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はてなキーワード:愛の夢とは

2024-12-13

フランツ・リスト名曲重要曲七選(超絶技巧編)

 anond:20241213122052の続きである

 スター時代の曲がちょっと寂しいので、リスト超絶技巧を味わう作品のみで七選を組んでみようと思う。既に出したのは除外。あとブコメ

推奨録音にkyushima氏みがあって大変共感できる増田次世代を引っ張っていくであろうユンチャン・リムの超絶全曲や、彼に影響を与えているニレジハージの伝説(波)あたりを加えても良いかもしれない。

 kyushima氏(http://kyushima.web.fc2.com/cd/index.html)に言及する人が現れた(笑)もう更新が止まって久しいけど、ここの御陰で知らない演奏にいくつも巡り会った(オフニコフとかベルッチとかロルティとかハフとか)。

 ユンチャン・リムの超絶を挙げてくださったのも感謝する(未視聴/クライバーンコンライブhttps://amzn.to/4iwxti2)。自分CDボックス漁ったりして、未視聴盤はたくさんあると実感した。ニレジハージは海賊録音でしたっけ? 聞いて確かめなきゃ


1.ドン・ファンの回想 S.418(1843年)

 モーツァルトオペラドン・ジョヴァンニからメロディーをとってアレンジしたものノルマの回想に次いで(それ以上に?)取り上げられていると思う。騎士長のテーマドン・ジョヴァンニに警告するシーン)から始まって重苦しいのだが、そんな嵐が去ると「お手をどうぞ」の主題に基づく変奏が現れ、最初の技巧的な見せ場になる(この主題はかなり人気があり、ショパン編曲していたはずだ)。後半は「シャンパンの歌」の変奏が騎士長の動機を挟みながら繰り返され、繰り返しの度にどんどん華やかになっていき、終幕を迎える。

 私はマッティ・レカリオ(Ondine/ブゾーニ編なので一部カットがある)が好き。新旧あるアムラン(Music&Arts/Hyperion)も恐ろしく安定した演奏新録の方が音は良い。あとハン狂2が入ってる)。クズミン(Russian Disc/ブゾーニ編)も強烈だが廃盤倒産激怒)。ペトロフ(Melodiya)は持っているが、遅っ!と思って合わず食わず嫌い・・・)。ロルティ(CHANDOS)もきれいな演奏だけどのんびりした感じ。この曲はノルマほど聞かないのでそんなに思いつかない。誰か教えてくれ。あとフィリペツが録音してくれないかなぁ・・・

 廃盤になっているレカリオのCDにはタウジヒ編の「ワルキューレの騎行」なども入っているし、ブゾーニ編のフィガロドン・ジョヴァンニ幻想曲もある(リストが途中放棄した作品)。本当に再版してほしい。配信はある。

2. 「ユグノー教徒」の回想 S.412(1837年出版/第2稿1842年)

 ジャコモマイアベーアは、パリ19世紀前半に大成功を収めた作曲家サンバルテルミの虐殺モチーフにしたオペラユグノー教徒」は何度も再演され続けていたが、20世紀には忘れられた(今また再評価されているらしい)。音楽史的にマイアベーアの影が薄いのは、彼が展開したオペラ書法の多くをワーグナーヴェルディといった後発者たちが更新して塗り替えていったからかなと思っている。もちろんリストピアニスト時代に人気だったマイアベーア編曲していないはずがない。ゲレリヒの本にも、レッスンでマイアベーアを弾く弟子が出てくる。ハワードライナーでとても強く推している※。あまり録音は思いつかない(申し訳ない)。NAXOS全集の第1巻にコーエン演奏が収録されているが未視聴。フィリペツ、録音してくれ。

 この曲はユグノーであるマルセルライトモチーフとして「神はわがやぐら」を使っているのだが、それってルター派じゃ・・・?(カルヴァン派でも使われていた??)

