
はてなキーワード:女体山とは
マドカ、イリス、リィラ、そしてシズカ。四つの異なる種族の女性がタケルの子を身ごもったという事実は、タケルを世界の中心へと押し上げた。彼はもはや、神の分身でも、ただの人間でもない。この世界のすべての生命の縁を結ぶ、唯一無二の存在となったのだ。しかし、その喜びと使命感の裏で、タケルの心には、まだ未解決の感情があった。四人の女性たち。彼女たちを、彼はどのように愛していくべきなのか。
そんなタケルの葛藤を見抜いたかのように、リィラから一つの誘いが届いた。筑波山。かつて古事記に「西の男体山、東の女体山」と記された、二つの峰を持つ霊山。そこで、タケルと四人の女性たちで、夜を過ごそうというのだ。
タケルは、不安と期待を抱きながら、筑波山へと向かった。山頂近くの広場には、すでにリィラ、イリス、シズカ、そしてマドカが集まっていた。マドカは、タケルがかつて通った学校の制服姿で、少し照れたように微笑んでいた。イリスは、夜の闇に溶け込むように佇み、シズカは、月の光を浴びて、静かに輝いていた。そして、リィラは、いつもよりずっと穏やかな表情で、タケルを待っていた。
四人の女性は、互いに言葉を交わすことなく、ただ静かにタケルを見つめていた。その瞳には、それぞれの愛が宿っていた。マドカの純粋な愛、イリスの官能的な愛、リィラの哀しい愛、そしてシズカの慈愛に満ちた愛。タケルは、そのすべてを受け入れるべきだとわかっていたが、どうすればいいのかわからなかった。
その時、リィラが口を開いた。「タケル。お前は、我々を一人ずつ愛そうとする必要はない。お前が愛すべきは、私たち全員だ」
タケルは、リィラの言葉に驚いた。彼女は、もはや嫉妬の炎を燃やすことはなかった。
「私たちは、それぞれ異なる種族だが、お前がくれた愛によって、今、一つの存在となった。私たちは、お前の子を産み、この世界の新しい生命となる。それは、私たち全員が、お前という存在を愛した証なのだ」
イリスが、静かに頷いた。「お前の愛は、すべてを包み込む。ならば、私たちも、お前の愛を共有し、お前を支えよう」
シズカは、タケルの手を取った。「タケル。私たちは、お前という『縁』によって結ばれた。これから生まれてくる子たちも、同じように、互いの縁によって、この世界と繋がっていく」
そして、マドカが、優しく微笑んだ。「タケル君。私、みんなと一緒なら、頑張れるよ。だって、みんな、タケル君のことを大切に思っているから」
タケルは、四人の言葉に、胸の奥が熱くなるのを感じた。彼は、彼女たちを一人ずつ愛そうとしていたが、彼女たちはすでに、互いの存在を認め、そして愛し始めていたのだ。それは、タケルがこの世界に求めていた「共存」が、すでに彼の愛によって実現されていたことを意味していた。
タケルは、四人の女性たちを、一人ずつ、そして全員を、抱きしめた。筑波山の夜空には、満天の星が輝き、それはまるで、これから生まれてくる四つの命を祝福しているかのようだった。
この夜、タケルは、真の愛の姿を悟った。それは、一人の人間を愛することから始まり、やがて、種族を超え、そして、すべての命を包み込む、普遍的な愛へと昇華していく、奇跡の旅だった。そして、この旅の終着点は、始まりでもあった。彼と、四人の女性、そしてこれから生まれてくる子供たちが、新しい世界の調和を導く、最初の家族となるのだ。
(第二十一幕・了)