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2025-02-03

anond:20250202185558

円城塔の方が面白いことやってると思う

この辺は好みの問題かな

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2025-02-02

理系だけど日本古典文学を割と読んだから語る④

【前】anond:20250202175752

11:好色一代男 島田雅彦 訳[新訳] 雨月物語 円城塔 訳[新訳] 通言総籬 いとうせいこう 訳[新訳] 春色梅児誉美 島本理生 訳[新訳]

この中では雨月物語しか読めていない。確か角川ソフィア文庫で読んでいる。

村上春樹海辺のカフカ」で言及されていたので興味を持った。物語集として面白いのだが、序文紫式部を持ってくる自意識の強さが良い。あと、僕はそもそも怪奇物語が好きだ。好きなのは凄惨なスプラッタお化け屋敷的なジャンプケアではない。何か人知を超えた存在がいるという驚きや恐れなのだ

これは僕の感傷マゾとつながっているのだろうが、言い出せない妄念を抱えた死者というモチーフが好きだし、神話物語に通じる奇譚が好きで、だから仏教説話説教臭い割に好きだ。

ところで、東京創元社編纂したSF短篇集「時を歩く」にピンとくる言葉があった。空木春宵によれば、幽霊とは虐げられた人々の象徴で、だから怖いというよりも親しみを感じるそうだ。その言葉にはたと膝を打った。だから僕もお化け妖怪が好きなのだ。異様な姿をしていて、理解できるのかできないのかわからない、その「他者」っぽさが面白いんだ。モンスターが深い知性を持っているという設定、大好き。

ちなみに、小林泰三「酔歩する男」の元ネタ菟原処女伝説が、「浅茅が宿」でも触れられている。これを書いていたら小林泰三をまた読みたくなってきた。

菊花の約」は小泉八雲が「怪談」で翻案している。小泉八雲も上と同じ理由で好きだ。一度彼が翻案する前の原典を読んでみたい。僕は箱庭的世界というモチーフが好きなので「安芸之助の夢」が特に大好きだ。

ところで小泉八雲朝ドラをやるそうだ。大好きな作家だが、きっと観ないんだろうな。僕がテレビを見る習慣をなくしたのは、一つはイケメンの歯の浮くようなセリフを聞きたくないかなのだが、もう一つは小説家を目指すために、帰宅してから寝るまでの時間をずっと執筆にあてていたかなのだ。あと、ドラマを見ていると本編を放っておいて、史実ではどうなっていたかを調べる悪癖もある。

というわけで、残りの物語もそのうち読む予定。

12:松尾芭蕉 おくのほそ道 松浦寿輝 選・訳[新訳]与謝蕪村 辻原登 選[新釈] 小林一茶 長谷川櫂 選[新釈] とくとく歌仙 丸谷才一 他

これも「おくのほそ道」しか読んでいない。たしかビギナーズクラシックスだ。人々と交流しながら俳句を作っているのが楽しそうだけれど、地元に句会の記録が実は山ほど残っていたりしないんだろうか。

そういえば句会に通う友人にそそのかされて試みに俳句作ってみたけれど、短歌と比べて情報量が圧倒的に凝縮されている。言葉選びが極めて厳密で、密度が高い。短歌は十四文字だけの余裕があるがあるから、聞いていてもゆとりがある気がする。僕は散文の文学の良さは情報圧縮困難性、言い換えるならばどういう話かあらすじを短くまとめると魅力が失われる度合いが高いものを高く買っている。逆に、詩文はどこまで世界圧縮できるかだ。しかしながら、短歌枕詞で五文字も使う。なぜこんな効率の悪いことをしているのかは不思議だ。

短歌与謝野晶子俵万智穂村弘あたりを読み、俳句は他に高浜虚子あたりを読んだ。

俳句じゃなくて短歌だが、与謝野晶子熱量がすごくて読むのにえらく時間がかかった。また、穂村弘は生々しい男の生理表現されていて何となく好ましく思う。しかしそれを荒っぽくぶつけているようできっちりと計算して表現している。形式があらかじめ用意されているからこそか。「台風の来るを喜ぶ不精髭小便のみが色濃く熱し」「男の子はまるで違うねおしっこの湯気の匂いも叫ぶ寝言も」「泳ぎながら小便たれるこの俺についてくるなよ星もおまえも」。僕は意外と暴力的ものが好きらしい。

俳句は数が多く、未読が多く、次々に新しいのが生まれており、追いつけない。ここに載せられた作品もいつかは読みたいが、記憶に残らないこともあるだろう。しかし、すべてを記憶しておかないと不安だというのも強迫観念に過ぎない。読んだその場で一期一会幸せを覚えれば、それでいいのかも。ちなみに、俳句が作者の目の前で論評されるバラエティは、かつて通った小説創作講座を思い出して胸が苦しくなるから、見ていない。あれ残酷だよね。

こうしてみればわかると思うが、平安時代文学と比べると、まだまだ読めていないのが江戸時代作品だ。開き直って現代語訳でどしどし読みたい。

古典は急がない。いつまでも待ってくれている。世間流行っている作品とか必読書とかそんなのとは無縁だ。千年前の作品を読むのが一年や二年遅れたところで、どうということはない。

ところで脱線するけれど、いま生きている人を推せる人って偉いと思う。だって、いつスキャンダル裏切られるかわからいからだ。それこそ明治文豪クズだったとかいう話はよく聞くけれど、今となっては本人を含めて関係者がみんな死んでるので、多少は冷静でいられる。新たに醜聞が掘り起こされても「昔の人だからね」とどこか冷静になれる。今の人だとこうは行かない(以下、きちんと謝罪をしなかったためその態度に非常に腹が立ってファンをやめた人や、音痴イケメン歌手実例を事細かに挙げるつもりだったが、見苦しいので削除した)。他にも存命人物だと、事件を起こす前のオウム真理教面白がってた著名人や、古本屋で見つけたロリコン写真集に「これぞ芸術」と推薦文を寄せていた文化人に「逃げるなァァァ」と言いたくなることがある。

やっぱり推しは死んでいる人に限る。どんな差別発言をしていても過去の人間だから納得できてしまう。そんなことを頭の片隅に置いてネットサーフィンをしていたら、芥川龍之介が「侏儒の言葉」で似たようなことを言っているのを見つけた(正確には、悲観主義について調べており、そこから哲学者フィリップマインレンダーを見つけ、そこから偶然にも「侏儒の言葉」の言葉にたどり着いた)。

   古典

 古典の作者の幸福なる所以兎に角彼等の死んでいることである

   又

 我我の――或は諸君幸福なる所以兎に角彼等の死んでいることである

侏儒の言葉」は好きなんだけど、読んでいると段々と彼の鬱に巻き込まれていく。いつか芥川全集をぶっ通しで読みたいが、晩年作品を読むと真実を言い当てすぎていて心底気分が悪くなってくる。二十代の頃のようにシニシズムを楽しむだけの体力がもはやない。ネヴァーモア! 昔はアンブローズ・ビアス悪魔の辞典」とか大好きだったんだけどな。

とはいえ、数百年前の古典を無批判に読んでいると、人間身分上下があることやとりあえず天皇家が偉いことが自明に思えてくるし、人命がアホみたいに軽いことに感覚がマヒしてくるので、これもまたよろしくない。

こういうことを考えている時は大抵は体調不良ときなので、筋トレなりストレッチをしたりするのがいいのである。僕らは結局肉体を備えた存在で、そこから入力がどんな言葉よりも助けになることが多い。というか、言葉自家中毒を起こすことはよくあるのだ。ペッペデス。頭が良すぎて不幸になった人間物語は好きだが、芥川には生きて戦後を見てほしかった。

さて、池澤夏樹全集では、これ以降の巻では明治作品が扱われる。しかし、ここまで書いてきてかなり長くなってしまった。ひとまず、江戸時代までで一区切りとし、近代作品はまた別の機会としたい。おそらく本気になって書いたら、作家ごとに思い入れのある作品は多く、言いたいことはたくさんあるので、もっと長いエントリになることだろう。近現代作家集に至ってはIからIIIまであり、合わせて何十人もの作家が紹介されている。倍近くになるだろう。

ただし、その機会がいつ訪れるかはわからない。先にドストエフスキー中島敦ポーラブクラフトについて書くかもしれない。あるいは、文学にかこつけた自分語りが一段落したので、これで終わりにすることも大いにありうる。