 第1稿ではラスト原曲通り第5幕カトリック兵士合唱主題(この歌詞がまたやばくて・・・異端を殺せ!神がそう望んでおられる!という血なまぐさい中身)が入ってとても雰囲気があったのだが、別稿では「神はわがやぐら」の変奏を強化する対応になっていた・・・と思う(ハワード聞き直さないとなぁ)。ただ、あの狂気合唱が魅力だと思っている。第1稿では合唱を遮って「神はわがやぐら」が入ってくるのだが、これが幅広いアルペッジョで一掃され、再び合唱に戻るという原曲ラストの射殺シーンを思い出させる流れ。

オペラの方も20世紀にも再演されてきたが、特定歌手たちのための舞台に過ぎなかったけど、今や再評価の時だということが熱っぽく語られている。特定歌手って多分サザーランド

3.スペイン詩曲 S.254(1867年出版

 気分転換。後期の出版になるが、実はこの曲のおおもとはスペイン公演時の印象を書き留めた45年の「スペイン旋律に基づく演奏会用第幻想曲」にある(ハワード全集に当然ある)。今のスペイン詩曲の形になってのはヴァイマール時代らしいので、超絶や巡礼同様、前期に作られ、中期に改訂されて充実した曲の一つだ。

 前半ではフォリア、後半ではアラゴンのホタという舞曲から成る。どちらも華々しい技巧で彩られ、最初から最後まで魅力的で見せ場が多い。

 名盤としては、エフゲニー・キーシンの録音(RCA)があるだろう。彼もすっかりトシだが、これは子どもの頃のもの。恐るべき完成度。日本公演の映像があるが、すごい演奏https://www.youtube.com/watch?v=Lb6EzTpGv3s)。

 スティーヴン・ハフの録音(Virgin)も非常に良い(kyushima氏のサイトで◎だった上、入手性が良くて最初に聞いたので、完全に嵌まってしまっている。ただフォリアが盛り上がるところで、楽譜にあるシではなくドの音を弾いているのはなぜ?)。ぶっ飛んだ路線としては、ポリーナ・レスチェンコ(https://www.youtube.com/watch?v=3EB0f-ra9Eg)。

4. ギョーム・テル序曲 S.552(1842年出版

 世に名高いロッシーニ最後オペラの序曲である。どう考えてもおうまさんのテーマ

 このオペラが出たのは1829年以降ロッシーニは完全に引退状態になるのだが、亡くなるのは1868年引退には政治情勢が大きく影響している。ロッシーニの滑稽な作風は、明らかに復古的なウィーン体制下の小市民の楽しみに合致したもの。それでも、このオペラは再び騒乱の時代が訪れることを予感させる緊迫した作品(題材自体が既にそうだ)だったが、これが最後になった。

 中々演奏がない(ハワードはもちろん、NAXOS全集ゲキチ)。デュシャーブルのCDEMI)が良いと思う。割とセカセカ弾くタイプピアニストだと思うけど、後半はそれがすごい追い込みに繋がってる。ただ、まだまだこの曲のポテンシャルはあるんじゃないかと。フィリペツ(ry

 コメント返信の時に出した、以前コンクールライブたまたま見た映像が凄かった(https://www.youtube.com/watch?v=GRYLy8O3VIQ)。

 中国ピアニスト牛牛のCDはまだ聞いていない(MVhttps://www.youtube.com/watch?v=ed9nRoFyDIw)。彼は小学生の頃から有名で、ピアノの森(二期)でパン・ウェイの「中の人」(あるいは「手」?)を務めた人。

5.ベートーヴェン交響曲 S.464(1865年出版

 文字通りベートーヴェン交響曲編曲(本編での落選から復活)。出版は後期にあたるが、「幻想交響曲」の編曲同様、ピアニスト時代から既に手がけており、部分的には出版されていた。リストベートーヴェン布教にかなり熱心に取り組んだピアニストだが、これがドイツナショナリズムの高揚を抜きにしては考えにくいことは既に述べた。

