのに、ロクに読まないやつがお天道様の下で気色悪いことをやっているせいで遠ざかる人間もいるのだ。
メダリストにハマってから何となく感じていた、話題になっている割に届くべき層にまだ届いていない気がするという感覚は、バカカプ腐女子の撒き散らす腐臭のためだったのだ。作品の広まり方としてこれほど不健全な状態があるだろうか?
そして腐女子が悪影響を与えるのは布教の阻害ばかりではない。グッズ展開もだ。
これに関しては、原作を読まない割にグッズの類いはやたら集めたがる腐女子の習性を利用し金儲けを優先するグッズ会社への不満の方が大きくはあるが・・・
何にせよ、メダリスト腐女子という本来ならば隠されるべき存在がわらわらと湧いたせいで、グッズ展開もそれ向けに歪められる事例が発生している。ベルハウスである。
・缶バッジの絵柄はメイン選手キャラであるいのりと光よりもコーチ陣の司と夜鷹の方が圧倒的に多い
・アクリルキーホルダーで、いのり&司と合わせてもう一つ用意されたペアが光&夜鷹ではなく司&夜鷹
実際こうした方が売上は伸びるのだろうが、アニメ絵な分原作者に入るマージンも少ないであろうことを考えると、儲け優先で原作を蔑ろにするようなグッズ展開をする会社にはNOを突きつけたい。
しかし経験上、一度腐女子が湧いたと判断された作品では、アニメ絵を使ったグッズはどんどん腐女子に媚びていくようになる。
今後この調子で選手たちのグッズ展開がないがしろにされると考えるとげんなりする。
ベルハウスはもう駄目として、他のグッズ会社にはぜひ正気を保っていてほしい。
このように、原作をまともに読まないくせに声と数がデカいだけのオタクもどきがその存在を世間に晒すと、明確に界隈にダメージを与える。
しかしオタクの妄想は自由だ。むしろこういう原作無視の創作ができるオタクにこそ一次創作の才能があると思っているので、バカカプ腐女子にはぜひ自身の考える最強の創作BLの世界へと飛び立ってほしい。
まだ他人の生み出したキャラのガワと名前を借りなければ創作できないのでそれだけ借り続けたいという厚顔無恥な雛鳥たちは、隠れることを覚えてほしい。せめてエロ系だけでもちゃんと隠してほしい。君たちがオメガバース好きなのはもうわかったから。
最後に、自分と同じように腐女子への憤りを感じている人にも伝えたいことがある。そういう人が一定数いるのも、たまに行うメダリスト感想検索によって補足している。
二次創作はあくまでファンコミュニティ界隈の中だけで関知されるべき存在である。なので、どれだけ不満が募ろうが、絶対に公式や関連会社、ましてや原作者へ直接お手紙などで物申すのは論外だ。
(冗談だろうし実行していないだろうが、そういう趣旨のポストを見かけて肝が冷えた。ただでさえとんでもない作業量をこなしているつるま先生に余計な負担はかけないでいただきたい。)
加えて、当該カプ名を明記した上での批判もやめるべきだ。カプ名というのはそれを好きな人間が同士を見つけるための記号であり、嫌うものが避けるための記号だ。
いくら腐女子の変な検索避けとおすすめタブのヘンテコサーチの合わせ技でワードミュートをすり抜けられ腹が立ったとしても、攻撃のために使ってはならない。
原作ファンと原作冒涜者、それぞれ好きな話題で盛り上がって互いに関わらないことこそ健全な住み分けだと思う。だからわざわざ橋をかけて討ち入りするような真似はやめた方がいい
そういう意味では、この怪文書はまさに討ち入りじみたものである。その点は謝罪したい。
(タイトルにカプ名を入れていないのでセーフかとは思いたいが・・・)
ただこの怪文書だけ、ネットに放流することによって、少しでも誤解を解消できるなら、そしてメダリスト原作の正当な読者に「同じ気持ちを抱いている人がいる」という一抹の安堵を感じてもらえたら嬉しい。
それだけが私の望みです。
社長は「福利厚生」と銘打ち、自分のオキニの漫画を会社の書籍棚に置いていく。
社会人を何年もやってりゃ分かる。社長の私物を経費で購入する、クソしょうもない仕組みだ。
社長は最近何かにつけて「キングダム」の名言を吐いては悦に浸る。社長は董卓に夢中だが、役員は忖度に必死だった。
キングダムに董卓出るのかは知らねぇ。絵柄キモいから読む気にならねぇ。橋本環奈?知らねぇなぁ。俺は社会人にもなって漫画に夢中な連中が嫌いだった。
俺はクソしょうもない残業にうんざりしていた。客は節約しながら最大限の成果を出したいらしい。貧乏人がビジネスなんか手出すなよ。
俺に日常はまさにレイプだった。貧乏人とクソにレイプされるのだ。憤りが常に噴出を狙っていた。
そしてその日、俺の怒りは限界を迎えた。俺の脳天からつま先までを赤い怒りが稲妻のように突き抜けた。俺の肛門から睾丸までの筋肉が痛みを感じるほどに収縮する。
俺は俺の宿命を思い出す。俺の名はレイプマン…。堕ちたヒーロー爆誕だぜ…。
深夜11時、俺は弾かれたようにデスクを立ち上がり書籍棚に向かう。キングダム…、忌まわしい件の漫画をレイプしてやる…。
俺は怒り任せにキングダムを手に取る。3巻、5巻、10巻、12巻…、無造作にキングダムを適当に奪っていく。ついでに隣に並んでいた鬼滅の刃もムカついたので適当に抜いていく。何が鬼滅だよクソみてーな造語作りやがって死ねよ。
胸元に抱えたキングダムを自席にぶちまける。チームメンバーが呆気に取られて俺を見ている。俺はそのままの足で給湯室に向かい、掃除用具の入ったバケツから中身をぶちまける。
俺は再び自席に戻ると、気合いを込めて一息つき、キングダムを破り始めた。レイプショーの開幕だぜ!
「主任!やめてください!」
叫びが聞こえる。入社2年目、チームメンバーの植田君である。軟弱なZ戦士め、俺のレイプの邪魔をするんじゃあない。
俺のレイプされ尽くした魂のため、俺は何としてもこのレイプを敢行しなければならなかった!植田君の懇願虚しく、俺のレイプは進行する。
俺はズタズタにレイプされ尽くしたキングダムをバケツに無理やり詰め込む。植田君の眼鏡の奥の瞳は、現状の光景の理解を必死に拒んでいた。
俺は窓際に向かう。そこには植木鉢があった。アンスリウム、かつて高野君が水やりをしていた観葉植物であった。彼はいつの間にか退職していた。彼もレイプされたのだ。
高野君の無念、無駄にはしない。俺は植木鉢をむんずとつかむと、キングダムが目一杯詰められたバケツへ突っ込む。
ウジェーヌ・ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」、かくして俺のレイプは単なる暴力から芸術へと昇華される!フィナーレレイプだぜ!
俺の名はレイプマン…。
台所のガスコンロの前で炎に炙られながら黒煙を放つ社員証を眺めながら、俺は俺の名前を思い出す。この黒煙は反撃の狼煙である…。