なお、次のエントリでは、有名どころだが話の流れから言及できなかった作品について述べる。

INTERMISSION④

さっきは何が苦手かについて書いてしまったので、逆に何が好きかについても少しは語ろう。芥川賞をはじめとした現代文学を読んでいて、どういう作品自分に刺さるかを整理すると、知識豊富な語り手の小説が一番好きで、その次が自分の巨大な感情論理的言語化するのがうまい人が語り手であるものだ。それから、無軌道な性欲や暴力衝動、ひがみなどの負の感情を抑えきれない人間が出てくるのが続く。自分中高生の頃、そうしたダークな受賞作が連続していたと記憶している。田中慎弥共喰い」とか、時代は下るが西村賢太苦役列車」とか、砂川文次「ブラックボックス」とか、自分暴力衝動に屈する人間を描いたのが好きだ。青来有一「聖水」とかもそうだ。世間からはみ出してしまった、汚らしい人間が好きだった時期がある。おそらく「悪とは?」が内なるテーマだったんだろう。

芥川賞は一つの賞でしかなく、世間的には評判が良くてもピンこと来ない作品はどうしてもある。若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」は最初から自分の中の無意識の声たちについて説明しすぎていて、「それだったら最初から意識の流れとか無意識って言えよ」って思ってしまって、それ以来ずっと批判的にしか読めなかった。あれは高齢者向けの一人で生きることを学ぶ教養小説なんだよな。あと、又吉直樹作品結構な頻度で、的外れ批判をしてくる劇団員女性が出てくるけれど、「お前、本当は社会的作品批評が嫌いだろ?」っておちょくってやりたくなる。村田沙耶香コンビニ人間」については前回のエントリ名前を伏せてチクリとやってしまった(最後まで読んでいないくせに!)。

理想を言えば性別だとか人種だとか国籍だとか年齢だとか思想だとか、そういうのを抜きにして作品評価したいんだけれど、ある程度年齢を重ねてくると、十代の頃のように素直にストーリーを受け止められず、若いころのように思考の柔軟性がなくなり、労働で疲れていては異質なものを楽しむゆとりが減る。どうしても自分属性性格が近い人の文章面白く感じるので、公平に評価するためにマイノリティ枠を設けるってのは、いくつかの問題点があるとはいえ、一つの知恵だと思う。なお、文学的に優れていることと、そのとき自分に刺さって面白いのと、今の社会必要としているのとは、まったく違うので、話題小説がいつも面白いわけにはいかないのはしょうがないのだろう。

脱線すると、芥川賞を取ってもその後書き続けられた作家のほうが面白い。というか、受賞作がつまらなくてもその後面白くなる作家も多い。しかし、逆に芥川賞を取る前の青臭い作品しかない魅力もある。長編を連載するだけの構成力も体力もないデビューしたての漫画家の初期短編からしか得られない栄養素があるのと同じだ。

なお、僕は大体漫画を買うとき短編が多い。「Fellows!」「ハルタ」「エロティクス・エフ」「楽園」「アフタヌーン出身漫画あたりから、絵が好みなのを選んでいるようだ。

というか、みんなあれだけ長編少年漫画を読むだけの体力があってすごい。ただし、僕がなかなか長編漫画が読めないのは、活字のようにぶっ通しで一気に読もうとしているからという可能性がある。連載を追うペースで、ゆっくりと読めばいいはずだ。

なんでこんなことを言うのかというと、僕は同世代経験相対的に乏しいためだ。例えばゲームが下手すぎて、ドラクエファイナルファンタジーなどの多くの作品プレイできていない。ポケモンでさえ途中で飽きる人間なのだ自分が好きなペースで刺さった作品を読んでいるだけなのだが、時折どうしても疎外感を覚える。若いころにもっと流行りのJ-POP聞いてりゃよかったよ。そりゃあ人は人、自分は自分だけれど、寂しい。

とはいえ少年漫画の多くは恋愛が扱われるので、そこまで読みたい気分でもないのである

こういうことを書くと「課題の分離」とかいう話になりそうだけど、個人的にはアドラー心理学はそこまで信用していない。さっき書いた「課題の分離」をはじめとした有益概念は多いし、原因を探るよりもまず対処法を考えるのは、実生活で非常に役に立つ。というか、実際に役に立った。だが、「嫌われる勇気」をはじめとした本ではいいことを言っている一方で、「私に反論するとしたら、それは私の理論理解していないからだ」という、反証可能性を潰すような自己完結した思考をしているのがいただけない。これは初期のフロイト派の「私に反論するとしたら、それは私に父親見出しいるからだ」とか、古い時代フェミニストの「私に反論するとしたら、あなた女性差別を乗り越えられていないからだ」とか、それらと同様の理屈だ。なにか自己完結した、人の話を聞かない嫌らしさを感じる。

自己完結と言えば、たとえば何人かの反出生主義者が(もちろん別の哲学的立場でもいい、実例は見たことがある)、予期される反論に対してすべて想定問答を作ってガチガチ自己防衛をしているのを見ると、圧倒的な壁のような「他者」を感じる。この人と議論しても、自分相手も何も変わらないだろうなという、諦念を感じることがある。互いに変化をもたらす「対話」にならないのだ。

意識の高い人たちが叩かれるのはこれも理由かもしれない。会話をしても意見を変えてくれないだろうと感じるのだ。一方的議論をしたいのなら活字でいい。僕は対話がしたいのだ。

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2025-01-02

追補編①

【前】anond:20250102212454

以下はすべて見苦しい言い訳である

ざっと振り返ってみたが、どの本も細部がかなり記憶から零れ落ちている。ほぼ記憶が頼りだから極めていい加減だ。アラフォー文学少年崩れなのでしょうがない。そして、当時感じていたひがみ根性を思い出して少し苦しくなってしまった。欲望コントロールに苦しんでいた若いころの感想なので、今になって読み返したらまるで違った感想を持つことだろう。知識も増えたし。

そのドロドロした感情の半分くらいは過去のものとなっている。近頃は心の闇が薄れてきた。これは加齢によるものだろう。読書の好みもすっかり変わってしまった。たぶん今読み返したら全然違う感想を持つはずだ。今となっては、モテない悲哀には昔ほど心が動かされないのではないか

モテない怒りというのは、自分プラス感情を渡したのにそれが返ってこなかったというのが根っこにあるのだろう。しかし、相手気持ちがどう動くかってのは相手自由意思なので、こちらの意のままになるはずなんてない。任意相手の心を開く万能の鍵なんてない。相手コントロールしようとするのは無駄だ。それで相手に怒りを覚えてしまうのは、共感的に深く理解できるが、己のわがまましかなく、こんなこだわりはどこかで捨ててしまわないと苦しい。

話を戻そう。前ほど心を動かされないと書いた。そのせいだろうか、読書量は変わらないが、小説を読む量も減った。

今の自分は、何を読んでも似たような感想になってしまう。結局、何を読んでも同じことを思い出すのではあるまいか。そして、前述の感想を見るとわかるように昔からそうだったのだが、自分境遇に引き寄せてしまって無数の誤読をしているはずだ。結局は自分が、我がどうこうという意識から離れられない。

しかしたら、凝り固まった大人になってしまったのかもしれない。過去エントリから大して感想進歩していない。そしていつの間にか、たとえば「女性作家とはこういうものだ」「この国のこの時代文学はすべてこうだ」という、偏見に満ちた思想自分の中でどんどん育っていっているのを感じる。気づいた範囲修正してはいものの、怖い。しかもこの半年ばかり、小説を読んでいない。

文学にすがらないと生きていけない段階を、幸福なことに脱したのかもしれない。どろどろとした感傷はすべて過去のものとなり、深い眠りについたようにも見える。それに、小説を読んで感情を揺さぶることが、メンタルヘルスに対してプラスなのかどうかも疑わしくなってきた。穏やかに、つらい出来事の起きないフィクションに移行したほうが、幸福なのかもしれない。クラークが「2001年宇宙の旅」で、最後に生き残ったデイヴィッド・ボーマン一人ぼっち音楽鑑賞をするのだが、オペラうんざりしてクラシックしか聞けなくなり、最後バッハにたどり着いたのを連想する。人間社会から離れた彼は悲劇の筋書きに対して、「常識を働かせれば解決策があるのでは?」みたいな感想を持ってしまう。そして、感情激流であるヴェルディレクイエムにひどく打ちのめされ、物静かで抽象的な音楽に向かうのだ。