 以前に医師夏井睦氏が運営していた超絶技巧ピアノ編曲ホームページに3・5番だけだがすごく詳しい解説が載っていて、当時からピアノ好きだった人は見ていたんじゃないか、と老人会発言Web Archive/https://web.archive.org/web/20090104102239fw_/http://www.ne.jp/asahi/piano/natsui/Beethoven.htm)。ところでブコメバッハリストのBWV543を挙げている人がいたけど、あれは原曲の良さに甘えているだけの手抜き編曲だと夏井氏はバッサリ斬っていたなと思い出しておっかねえなあ・・・と。

 カツァリス(Teldec)とコンスタンティンシェルバコフ(NAXOS全集)の全曲録音が有名(その後も全曲でなければちょくちょく録音例は見る)。やはりフィリペツ(ry

 部分録音だと、kyushima氏はグールドの6番をかなり評価していた気がする(私はよく聞かないのでわからない)。牛牛のギョーム・テルが入ってるCDにも5番がある(未視聴)。以前ロルティが5番を弾く映像YouTubeにあったと思うけど、削除された? それとも記憶いか

6.シューベルト編曲もの(超大雑把な紹介になっててすいません)

 リストシューベルト歌曲の多くを編曲している。「セレナーデ」も「ます」も「エレンの歌 第3番(アヴェ・マリア)」もあり、至れり尽くせり。リスト生前「魔王」(S.558/4)の編曲者として一番知られていたらしい(ゲレリヒの訳書32頁。自虐的セリフとして出てくる)。ハワードライナーには、フィッシャー=ディースカウが、変なのと思われてるけどリスト編曲してくれたおかげでシューベルト歌曲今日まで生き残ってきたんですよと発言したというコメント引用されているが、出典が分からない。ご存じでしたら教えてください。

 ウィーン夜会も絢爛豪華。特に6番が有名。本編での落選を残念がっている人がいた。

 個人的にはキーシンリスト録音集に入っている演奏が好き。他の演奏をあまりいたことがない。フィリペツ(NAXOS全集)が新録を出したようなので聞いてみるつもり(コンソレーション初版とセットだとか)。

7.半音階的大ギャロップ S.219(1838年出版

 前期作品。この手の超絶技巧を見せびらかすための精神性のかけらもない曲は当時のはやり。でもとっても楽しい曲で大好きであるシフラ演奏が有名だが(Hungaroton/映像ありhttps://www.youtube.com/watch?v=tmq5JBpFf9w)、今聞くならフィリペツ(NAXOS全集)が良いと思っている。余裕綽々で本当に惚れ惚れする。

 以上である。いやいやなんでシューベルトこんなひとまとめなのとか、忘れられたワルツとか愛の夢はまた落選かとかリゴレットとかまだオペラものあるだろとかショパン歌曲とか「献呈」とか色々納得はいかないところもあるだろう。でも一旦ここで締める。どうもお付き合いありがとうございました。

Permalink |記事への反応(2) | 22:45

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フランツ・リストピアノ名曲重要曲7選(後期)