それとも、文学は僕にとって生きていくうえで出会出来事への予行演習だったのかもしれない。今、何気なく「予行演習」と書いたが、これはかなりしっくりする表現だ。振り返れば、若い人間が生きるとはどんなことなのか先が見通せず、答えを得ようとしていたようだ。起こりうる様々な不幸に備えて心の準備をしていたのだろう。

いや、少し矛盾している。何を読んでも似た感想になってしまうのは、モテたいという気持ちがあった若いころもそうだった。感情で消耗するのに、単に疲れているのかもしれない。感情を動かされるのを避けていて、知識をいたずらに溜め込むことしかしていない。最近阿部勤也の中世の本や、ブルーバックス地質学の本を読んでいる。これはこれで楽しい

⑤で触れた「エタンプの預言者」みたいに、最近海外文学のあらすじを読むと、文学価値観の変化の速さに正直ついて行けなくなっているようだ。実感をもって何かを理解する間に、すべてがどんどん先に進んでしまう。おそらくこのエントリも古い価値観で書かれていることだろう。僕はもう世界には追い付けない。職場コンプライアンス違反にならないように表面を糊塗することしかできない。文学を読んで正しく真っ当な人間になろうとしたが、結局はあらゆる欲望から自由になれなかった。むしろ意識の高さは自己批判を強め、心のバランスを崩すことになった(余談だが、東大の有名な総長がタフであれと何度も言っていたけれども、心身の障害でタフになれなかった僕は苦しかった。また、十数年後の新入生式辞でジェンダーギャップについて述べたこれまた高名な社会学者がいて、これはニュースにもなった。理屈はまったく正しいし、性別による不平等や扱いの違いは僕も大嫌いなのだが、一方で新入生に私怨から祝福ではなく呪詛を浴びせたように思ったし、自分がされて嫌だったことを次の世代にぶつけているだけではないかと感じた。そして、そのせいで「自分入学できたのは性別理由なのか?」と、ものすごく努力していたのにもかかわらず、重篤インポスター症候群に悩まされることになった。愚痴は以上である)。

そもそも、なんで文学が好きになったのかを考えると、はじめは頭が良くなりたかたかなのだが、究極的にはそこに人間の愚かさが表現されているからだろう。そこにいれば自分のひがみっぽさや醜さを受け入れることができる。少なくとも同じくらい大きくてネガティブ感情を抱えた人間世界にはたくさんいるのだと慰められる。ダメなところを許してくれるのが文学だった。そんなものを読んでいても、大人は何も言わない。

文学が読めなくなった文学少年崩れになっても、はてな匿名ダイアリーから離れられなかったのも、それが理由だ。人間の偽らざる感情増田怪文書にはある。

ところで、僕は障害者であり、二級の手帳を持っている(ただし、弱者だと名乗るつもりはさらさらない。うちの大学卒業した連中の平均の給与の半分どころか三分の一ももらってはないだろうが、弱者男性とかブサメンとか非モテとかそんな看板を立てるのは正直に働いている自分プライドが許さない)。加えて、海外在住経験がある。にもかかわらず、社会派の文学にはほとんど心が動かされなかった。その多くで感情よりも理屈が優先されているからだ。政治的な主張がしたければ、直接論理的分析したほうがわかりやすいし、散文なら書く方も読むほうも時間が短くて済む。イデオロギーに縛られていては展開だって予測できてしまう。政治的作品面白いのは全体の一割だろう。最後まで読みたいだけの魅力が薄い。

余談になるが、そういう意味でも、現代アートで深く刺さる作品は少ない。知的には面白いと思っても、心を動かされ、性欲を刺激され、あるいは激しく嫌悪し、内臓理屈を超えて震えるのが、僕にとっての芸術だ。一昔前の表現でいうと前なら左脳ではなく右脳が刺激されるような作品がいい。ルネサンス近世西洋画のように、シンボルを読解するのはそこまで心が動かされない(ごくごく一部の高度に知的作品、持てる知識を総動員しないと面白くない作品を除く。これは全力で取り組まないといけないため、別の良さがある。ジョイスとか円城塔とかエーコとかね)。そして、優れているのに、言語化が困難なもの評価が一番高い。その点、マグリットの、言葉遊びによる対象の置き換えをモチーフにした作品はピンとこなかった。理詰めで説明がたやすいのは良くない。

もっとも、あらゆる芸術の九割はそもそもさらないというのは、普遍的法則である可能性がある。なんであれ、世間がどう言おうとも、作品を好きに読んで好きに解釈する自由は、失われてはならない。唯一の正統的な解釈があるのはつまらん。「丁寧に読解しろ」ってのならわかるけど、どんなものであれ上から押さえつけられるのは相手が正しくても嫌いだ。人間にはどんなに歪んでいても、そして不道徳であっても、正直な気持ちを話せる心理的安全性担保された場所必要だ。そして、相手世間的に正しいとされていると、こちらは反論できないし、反論すること自体批判される。だからキレて暴れるしかない。正しさへの嫌悪ってそういうことなんじゃなかろうか?

ときどき、「どんな理屈をこねるよりも、目の前の相手に敬意を払うにはどうすればいいのかという実践にの意味があるのでは? 知識は参考にしかならんのでは?」って疑念が兆す。それとも、こうなってしまったのは文学に対して心を閉ざしてしまたからだろうか? だから前ほど心が震えなくなってしまった。だとしたら寂しいことだ。

近頃、文学に対して心を閉ざしているとしたらなぜだろう? 政治の季節は理由ではない。他に理由がある。僕は実はかつては小説家になろうとしていた。名作に手を出していたのはそれも理由だ。最終選考まで行ったこともある。だが、その願いは叶いそうにないと気づき、怒りから小説から遠ざかった。

同じ夢を持っていた友人・知人がデビューするのも見てきている。現代作家を読まなかったのもそれが一因だ。自分のほうがいいものが書けると傲慢にも思いこんでいたからだ。彼らの作品を読むと、そんな思い上がりは雲散霧消するけれどね。

今でも、数か月に一度目を覚ます飢えがある。発作的に何かを書きたいという欲望だ(実際、こうやってちょっとした短編小説くらいの長さのエントリを書いていてすごく楽しい。じゃあ増田じゃなくてブログでやればいいんだろうが、少なくとも同レベルエントリ継続的に書けない。なぜならこの文学全集を読むのに十数年かかっている。こういうネタは量産できない。このエントリでいったい何冊の本に言及してるんだ?)。

しかし、最終選考の講評ではボコボコ批判されたし、これ以上自分気持ちを書いても自分幸せにならないと、諦めがついたはずだった。それに、小説感情の垂れ流しではありえない。読者を楽しませる必要がある。少なくとも読者の受けるであろう感情計算せねばならない。加えて、デビューした友人はものすごいインプットをしている。これは認めないといけない。活字を読む量は僕のほうが多いが、それ以外に漫画だとかソシャゲだとかエロゲとか映画とか、とかくジャンルを超えて摂取しているものが多い。例えば現代女子高生を魅力的に書くには、そのキャラかわいいことと、リアルティーンエイジャーとしてありそうかという軸がいるが、僕にはどちらもできない!

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理系池澤夏樹世界文学全集をほぼ全部読んだから五段階評価する⑤

【前】anond:20250102174224

2-07「精霊たちの家」イサベル・アジェンデ木村榮一訳★★★★

世代女性たちの年代記であり、「百年の孤独」と対比されるんだけれど、こちらのほうがずっと読みやすい。ちなみにガルシアマルケスコロンビア人で、アジェンデチリ人

しかし、女性物語としての記憶は薄れていて、覚えているのは暴君として君臨していた祖父エステバン・トゥルエバのことだ。彼が地元女性強姦して産ませた息子が、因果が回って彼の孫娘を強姦する。因果というか、悪い行いの結果って一番弱い立場の人に最悪のしわ寄せがくる。しかし、孫娘の嘆きや苦痛強姦の苦しみの割にはごく短く語られている。

同じく、よしもとばななアルゼンチンババア」かなにかで、語り手がいとこに犯されそうになったことをさらりと書いているのだが(そして、そのいとことほとんど恐れもなく顔を合わせるのだが)、性暴力について文学でどう扱えばいいのかは自分はよくわからない。女性からセクハラされた僕だって迷う。性暴力表現するときにどれくらい気をつかうかは、殺人事件よりも慎重になっている印象がある(それだけ殺人が稀になったってことかもしれない)。

書かなかったのか、書くことができなかったのか。アンソニー・ドーア「すべての見えない光」でも、ソ連兵に犯されたドイツ人女性がたくさん出てくるが、彼女たちが戦後どう生きたのかについては、わずしか触れられない。

道徳的理由表現規制されるのは、真実から目をそらすことになる気がするので好まない。一方で、当事者の声を無視しても結果的には良い物にはならない。このあたりは想像力の飛翔との兼ね合いでいつも居心地が悪くなる。「好きなように書かせろ」という書き手としての自分と、「当事者以外が勝手なことを書くんじゃないよ」と別の自分がいつも喧嘩している。

2-08「パタゴニア/老いぼれグリンゴブルースチャトウィン芹沢真理子訳/カルロスフエンテス安藤哲行訳★★★★/★★

ブルースチャトウィンパタゴニアを読むと、旅はいい、とため息が漏れる。何度だって書くが、紀行文はいい。定期的に読みたくなる。その土地しかない暮らし風土、それゆえに自分たちと異なった風習を持ち、理解しがたい態度を取る人々。航空機以前のように、数か月の旅を空想するのが好きだ。チャトゥインはオーストラリア舞台にした「ソングライン」もある。アボリジニは他の文化の持ち主には見えない道をたどり、万物名前を付けて大陸中を歩いてきたのだ。

カルロスフエンテス老いぼれグリンゴはあまり記憶していない。モデルとなったアンブローズ・ビアスの書いた「悪魔の辞典」はかなり好きなんだけどな。筒井康隆を始めいろんな翻訳があるのでオススメ

フエンテス短篇集「アウラ・純な魂」のほうがずっと面白かった。老いが迫る男、幼馴染のようにべったりした兄妹の別離、小さい頃に一緒に遊んであげた小さな女の子の末路、鏡のある真っ暗な部屋で魔術によって若さを保つ老婆、それから脱走兵が出てくる。

2-09「フライデーあるいは太平洋の冥界/黄金探索者」ミシェル・トゥルニエ榊原晃三訳/J・M・G・ル・クレジオ 中地義和訳★★/★★

ミシェル・トゥルニエフライデーあるいは太平洋の冥界」はかなり観念的な話だったと記憶している。文明自然を対比させるために(?)読者に理解やすロビンソン・クルーソーとカオティックな行動をするフライデーが出てくるのだが、舞台ロビンソンが島そのものとの性交子どもが生まれるという神話的な世界だった。これを読んだ後で、理解を深めるためにデフォー原作を読んだのだが、記憶していたような絶海の孤島ではなく、近くに南米大陸がある島だった。そういえば子どものための抄訳版にも、近隣から人食い人種が攻めてくる描写があった。

M・G・ル・クレジオ黄金探索者」は姉と弟の閉じた世界が壊れるというか、外部の世界を知るような話だったと記憶している。姉と不可分な存在となって、マダガスカルサトウキビ畑を歩いていた場面があったはずだ。小さな子供の目から見た植民地世界の、どこかに宝物が埋まっているんじゃないかと期待しながらも、閉塞した記憶だ。ラストでは故郷家族恋人黄金もすべて失い少年期が終わる。しかし、不思議と読後感が清々しいのはなぜだろう。まるで、すべてはここから本当に始まるのだ、という気分である

ル・クレジオ難解な作品とそうでない作品の差が激しい。「海から来た少年」はまだわかりやすいんだけれども、太陽を見つめて意図的盲目になる「大洪水」は二回読んだはずなんだがさっぱりわからなかった。

2-10「賜物」ウラジーミル・ナボコフ沼野充義訳★★★★

一時期ナボコフがすごく好きで、文学講義シリーズも読んだんだよね。前のエントリで書いた「ロリータ」だけじゃなくて、ソ連から亡命した冴えない教授を主役にした「プニン」だとか、架空の国ゼンブラを舞台にした架空の詩と、それに対する真実虚構かわからないような注釈が、見開きの右と左に分かれていた「青白い炎」だとか、そもそも実在する世界舞台にしているかどうかさえ疑わしい兄妹の恋物語「アーダ」だとか、みんな好きだった。で、これらは英語創作されているんだけれど、最後ロシア語で書いたのがこれ。詩人になるまでのお話

難民のように食うや食わずではなかったけれども(そしてそのせいで政治的過小評価されることもあるけれど)、ナボコフはやっぱり偉大な亡命作家の一人だ。でも、ユーモアを忘れていない。

で、本作では片想いをしている女性を思い浮かべながら、どの女性を見ても彼女のことを思い出し、彼女連想できないタイプ女性には嫌悪を覚えたという趣旨のことを書いていて、ちょっとだけ分かるんだけれどひどいことを平気で言う作家だなと苦笑いをした。

フョードルコンスタンチノヴィチに向かってうら若い牛乳瓶を持った娘がやってきたが、彼女はどことなジーナに似ていた。いや、より正確に言えば、この娘には、彼が多くの女性たちに見出しているある種の魅力――それは明確なものであると同時に、無意識的なものであった――ひとかけらが含まれていたのだ。そして、彼はその魅力の完璧ものジーナの中に認めていた。だから、そういう女性たちは皆、ジーナとある種の神秘的な親族関係にあるということになるが、その関係について知っているのは彼一人だったのであるもっとも、その関係の具体的に言い表せと言われても、彼にはまったくできなかったけれど。(ただ、この親族関係の外にある女性たちを見ると、彼は病的な嫌悪感を覚えた)。

僕は基本的に豊かな知識を持ち、普通に文章を書くだけでその該博さがこぼれてしまうために、結果的にひけらかしと受け止められてしま作家が割と好きで、一時期円城塔にもどっぷりハマっていた。一方で、「ロリータ」については、暇なときパラパラとページを開いていると、語り手の身勝手さがだんだんと鼻につくようになってきた。ハンバート・ハンバートって、でっぷりしたおばさんを見て、「ニンフェットの美しい肢体を生き埋めにした棺桶だ」って趣旨のことを平気で言うんだもん。性格悪いよね。

とにかく、前は金に困っていない人間が、道徳を踏みにじっているのを美々しい文章で糊塗しているのが(当時は悪とは何か知りたかったし、悪いことをしている狂った人間の話が読みたかったし、知性を感じる文章が好きだった。そういう意味でも「悪」を扱った遠藤周作がすごく好きだった)面白くてしょうがなかったのだが、いまとなってはそこまででもなくなっており、自分の中で「ロリータ」の魅力が少しかすんできた。それとも僕が少女に心惹かれなくなっただけなのか。

なんにせよ猛烈な魅力を感じていたのにプツンと魔力が消えてしまうことはある。以前は三島由紀夫が大好きだったのに、「豊饒の海」を読む前に魔法が消えた。たとえば「潮騒」を読もうとしたら、彼の文章リズムが心に響かず、全然読めなくなっていた。

少女と言えば、初めて「ロリータ」を読んでいた二十代の頃、一年に数回ほど発作的に年端もいかない少女に対する強烈な憧れが募っていた時期があったのだが、少女と知り合って仲良くなるプロセス現実的に細かいところまで検討すると、真っ当な手段がどこにも存在しないと気づいて、途端にこうした欲望への嫌悪の情が浮かんび、緩解していった。それに、無知相手自分利益のためだけに利用するのは邪悪定義に当てはまってしまうしね。

おそらく、当時の自分が憧れていたのは現実少女ではなく、思春期の頃に空想するような、成長の痛みや性の悩みに寄り添ってくれる同い年の少女で、その記憶を引きずっているに過ぎないのだ。つまり、幼馴染への憧れだ。そういう少女思春期の頃に出会えるはずはないし、自分問題自分解決しないといけない。そのうえ、よしんば実在したとしても、そんな少女とは「ノルウェイの森」のキズキと直子や、「海辺のカフカ」の佐伯さんと彼女恋人のように閉じた関係になってしまうだろう。結局は、成長の痛みを引き受けないことによる歪みを必ずや生み出すだろう。そういう空想上の女の子自分自身の鏡像ユングのいうアニマで、つまるところこれは自己愛である。今はむしろ年上好きである