 anond:20241212222723の続きである

 ヴァイマール宮廷楽長を辞任したリストは、ラテボル公に招聘され、公の弟グスタフ・ホーエンローエを通じてローマ教皇庁と接点を持つことになり、宗教音楽に取り組む意欲を持つことになる。「巡礼の年」や「詩的で宗教的な調べ」のように、前期・中期から既にリストには宗教的な要素が強い作品があったが、これ以降そのような作品さらに増えていく。一方、子どもたちが相次いで亡くなったことで大きな精神的打撃を受け、1860年には遺書まで書いている(マリーとの関係はまだ悪かったようで、マリーのことは遺書にない)。カロリーヌは夫との婚姻強制されたものであり無効であるとする枢機卿会議の決定を一旦勝ち取ることに成功するが、その後、婚姻有効であると述べる証人が新たに現れ風向きが変わってしまう。というのも、ラテボル公の実子とカロリーヌの娘が結婚することになっていたのだが、カロリーヌ結婚無効だったとするとカロリーヌの娘は私生児ということになり、大変都合が悪いわけで、グスタフが手を回して妨害させたようであるリストも後に状況を悟ったらしい)。愛する人と結ばれることに再び失敗し、重ねて精神的なショックを受けた。それでも、グスタフを初めとするローマパトロン見出しローマに腰を落ち着け宗教音楽に熱心に取り組むことになる。ところが、1869年に度重なるヴァイマールから要請宮廷楽団指導役として復帰し、さら70年代からピアノ教師としての活動も非常に活発になり(ローマでも週1ではやっていたらしい)、以降リスト曰く「三分割された生活vie trifurquée」、春はブダペストなどで音楽教師コンサート、夏はヴァイマール宮廷楽団の指揮、冬はローマ作曲ピアノのレッスンというスター時代に負けず劣らずの忙しい生活死ぬ日まで送ることになった。晩年リストのレッスンの記録をとっていた弟子アウグスト・ゲレリヒの日記翻訳あり)を見るとリスト生活ぶりが良く分かる。

1.巡礼の年 第三年 S.163(1883年出版

 晩年リスト代表である出版も最晩年。頻繁な不協和音の利用、レチタティーヴォ風の単純な旋律、独りごちるようなモノローグが目立ち、華麗な作風からの一変を感じることができるだろう。全7曲あり、第1・4・7は明るめで、宗教的な救いを示している。前期・中期作品でいうと、「孤独の中の神の祝福」」に近い作風である。それに挟まれた2・3・5・6は、「葬送――1849年10月」などと同じで、死を嘆くエレジーで、とても暗い。

 この曲集の中で最も有名なのは第4番の「エステ荘の噴水」だろう。文字通りリストが住んでいたティヴォリエステ荘の噴水を活写したものだ(その様子はググってくれ)。晩年作品の中では例外的に明るく、輝かしい作風で、しか印象主義の先取りになっている画期的作品だ(ラヴェルの「水の戯れ」やドビュッシーの「水の反映」と比べると良い)。第2・3曲「エステ荘の糸杉にI・II」は大変暗い曲なのだが、続けて聴くと本当に救われる思いになる。絶望からの救済は、リスト本人が強く望んでいたことだ。

 第三年だけの録音というのはあまり聴かないような気がする(エステ荘の噴水の録音はたくさんあるが)。第一年なども含めた全曲録音は前期の項目で書いたが、ベルマンとロルティが良いだろう。特に美しいロルティが好き。

2. 二つの伝説」(1865/66年出版

 1863年リストは僧籍を取得し、聖職者となっている(ずいぶんな生臭坊主生活死ぬまで続くが、リストことなので仕方がない)。丁度その頃に作曲されたらしい。ローマ引っ越しリスト教皇ピウス9世が訪ねてきた時に(下級聖職者のくせにローマ教皇に足を運ばせる男なのである)、第1曲「小鳥説教するアッシジの聖フランチェスコ」を演奏したらしい。フランチェスコ小鳥説教する様子を描く絵だったか詩だったかモチーフにした曲で、小鳥たちのさえずりを模倣したトリルがかわいらしい。明るく、聴きやす作風である

 第2曲の「波をわたるパオラの聖フランチェスコ」は、嵐の中の船出を拒絶されたフランチェスコアッシジの人とは別人)が自らのマントを船にしてメッシーナ海峡を渡ったとかい伝説モチーフにしている。波を模倣したうねるような力強いアルペッジョが印象的。出だしこそ暗いが、明るく、輝かしく、充実した展開を迎える。