(どうでもいいけどウィキペディアロリコン写真集記事、内容がやたらと詳しいんだがこれって倫理的にどうなのよ。誰かが興味持っちゃったらどうすんの)

2-11ヴァインランドトマス・ピンチョン佐藤良明訳★★

ピンチョンはよくわからない。陰謀論ネタにしているんだろうが、直接扱ったエーコフーコーの振り子」のほうがエンタメとして好き。陰謀論的な思考ちゃんと茶化しているしね。個人的にはエーコが作中で既存の有名どころの陰謀論をすべて統合したオリジナルの壮大な陰謀論を作り上げているあたりがヤバい。あるいは架空史の仁木稔の「ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち」か。困ったことに、これらの作品が発表されてから陰謀論ネタとして面白い物から現実の脅威となってしまっている。

エーコが楽しめてピンチョンにピンとこなかった理由を考えてみると、たぶん元ネタとなる知識をどれくらい知っていたかに尽きる気がする。自分キリスト教やオカルティズム、カバラや魔術については多少わかるのだが、六十年代アメリカポップカルチャー現代エンタメには詳しくない。だが、この作品は実際、死をもたらすツボ押しマッサージが出てきて「あと何日でお前は死ぬ」みたいな「北斗神拳」っぽいネタを扱っている。なんせこの爆弾を埋め込まれるのが日本人サラリーマンなのだ

2-12ブリキの太鼓ギュンター・グラス池内紀訳★★★

文庫本にして三冊の本を無理やり一冊に押し込んで、小さな活字二段組みなので読むのがしんどいし、「早く読み終えなきゃ」って焦ってしまった覚えがある。馬の生首のシーンが有名だよね。

三歳で成長するのをやめたダンツィヒ回廊生まれ少年主人公の癖に、義母を寝取って子どもを産ませているんだから、とんでもない話だ。純粋無垢なままでいるために三歳よりも大きくなるのをやめた話と思わせて、実は様々な女性恋愛遍歴をしている。家族が次々と殺されて行ってもね。

そういえば、さっきモテる奴の話を読んで何が面白いのかと書いたけれども、舞台現代日本でなければ別世界ファンタジーとして享受できるらしい。幼馴染のロマンスだって、別の国や時代舞台ならまだ受け入れられる。たとえばロンゴス「ダフニスクロエ」だけじゃなくてコレット青い麦」も割と好き。どっちも少年側が人妻に性の手ほどきを受けるので、これで多少性癖が歪んだ気がする。村上春樹海辺のカフカ」と合わせておねショタに目覚めてしまった。あと、青春物があまりきじゃないのに、「十三機兵防衛圏」はプレイできているの、あれが一つは君と僕みたいだけみたいな閉じた雰囲気じゃなく、感傷ダダ洩れの地の文章が無く、群像劇からってのもある気がする。

話を戻す。うじうじしているくせに、本当はモテることにすごく憧れているただ。だが、十五分の自慰行為あいだならエロ漫画主人公と同一化できるかもしれないけれど、数時間かけて読む文学では自己同一化魔法は解けてしまう。細かい設定があるのだから自分との差異がどんどん強調される。自分は到底なれそうにもない、かっこいいキャラモテても、ちっとも面白くないのであるしかしこんな話を聞かされる読者も面白くないだろうしこのあたりで切り上げる。小説ダメ人間、僕が先に好きだったのにという人間にならなんとか自己同一化できたのである(余談だが、かつての週刊誌の中づり広告のようなエロス無法地帯ウェブ広告で「カラミざかり」が出てきたとき主人公の来ている服のロゴに「cuckold」と書いてあったが、これは英語で「寝取られ男」という意味である。そういう芸の細かいところ、わかる人にはわかる小ネタは好きよ)。

少し現実的に考えてみれば、滅茶苦茶にモテ複数女性から同時に交際を求められたら、しかも好みの相手でなければ、それはそれで面倒そうなのであるが、嫉妬と羨望に狂っているさなかにはそれはわからない。同じく、浅ましいことに3Pとかも憧れるけれど、よしんばそんな機会が訪れたとして、絶対気をつかうし面倒くさい。自分が手に入れられなかったもの理想化されて頭の中で猛烈な輝きを持つが、一度頭を冷やしてみよう。

続く。

Permalink |記事への反応(1) | 21:15

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2023-12-21

セックス時間苦痛

相手大学の先輩。初デートホテルに連れ込んだ。前々からセックスをそてみたかたからだ。我慢できなかった。

しかし、初めてヤった感想は「こんなもんか」であるキス特に味もないし、フェラチオは思った以上に低刺激だし……。

直前の興奮がMAXで、あとはなだらかに下山していく。そんな感じだった。でも、彼女に悪いのですごく気持ちよかったかのように演技した。喘ぎ声も出した。

それからしばらくはヤるたびに鬱になった。みんなこんなことのためにたくさんの投資をし、中には犯罪を犯してまで求めているというのに、こんなにも期待外れでいいのか?

こんなことなマクドナルドビッグマックコーラで流し込みながら、円城塔小説でも読んでいた方がマシだ。セックスするよりも、彼女とくだらないことを喋って笑いあっている方が幸福に近い。

どうしても許せないのが、ディープキスであるビデオだと男女が目をトロンとさせながらとても楽しそうにむさぼりあっているのに、実際にしてみると何も面白くない。「早く終わらないかな」と僕は思っている。

フェラだってそうだ。最初は咥えられているのかわからなかった。もっと陰茎が溶けてしまうじゃないかっていう至福を想像していたのに。ガッカリだよ。

ひょっとしたら「身体の相性が悪い」ってやつかな、と思って別の女性ともしてみた。前々からエロい身体しているな、って思っていた社会人女性口説いた。結果は「大差なし」だ。もう一人試してみたが、同じだった。

正直、セックス時間苦痛だ。時間を浪費しているように感じる。

Permalink |記事への反応(4) | 22:43

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2023-11-06

【22時追記あり】「三体」が好きだった人にオススメしたいSF小説・前編

選抜条件



上記の条件のうち、いくつかを満たしているもの作家ごとに紹介する。

作品オチには触れないつもりだが、途中に何が出てくるかとかそういったレベルでは作品の内容に触れる。

記憶を頼りに書いているので誤っているかも。

グレッグ・イーガン

思い入れが多い。ただ、近年のイーガン長編自然科学素養が無いと何を言っているかまったくわからない作品が多いので(高校どころかひどいのになると大学院レベル)、短篇から入るのがオススメ人類寿命が実質無限大なので、天文観測のために2人きりで宇宙に出て平気で数万年かけて工事するなんてエピソードもあったりするんだけど、わかりやす宇宙ヤバい系だったら「ワンの絨毯」かな。この長編版のディアスポラは未読。イーガン大好きなんだけど、たまに作者の顔がちょっと透けちゃう

アンディ・ウィアー

火星の人」はなぜか「オデッセイ」の邦題で公開された映画原作で、火星にたった一人取り残された男が持ち前のオプティミズムで生き延びていく話だ。不足する酸素を作り出し、糞便からジャガイモを育て、何とか地球コンタクトを取り、必死地球への帰還を目指す。コンタクトを取れた瞬間に希望が開けていく様子が素晴らしい。

気温の低い火星で暖を取る意外な方法に注目。

プロジェクト・ヘイル・メアリーは、基本的ネタバレなしで読んでほしい。冒頭は記憶喪失の人物意識を取り戻したところからまり振り子の周期から重力加速度を割り出すことで自分地球にいないことを悟る。そして、ご地球外のミッションに送り出された理由を思い出す(ブクマの指摘でネタバレ削除)。

仲間の二人が死んでミイラ化しているという絶望的な状況からスタート。この作品も、サイエンスに対する信頼が読んでいて楽しい

上田早夕里

「オーシャンクロニクルシリーズおすすめ

近未来スーパープルームで海面上昇と地殻変動が起こり、人口が減少した世界日本列島さらに小さな島嶼の群れになっている。この世界には現生人類に似た陸の民と、魚のような生き物と双子として生まれ、その魚を肉親・パートナーとして暮らす海の民がいる。短編長編もあり、海の民と交渉する陸の民の物語もあれば、やがて次の訪れるであろう、人類滅亡クラスさらに大きなスーパープルームから人類を何とか生き残らせようと健闘する人びとが主役の話もある。なんとか宇宙進出するとか、人類を海に適応した海生生物にしてしまうとか、核融合炉で地下都市建設するとか、その絶望的で悲痛な努力が胸を打つ。作品によっては「異形コレクション」にも収められている。ある意味では「日本沈没」の精神的な続編でもある。

イヴィッド・ウェリントン

最後宇宙飛行士」は後述の「宇宙ランデブー」にプロットが似ていて、太陽系に未知の物体侵入してくるんだけど、オウムアムアの正体に対する考察にもなっていて面白い。また、主役がどうしても宇宙に出たいんだけど、ミスで同僚を死なせてしまったがゆえに長らく宇宙とは無縁の生活を強いられているところからスタートする。挫折したヒーロー、いい意味映画的で、リーダビティが高い。ややホラー寄り。

H・G・ウエルズ

古典のはずなんだけど児童書をのぞいて意外と読めていないなって作家。なんだけど、自分タイム・マシンという小説で「複数の種に分岐してしま人類」「知性を失った人類の子孫」「太陽が死んで滅亡に瀕する地球」という趣味を開花させてしまった。そういう意味では自分読書傾向に決定的な影響を与えたと言っていい。

円城塔

言語数学モチーフにした幾分難解な作品が多いのだが、最初作品の1つである「Self ReferenceEngineは少し肩の力を抜いて読める。舞台現実改変能力を手に入れてしまったAIの発生により、無数のパラレルワールドに分裂してしまった宇宙で、AI同士が互いの存在物理法則もろとも演算して書き換えようと争っている。壮大な世界観だが、22の断章の中ではシリアスありユーモアあり小噺あり抒情的短編ありと、何でもありだ。とにかく翻弄される人類おかしい。

小川一水

この人は「天冥の標」で有名なんだけど、長すぎるし自分も未読だ。「老ヴォールの惑星とかフリーランチ時代とか、短篇集も面白いのが多くて、特に「老ヴォールの惑星」はエイリアンの生態ものでは特に面白かった。上記の条件を満たす作品じゃないけど好き。

オキシタケヒコ

この人はどちらかと言えば筺底のエルピスで有名かもしれないけど、僕が好きなのは短編連作「What We Want」「平林君と魚の裔」「止まり木暖簾だ。これは銀河系が巨大な通商連盟支配されているという設定で、アメリカ大統領契約違反国民ごとエイリアンに売り飛ばされている。主人公必死になって地球に帰還した関西弁日系アメリカ人特に面白かったのが2作目の「平林君と魚の裔」で、この通商連盟の究極の目的が明らかになる。

問題なのは、この短篇集があちこちアンソロジーバラバラに収録されていることかな。せっかくなのでそれぞれ購入したうえで他の作品も読んで、お気に入り作家を増やしてほしい。僕も河出書房の「NOVA」とか東京創元社の年間傑作選とかでお気に入り日本人作家を増やした。後者新人賞作品も載ってるしお得だよ。

A・C・クラーク

幼年期の終わりについては一度ここに書いたけど、人間進化していって人間の形を失っていく未来が好きだ。それでも残る人間らしさとは何だろうか。共感だろうか、知識だろうか、はたまた血縁だろうか。

2001年宇宙の旅キューブリック映画で有名で、「ツァラトゥストラかく語りき」のパロディが笑えるほど量産されているんだけど、これもまた人類進化を扱った作品なのでオススメというか、進化ものでは避けて通れない作品。悪役である人工知能HAL9000がなぜ狂ったのかは「2010年」で明かされるんだけど、理由がわかるとちょっとかわいそうになる。「3001年」は「ぼくのかんがえた最強の未来社会」っぽくてそういう楽しみがある。

あえて注意することとしたら、解説で紹介されているキューブリック映画に関するブラッドベリクラーク発言現代価値観では不穏当な個所があることかな。

あとは宇宙ランデブー太陽系侵入してきた物体を探査するという一直線のプロットなんだけど、とかく未知のものに触れる驚きがいい。人物描写が浅いと批判されるのもわかるんだけど、人類が訳の分からないものに触れて戸惑うのが好きなんだからしょうがない。

意外とクラークを読んでいないことに気づく。

小松左京

「果てしなき流れの果に」については前に書いたね。基本的小松左京作品の傾向は宇宙人類日本人運命テーマらしいので、「三体」が好きだった相性がよさそう。実は残念ながら長篇は日本沈没しか読めていない。と言うか三体は宇宙人類中国人運命テーマだよね。

続きはこちら

Permalink |記事への反応(5) | 08:05

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2023-09-23

anond:20230923082704

日本SF虐殺器官が原点にして頂点

あとは円城塔とか

Permalink |記事への反応(0) | 17:01

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2023-08-29

anond:20230829022625

あると思うよ

円城塔が「文字渦」の時のインタビューかなんかで濁点の有無をローマ字なのに間違えると言ってたし、田中圭一精神状況が悪化したときに同じミスを繰り返したって「うつヌケ」で書いてたよ

Permalink |記事への反応(0) | 03:40

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2023-07-06

SF小説好き1480名に聞いた「絶対に読んどけ」っていうSF小説ランキング - 俺だってヒーローになりてえよ

https://www.orehero.net/entry/bestsf

順位得票数タイトル著者
1位122票星を継ぐものJ・P・ホーガン
2位90票夏への扉ロバート・A・ハインライン
3位85票ハーモニー伊藤計劃
4位71票『三体』劉慈欣
5位69票幼年期の終りアーサー・C・クラーク
6位68票新世界より貴志祐介
7位63票虐殺器官伊藤計劃
8位61票アルジャーノンに花束をダニエル・キイス
9位60票銀河英雄伝説田中芳樹
1052票アンドロイドは電気羊の夢を見るか?フィリップ・K・ディック
1151票1984年ジョージ・オーウェル
1249票プロジェクト・ヘイル・メアリーアンディ・ウィアー
13位42票戦闘妖精・雪風神林長平
14位39票華氏451度』レイ・ブラッドベリ
15位35票あなたの人生の物語テッド・チャン
16位34票火星年代記レイ・ブラッドベリ
1731たったひとつの冴えたやりかたジェイムズ・ティプトリーJr
18位29票ソラリススタニスワフ・レム
19位26票鋼鉄都市アイザック・アシモフ
百億の昼と千億の夜光瀬龍
2025票われはロボットアイザック・アシモフ
銀河ヒッチハイク・ガイドダグラス・アダムス
星新一どれでも星新一
21位24ニューロマンサーウィリアム・ギブスン
22位22票チグリスとユーフラテス新井素子
火星の人』アンディ・ウィアー
2321票2001年宇宙の旅』アーサー・C・クラーク
宇宙の戦士ロバート・A・ハインライン
『歌う船』アン・マキャフリイ
月は無慈悲な夜の女王ロバート・A・ハインライン
2420『果しなき流れの果に』小松左京
25位19票マルドゥック・スクランブル冲方丁
26位18票日本沈没小松左京
27位17『なめらかな世界と、その敵』伴名練
『闇の左手アーシュラ・K・ル=グウィン
復活の日小松左京
『冷たい方程式トム・ゴドウィン
2816票エンダーのゲームオースン・スコット・カード
29位15票グランヴァカンス』飛浩隆
すばらしい新世界オルダス・ハクスリー
ハイペリオンダン・シモンズ
ファウンデーションアイザック・アシモフ
『天冥の標』小川一水
30位14票タイム・リープ高畑京一郎
〈七瀬〉シリーズ筒井康隆
3113票グリーン・レクイエム新井素子
マイナスゼロ広瀬正
『虎よ、虎よ』アルフレッド・ベスター
『紙の動物園ケンリュウ
32位12タイム・マシンH・G・ウェルズ
海底二万里ジュール・ヴェルヌ
星界シリーズ森岡浩之
敵は海賊シリーズ神林長平
『夜来たる』アイザック・アシモフ
3311BEATLESS長谷敏司
ヴァーチャルガールエイミー・トムス
『ひとめあなたに』新井素子
渚にてネヴィル・シュート
『酔歩する男』小林泰三
星へ行く船新井素子
『息吹』テッド・チャン
34位10『know』野﨑まど
『アイの物語山本弘
タイタン幼女カート・ヴォネガット
デューン砂の惑星フランク・ハーバート
パプリカ筒井康隆
ブラッドミュージックウィリアム・ギブスン
フランケンシュタインメアリーシェリー
ボッコちゃん星新一
わたしを離さないでカズオ・イシグロ
『百年法』山田宗樹
35位9票スワロウテイルシリーズ籘真千歳
リングワールドラリイ・ニーヴン
ロボット(R.U.R)』カレル・チャペック
『華竜の宮』上田早夕里
『午後の恐竜星新一
『高い城の男』フィリップ・K・ディック
第六大陸小川一水
36位8票Self-Reference ENGINE円城塔
『アド・バード椎名誠
あなたの魂に安らぎあれ』神林長平
クローム襲撃』ウィリアム・ギブスン
ジェノサイド高野和明
スローターハウス5カート・ヴォネガット
『虚航船団』筒井康隆
銀色恋人タニス・リー
時をかける少女筒井康隆
人類補完機構コードウェイナー・スミス
『星虫』岩本隆雄
地球の長い午後ブライアン・オールディス
地球プレイン・ヨーグルト梶尾真治
都市と星』アーサー・C・クラーク
『竜の卵』ロバート・L・フォワード
37位7票『ウは宇宙船のウ』レイ・ブラッドベリ
宇宙ランデヴーアーサー・C・クラーク
〈航空宇宙軍史〉シリーズ谷甲州
重力が衰えるときジョージ・アレック・エフィンジャー
『声の網』星新一
『第四間氷期安部公房
猫の地球儀秋山瑞人
膚の下神林長平
『流れよわが涙、と警官は言った』フィリップ・K・ディック
『旅のラゴス筒井康隆
涼宮ハルヒシリーズ谷川流