 両曲とも1865年リスト自身ブダペストにおける久しぶりの公開のコンサートで初演された。サン=サーンスがいたく気に入って、オルガン編曲を作っている。

 ニコライ・デミジェンコHyperion/Helios)のCDソナタスケルツォマーチと一緒になって入っていて、よく聴く

3.BACH主題による幻想曲フーガ1870年出版

 元々はヴァイマール時代オルガン曲として作った曲だが、この時期にピアノ編曲された。BACH主題といっても、バッハの曲が引用されているのではなく、ドイツ音階BACH(シ♭・ラ・ド・シ)をモチーフにした勢いのある曲。暗い曲だが、豪壮無比な超絶技巧披露する曲であり、重苦しい感じはない。

 面白い曲なのに良い録音が中々ない。昔韓国のクン・ウー・パイクの録音を聞いた気がするが記憶に残っていない。アムラン(Hyperionソナタなどとカップリング)が良いと思う。若手だとリーズ・ド・ラ・サール(naive)の演奏は非常に録音も良く、技術的にも良い感じである(naiveは廃盤になるのが早く、入手が難しいのが困りものだが、配信あり)。(追記ハワード全集演奏も彼のヴィルトゥオーゾっぷりを味わえるものだったと思う。しかしアムランやラ・サールと比べると分が悪いか

4.クリスマスツリー S.186(1882年出版

 長女ブランディーの子ダニエラ(死んだ息子と同じ名前)のために作った曲(父は「自由帝政時代首相エミールオリヴィエ。なお産褥熱でブランディーヌは死んだ)。当時のクリスマス・キャロル編曲だが、リストオリジナルの曲も入っている。第1曲(編曲)がとても良い曲なのだが、リストお得意の左手高速オクターヴ連続があり、子どもに辛いのでは(しかもご丁寧に軽くleggieroという指示がついていてピアニストは悶絶する)。第11曲の「ハンガリー風」はおそらくリスト、第12曲の「ポーランド風」はカロリーヌを暗示しているのだと思われるが、後者は明らかにショパンマズルカ的な作風。やっぱりショパンのこと大好きなんすね~

 実はハワード全集しかいたことがない(しみじみとした良い演奏だと思います)。

5. 暗い雲 S.199(死後旧全集に収録/1881年作曲);不吉な星 S.208(死後旧全集に収録/1881年作曲);調性のないバガテルS.216a(1956年出版1885年作曲

 反則だが、リストの無調音楽代表格を一挙紹介。リストの無調音楽は、機能和声崩壊しているという意味では無調だが(その意味ではワーグナーの「トリスタン和音」も同様)、シェーンベルクの十二音技法のような意味で無調というわけではない(ドイツというよりフランスの無調音楽の先取りっぽい)。行くあてが未定まらないまま、タイトル通り曖昧な響きに終始する暗い雲、西洋音楽で不吉とされる音の組み合わせをこれでもかと盛り込んだ不吉な星は、これでも生前に既に演奏されてはいたのだが、調性のないバガテルは「無調」と銘打った音楽史上初めて(ではなかったとしても極初期)の作品で、発見されたのも20世紀後半になってからである1956年出版というのは誤記ではない)。ただ、元々メフィストワルツ第4番として作られていたので、舞曲の要素があってそこまで聞きにくい曲ではない。リスト精神状態もあって暗い感じだが、とにかくリスト前衛音楽家っぷりがよくわかる曲である

 いずれも録音はそこそこあるが、代表的な盤はあまり思いつかない。不吉な星はポリーニの録音したソナタCDカップリングされているので聴いたことがある人もいるだろう。暗い雲も入っていたと思う。調性のないバガテルはまあまあ取り上げられているが、昔カツァリスが日本で大ブレイクしていた頃に出したメフィストワルツ全集(Teldec)に入っている。

6. 悲しみのゴンドラ1886年出版

 初稿(21世紀に新発見され出版)、第2稿(悲しみのゴンドラI)、第3稿(悲しみのゴンドラII)がある。よく演奏されるのは第3稿(II)で、ヴァイオリンチェロのための編曲もある。

 ヴェネツィア所在だったワーグナー訪問した1882年作曲された。完成した曲をワーグナーに紹介する手紙を送り出した直後、ワーグナーが亡くなり、リストはこの曲を虫の知らせだったと感じたらしい。「巡礼の年」のヴェネツィアナポリと対比すると良い作品