以下、数が多いので省略

Permalink |記事への反応(14) | 10:49

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2023-04-25

カクヨム小説書いてる

全然まれないけど増田宣伝するのは憚られる。だってここって匿名ダイアリーなので、身バレしてしまう。本名執筆やってるからね。

今、ちょうどカクヨムコンテストの読者選考が通って最終の結果待ちの状態だ。三年目にしてやっと通った読者選考。まだ期待でドキドキしてるけど、噂ではそろそろ受賞者には連絡が来てるはずってことなので、音沙汰のない俺はダメだったのかなって諦めはじめている。ま、来年頑張るさ。

そんな話はさておき、最近カクヨム一般文芸作品書籍化を増やしていて、小説投稿サイトラノベばかりという印象を払拭しようとしている。

この間、ホラー話題になった小説があったけど、カクヨムもっとからコンテストホラー部門を作ったり、投稿作品書籍化したりして、ホラーに力を入れていたんだ。つまりカクヨムホラーをヒットさせる土壌作りが実を結んだってこと。

人気のある作品があれば読者も集まるし、読者が多いとわかればレベルの高い作品も増える。そしてまたそれらの作品を求めて読者が集まってくるんだね。

追記:意外なカクヨムユーザー

円城塔

https://kakuyomu.jp/users/enjoetoh

田中

https://kakuyomu.jp/users/kuu_tanaka

他にもいたら教えてね。

Permalink |記事への反応(1) | 22:27

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2022-10-17

anond:20221017114757

ほんとだ。全然ダメだわ。

 

朝日インタビュアーは、少なくとも、忍殺の影響考えましたか? と円城塔に訊かないとだめだろ。

Permalink |記事への反応(0) | 11:56

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2022-01-06

文化が洗練されると一般人から理解されなくなる現象

能とかが顕著

洗練され過ぎた伝統芸能は、普通の人はよくわからないし、気軽に能見に行く人は現在は少ない

歌舞伎なんかはもうちょっと大衆に浸透しているけど、それでもやっぱり格式が高くて難しいイメージがある

文学もそう

大衆小説やラノベなら読めても、ガルシアマルケス読むのは苦痛だった

円城塔はいくら読んでもわからない

現代アートなんかもそう

部屋中にスプーンが散乱してる様を見せられても頭抱えるし、ホールマラソンランナーが走り抜ける、とかを展示と言われても反応すらできない

これらの現象が生じる理由は、芸術表現技術継承習得過程で、それなりの作法や慣習、お約束事を学ぶ必要がまずあるから

その結果、技術歴史的背景への理解が深まり一般人の知り得ない見え方感じ方の習得も行われている

そして、芸術作品というのは過去にあった作品の発展形や、過去芸術家に対する解釈さらに新たな作品として世に出すこともある

まり作品時代の流れの中にあり、単品では完結し得ない

そのため、目の前のものだけでは理解必要材料が揃っておらず、理解には前提となる膨大な知識要求するようになっているのだ


ポップアート、いわゆる美少女イラストなんかも当然そうなっている

親しみやすく感じ取りやすいがため、一般人ポップアート理解できている気がしているから、批判も起きやす

が、本当は能がわからないのと同様、ポップアート全然わかっていない

歴史的には春画からまり戦前はノラクロ三等兵、そしてひみつのあっこちゃんにキューティーハニー、そしてミンキーモモあんみつ姫を経て、スレイヤーズなどの時代から萌え絵という概念誕生する

そしてスレーヤーズ的な絵柄からハルヒ的な絵柄へと変遷があり、さらに今はラブライブ的な絵柄がイラストアニメに携わるイラストレーター、アニメーターたちの、”お作法”となっている

これはまさに時代の中の芸術の変遷であり、我々がラブライブイラストを街で普通に見るのは、いわゆる同時代性と呼ぶべきものであろう

イラストレーターの技術継承や絵柄の流行り廃りがあるからこそ、岸田メルやさいとうなおきなどのような、現代の優れたイラストレーターがこの時代に優れたイラストを描ける

から彼らのイラストは今の世でお金の動きを生む

しかし、それらを「不快萌え絵」と呼び嫌悪する方が存在する、というのはつまり、他の芸術と同様、ポップアートに対する背景を共有できない者が存在する、ということだろう

イラストに関連する現代文化のものが、洗練されすぎ、先鋭化していっているがために、イラスト文化アニメ文化を共有できない者の理解が追い付かなくなっているのだ

この現象を軽く考え、反萌え絵派をただ批判するというのは、「ガルシアマルケスすらわからないやつがラノベ面白い、とか言ってて笑う」とか「高師直も塩冶判官も知らないやつが忠臣蔵ドラマ見てて笑う」みたいな態度と言えるだろう

まり一般人はどちらか?を認識する必要がある

歴史的文化的背景の継承者のみしか理解できない芸術は必ず尻すぼみになる

絵や文字は、わかっていると勘違いやすものであるため、この認識を持ちづらいのも問題であろう

一般の場に出す実用作品に、背景を要求するものは相応しくない」というのも、萌え絵に関する議論で考えるべきひとつの側面だろう

Permalink |記事への反応(2) | 11:34

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2021-12-21

anond:20211221152617

死者の帝国は実質、円城塔作品から伊藤計劃は許してやってくれ。

Permalink |記事への反応(1) | 16:52

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2021-06-25

ゴジラSP面白くなかったね

思ったより円城塔連れてきた意味ないなあって。しりとりのシーンみたいに、もっと言葉遊びなら言葉遊びだけで押し通すと思ってた

ジェットジャガーも戦いが終わってアルジャーノンに花束をみたいな感じに一時的に獲得した自律知性を失うのが良かったのに普通自己犠牲でだいなし

アニメ映像的に美麗にゴージャスに人間サイズアクションをつけてくのは他でも見れるので怪獣モチーフでやらなくていいのにって思った

大怪獣普通人間ってサイズ感が違いすぎるから人間のほうは適当無視しないと怪獣中心の絵にならないのはわかりきってるがそうでないし

あるいは怪獣を大胆に無視して人間だけに寄ってくのかなと思ってたけど(元祖ゴジラぽいのが骨なのでそういう路線かと思ってた)

どっちもやりたいでどっちつかずで、いかにもネトフリオリジナルらしい売れる要素はコレだからで足し算して作った感じ

ブシロードとかサイゲとかカードゲームソシャゲでカネじゃぶじゃぶなとこが割とコンセプトはっきりした尖ったもの出してくるのに

同じカネじゃぶじゃぶなネトフリが尖ったもの出せないの何故なんだろうね

動画配信サイトとか一つのものがハマらなくても別のものがハマればいいわけ

それぞれ別方向に尖ったものを100並べて5ハマればいいと素人考えでは思うんだが(ユーザー検索誘導だってできるだろう)