 不安を煽るような曲だが、それほど聞きにくい曲ではない。色々なCDカップリングされているが、個人的にはブニアティシヴィリSONYソナタCD)が好きなのでよく聴く

 なお、ワーグナーの死を悼む作品リストは作っている(R. W. ――ヴェネツィア S.201とリヒャルト・ワーグナーの墓に S.135)。前者は不安を煽る曲だが(ポリーニCDに入っている)、後者敬虔な追悼音楽で、「パルジファル」の動機が使われている。ピアノより弦楽四重奏盤を聴くと良いだろう。

7. 村の居酒屋での踊り――メフィストワルツ第1番(1862年出版

 前期の曲と思いきや、実は後期の作曲作曲開始も50年代末のはず)である。やはり最後は明るく華やかな(そして生臭坊主な)リストで締めたい。着想自体は1836年に書かれたレーナウの叙事詩ファウスト」で、ファウストを連れて村の居酒屋にやってきたメフィストフェレスが、ファウストを誘惑するためにヴァイオリンを弾き出し、みんなノリノリになって踊り出し、魔法の音にあてられてファウスト女の子と一緒に森の中に消えていくというしょーもない内容である。技巧的な見せ場も多いのだが、ヴァイオリン調弦模倣した五度の音程を重ねるところ(地味に安定させるのが難しい)、中間部の重音トリル(ピアニスト泣かせ)と幅広い跳躍、終盤の怒濤の追い込み(メフィストフェレスがファウスト堕落成功してめっちゃ喜んでノリノリで弾いている様子なんだろう)が主なところである

 有名曲なので演奏はたくさんある。今ならブニアティシヴィリSONY)が良いと思う。ソナタも悲しみのゴンドラも入っているのでお買い得自由奔放にやっちゃってるが、そのくらいの方がこの曲に合っている。映像もある(https://www.youtube.com/watch?v=n1tM9YSLYdc)。なお、評判の良いエコノム(Suoni e Colori)とルガンスキーデビュー盤(Victor)は廃盤で聴いたことがない。早く再版しろ激怒

 いかがだったろうか。リストのいずれも強烈な個性を持つ曲、もし良かったら楽しんでほしい。YouTubeに乗っている曲だけでも良い。音楽の楽しみが増えれば幸いだ。

 (※その後超絶技巧七選も作ってみました。超絶技巧すぎてかえって推薦音源が少なくなったかも→anond:20241213224533

追記

 前期のブコメに「愛の夢落選した」というのがあった。申し訳ない。3つの演奏会用練習曲をその手の曲の代表例として入れたので。あと「コンソレーション」も同様に落選させた。同じような性格の曲集なのでどれを突っ込むか迷ったのだが、結局「ため息」のある3つの演奏会用練習曲にした。文字通りため息が出るような優美な「ため息」以上に愛の夢優美で、明るく感動的な曲なのだが、実は元となっている歌曲歌詞を見ると結構説教くさくて引くというのはここだけの話

 「エステ荘の糸杉に」が好きというブコメを頂戴した。リストエレジーはどれも本当にもの悲しく、個人的にはちょっと辛い感もあるのだが、気持ちは大変よく分かる。

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2024-10-01

愛の夢とか

僕が人を殺している時、一番最初に殺すのはもちろん僕自身だ。自覚的である時もあれば、そうでない時もある。朝、目が覚めたあとにすべき事の全てが面倒くさい。洗面所の窓からメジロの鳴き声が聞こえる時もある。たまに(本当にたまに)、恋人のことを考える。それから好きな人のことを考える。綺麗に重ね合わせようとしても、いつもわずかにずれてしまう。その差異さえも愛せてしまえたし、それが心底嫌だった。三日坊主をどうにかしようとする試みは三日で終わる。時々、近くの川でキジが羽を休ませている。君の好きな人のことを考える。君が吐き出すみじめな嘘は僕をバターのように簡単に切り裂く。泣きたくなるほど美しいと思うこともある。しかし、君は僕が涙を流すのを許さなかった。恋人否定されると悲しくなる。君の悪事を見ているだけの僕は言葉を上手く話すことができない。君は気まぐれに誰かを僕のところに引きずり込もうとする。しかし結局逃げられる。あるいは自ら放り出す。僕はそれを黙って見ている。勝手再生された曲は思いのほか耳触りがよくて、なんだか負けた気分になった。屋上カラスが鳴く。うまく出来ている、と強がってしまう。芸術には必ず嘘が含まれる。しかし、チラシの裏は君の落書きで埋まっている。僕が死角足音に怯えている間に先に行ってしまった人がいた。待っていてくれた人もいた。僕はこびりついた恐怖心を払拭することができない。弱っていると、普段は嫌っているものにも縋ってしまう。一つのベッドで二人の別々の人間眠ることもある。そこに必然的に生まれ孤独を僕は当然のこととして認めてしまう。まるでそんなものは無いかのように振る舞うあなたがよく分からない。同時に、この断絶に気付かれた時のことを思うとひどく恐ろしい。恋人否定されると悲しくなる。そして少し安心する。ずっと君の嘘のせいだと思っていたのに、君は黙って僕を指さした。僕の好きな人のことを考える。それは幼稚で盲目的で一方通行偏愛だ。与えられてばかりの僕が彼(彼ら?)にだけは一方的に与えることが出来る。何故なら彼には名前がないから。それが許されていることがたまらなく嬉しい。彼に身を委ねるのは心地がいい。こうして僕は沈んでいく。洗面所の窓からメジロの鳴き声が聞こえる。

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愛の夢とか

僕が人を殺している時、一番最初に殺すのはもちろん僕自身だ。自覚的である時もあれば、そうでない時もある。朝、目が覚めたあとにすべき事の全てが面倒くさい。洗面所の窓からメジロの鳴き声が聞こえる時もある。たまに(本当にたまに)、恋人のことを考える。それから好きな人のことを考える。綺麗に重ね合わせようとしても、いつもわずかにずれてしまう。その差異さえも愛せてしまえたし、それが心底嫌だった。三日坊主をどうにかしようとする試みは三日で終わる。時々、近くの川でキジが羽を休ませている。君の好きな人のことを考える。君が吐き出すみじめな嘘は僕をバターのように簡単に切り裂く。泣きたくなるほど美しいと思うこともある。しかし、君は僕が涙を流すのを許さなかった。恋人否定されると悲しくなる。君の悪事を見ているだけの僕は言葉を上手く話すことができない。君は気まぐれに誰かを僕のところに引きずり込もうとする。しかし結局逃げられる。あるいは自ら放り出す。僕はそれを黙って見ている。勝手再生された曲は思いのほか耳触りがよくて、なんだか負けた気分になった。屋上カラスが鳴く。うまく出来ている、と強がってしまう。芸術には必ず嘘が含まれる。しかし、チラシの裏は君の落書きで埋まっている。僕が死角足音に怯えている間に先に行ってしまった人がいた。待っていてくれた人もいた。僕はこびりついた恐怖心を払拭することができない。弱っていると、普段は嫌っているものにも縋ってしまう。一つのベッドで二人の別々の人間眠ることもある。そこに必然的に生まれ孤独を僕は当然のこととして認めてしまう。まるでそんなものは無いかのように振る舞うあなたがよく分からない。同時に、この断絶に気付かれた時のことを思うとひどく恐ろしい。恋人否定されると悲しくなる。そして少し安心する。ずっと君の嘘のせいだと思っていたのに、君は黙って僕を指さした。僕の好きな人のことを考える。それは幼稚で盲目的で一方通行偏愛だ。与えられてばかりの僕が彼(彼ら?)にだけは一方的に与えることが出来る。何故なら彼には名前がないから。それが許されていることがたまらなく嬉しい。彼に身を委ねるのは心地がいい。こうして僕は沈んでいく。洗面所の窓からメジロの鳴き声が聞こえる。

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2023-08-19

クラシックピアノ曲って一般人の中でどういう扱いなんだ?

エリーゼ幻想即興曲月光愛の夢、あたりを聴かせても、子供の発表会かよ必死でダサ!ってなるよな。

逆にプロコフィエフスクリャービンショパンあたりのソナタ聴かせても、何か意味からないし必死でキショ!ってなるよな。

Permalink |記事への反応(1) | 15:46

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2018-02-07

教養豊かな人なら読んでいて当然の日本文学102選(戦後編)

三島由紀夫金閣寺』『豊饒の海

谷崎潤一郎細雪』『鍵』

川端康成山の音』『眠れる美女

坂口安吾堕落論

梅崎春生『幻化』

武田泰淳ひかりごけ』『富士

佐多稲子『樹影』

安部公房『壁』『砂の女』『箱男』『密会』

大江健三郎性的人間』『万延元年のフットボール』『同時代ゲーム』『懐かしい年への手紙』『さようなら、私の本よ!』『美しいアナベル・リィ』『水死』

中上健次千年の愉楽』『日輪の翼』

開高健『輝ける闇』

高橋和巳邪宗門

大西巨人神聖喜劇

安岡章太郎ガラスの靴・悪い仲間 』

小島信夫『うるわしき日々』『残光』

庄野潤三プールサイド小景静物

津島佑子『火の山―山猿記』『ヤマネコドーム

稲葉真弓半島へ』

古井由吉『杳子・妻隠』『槿』『白暗淵』

後藤明生挟み撃ち』『壁の中』

黒井千次『群棲』

藤枝静男『田紳有楽空気頭』『悲しいだけ・欣求浄土

倉橋由美子夢の浮橋

田中小実昌ポロポロ

色川武大狂人日記

金井美恵子『愛の生活・森のメリュジーヌ』『タマや』

富岡多恵子『波うつ土地・芻狗』

河野多恵子 『みいら採り猟奇譚』

石牟礼道子『苦界浄土

村上龍コインロッカー・ベイビーズ

村上春樹回転木馬のデッド・ヒート』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル

高橋源一郎さよならギャングたち』『ジョンレノン火星人

笙野頼子『母の発達』『金比羅』『だいにっほん、おんたこめいわく史』

車谷長吉『鹽壺の匙』『赤目四十八瀧心中未遂

玄侑宗久アブラクサスの祭

池澤夏樹マシアス・ギリの失脚

保坂和志カンバセイション・ピース

堀江敏幸河岸忘日抄』

多和田葉子『雪の練習生』『尼僧とキューピットの弓』『雲をつかむ話』

阿部和重アメリカの夜』『ABC戦争』『無情の世界』『ニッポニア・ニッポン』『シンセミア』『ピストルズ

松浦理英子ナチュラルウーマン』『犬身』

中原昌也ニートピア2010』

町田康夫婦茶碗

舞城王太郎好き好き大好き超愛してる。』『九十九十九』『ディスコ探偵水曜日』『淵の王』

綿矢りさ『かわいそうだね?』

金原ひとみマザーズ

中村文則『何もかも憂鬱な夜に』『教団X』

柴崎友香『その街の今は』

岡田利規わたしたちに許された特別時間の終わり』

川上未映子愛の夢とか』『あこがれ』

水村美苗本格小説

前田司郎『愛が挟み撃ち

諏訪哲史ロンバルディア遠景』

本谷有希子『嵐のピクニック

磯崎憲一郎『往古来今』

青木淳悟『私のいない高校

朝吹真理子『きことわ』

小山田浩子工場

今村夏子『こちあみ子』

滝口悠生『高架線』

高橋弘希『指の骨』

崔実『ジニのパズル

Permalink |記事への反応(4) | 21:48

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