なんでどれも同じような無難な作りを幾つも並べちゃうんだろ

Permalink |記事への反応(0) | 11:08

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2021-06-13

早川書房のkindle1,500点半額セールで俺が買う/買わない本の話

早川書房のkindle1,500点以上半額を受けて、Amazonリストから俺の興味のあるものリストアップしたから、みんな見るとよい。

全部購入したいところだけども(全部買っても、たぶん1万円強に収まりそう。お得)、当の俺が何しろ吝嗇なので、気になったものは、まず図書館検索 → 人気のため多量の順番待ち、もしくはそもそも在架なし、の場合にだけ、購入することにする。

『息吹』

おそらく、今回の目玉の一つだろう。『あなたの人生の物語映画題名メッセージ』)』を書いたテッド・チャン作品集

試しに図書館検索したところ、予約待ちではあるものの待てないほどではない。ということでいきなりだけど購入×。

ちなみに、同氏の『あなたの人生の物語』はボルヘス幻想小説ロードムービーを掛け合わせたみたいな素敵な雰囲気作品が多くて良かった。おすすめ

ザリガニの鳴くところ』

今回の目玉その2。図書館検索すると…すごい、100件以上待ち。ということで買います

ミステリー普段あんまり読まないんだけど、話題となると触れたくなるのミーハーなんだろうな。

あと装丁が良い。カバーってほんと大事電子書籍勢力を拡大する時代でも。

Self-Reference ENGINE

円城塔作。これも図書館で見つかったので購入×。

余談だけど、文庫最近出た同じ作者の『文字渦』が面白かった。これもボルヘスっぽくて、あとは異様な世界をぎちぎち理屈と設定で詰めていくのが酉島伝法ちょっと入ってるかも。

文学少女対数少女

中国ラノベ。×。

同じタイトル、同じ内容で日本発だったら手に取らなかっただろうと思うのは、なんとなくラノベ基本的卒業したつもりでいるから。

そんな中で、中国ラノベってどんなもんや、って動機で気になったんだと自己分析する。こういうところに自分の変ないびつさを感じる。

イスラエル諜報機関暗殺作戦全史』

購入×。

ちなみに早川戦争ものというと、『ブラックホーク・ダウン』の原作を思い出す。上下巻でサイズはあるけど、グズグズの市街戦疲弊する現地部隊と混乱する司令部、隊員たちが基地で過ごす日常描写が様々なコントラストを描いていて、それが果てしなく悪化して正義の上っ面さえまともに繕えなくなっていく様子が素晴らしい。激烈に面白いかおすすめ

アメリカンブッダ

購入◯。ケレン味◯。あと、何気に南方熊楠×SFって目新しい? めちゃ相性良いと思うんだけどな。

『なめらかな世界と、その敵』『楽園とは探偵の不在なり』『月の光』『地下鉄道』『紙の動物園』『少女庭国』

×。どれも少し予約待ちすれば借りられそう。

気になってた本の半額セールが来る頃には図書館貸し出し予約もピークを過ぎている、ってことなんだな。と変テコなさとりを得る。

『禅とオートバイ

購入◯。タイトルで惹かれ、説明書きを読んでも何がなんだかわからないところにさらに惹かれ…。なんとなく予想はしていたが、図書館にも在架なしということで、買うことにした。

なんだよ、買わねー作品ばっかりじゃねえか、ってなんとなく心苦しくなってきたので、今回セールになっている作品の中で、すで購入して良書だった本のPR

①『サルたちの狂宴』

twitterFacebookと後の世の巨大SNS企業を舌先三寸で渡り歩いたウェブデザイナードキュメンタリー当人技術力や創造性よりも機転とノリで生きてるタイプで、ほんとに虚飾&虚業って感じなんだけど、イヤミじゃなくそれも生きてく上で本質的重要スキルだと実感させるところがある。最近ノってる『トリリオンゲーム』にもちょっといかも。

②『オクトローグ』

新刊からもっとプッシュすればいいのに。酉島伝法SF作品集

初期の弐瓶勉漫画みたいな、ダークで無機的な荒廃と有機的などろどろぐちゃぐちゃがミックスされた至高の雰囲気。全編、Steamあたりで即でゲーム作品に展開できそうなくらい個々の完成度が高い。っていうか、このレベルでそれぞれを長編として起こさない酉島伝法には創作におけるコスパって概念がないのか? と思ってしまう。どうかしている(褒めてる)。

③『ジェイバード

ヴォネガットというとSF作家イメージが強いと思うが、それ以外の作品にも素晴らしい小説がある。『ジェイバード』はその一つ。

年齢を重ねることで区別されてくる人間類型の一つに、他人感情をむき出しにして触れ合うことができない者がいる。いわゆる「心が冷たい」人。

俺は、文学の使命の一つはこの「心が冷たい人」を救うことだと思ってる。『ジェイバード』はそういう本。漱石好きな人とか意外とハマると思う。

閑話休題

『目を擦る女』

購入◯。最近亡くなった小林泰三作品集。有名な『玩具修理者しか読んだことがなかったので。

毒々しくも可憐笹井一個の表紙が目を引く。装丁ってやっぱり大事だね(そういえば、この方も故人だ…)。

『死亡通知書 暗黒者』

×。中国ミステリだそうだ。俺の生活圏の問題か、SF比較するとあまり話題に入ってこなかった印象がある。

『息吹』といい、早川はこういうデザイン装丁好きだね(良いとは思う)。

『華竜の宮』

×。椎名誠の『水域』といい、小野不由美の某作品エンディングといい(ネタバレなので名前は伏せます)、文明は水没させてなんぼ、みたいなところが俺の中にある。

『色のない島へ: 脳神経科医のミクロネシア探訪記』

×。あんまり趣味はよくない、と知りつつ、孤絶した文明と足で暮らす人々の特異な体質というテーマが好き。

似たような切り口で面白かったのは、『眠れない一族――食人痕跡殺人タンパクの謎』。不眠症クールー病ニューギニアのある部族罹患する風土病)、同族食によって体内に蓄積されるプリオンテーマの本。

『透明性』

×。これも装丁で気になったパターン

ボーダーつの世界

購入◯。映画原作だそうで。図書館には在架なし。

ふと思い出したのが、別の作家の『全滅領域』。あまりダウナーなので続編の『監視機構』で挫折したが、知らない人で『ソラリス』みたいな内省的なSF好きな人はハマるかも。

世界誕生日

購入◯。そろそろル・グウィンに挑戦してみるか、ということで。

ただ、SFを露悪と飛び道具で評価するところが強くて思想性は最後1%出てくればいいや、という性格なので、どうかな。合わないかもな。本当に一冊も読んだことがないから見当がつかない。

ホーキングブラックホールを語る』

×。「そんなに黒くない」「毛がない」…なんのこっちゃ?(amazon説明ママ

興味はあるけど挫折する可能性高いよなあ…と思っていたら、見透かしたように「必ず読み通せる科学解説」とまで書かれていて笑ってしまった。

『100年予測

×。国際情勢にフォーカスし、トランプ大統領誕生予言したという本。

紛争でしたら八田まで』が個人的に来ているのもあって、俺の中でいま地政学が熱い。

『史上最大の発明アルゴリズム

×。

わかるようでよくわかんねー概念を三つ挙げろと言われたら、エントロピー不確定性原理の次にアルゴリズムを挙げる。ちゃん理解している人からすれば何を頭の悪いことを…という感じなんだろうけど。ここらでしっかり説明できるようにしておきたい。

ちなみに、よくわからんと言っておきながらアルゴリズム関連で面白かった本に、『マインドハッキング:あなた感情支配し行動を操るソーシャルメディア』と『ニュー・ダーク・エイジ』の2冊がある。前者は政治的煽動目的として展開されたSNS経由のターゲッティング思想誘導後者テクノロジーの発達が不本意に実現してしまった笑えないナンセンスグロテスクテーマだった。

結局、買わないでも借りればいいか、ってのがかなり多くなっちゃったな。最後に、今回のセール対象ではないけど早川から出ている本で「ちゃんと」買った良書を紹介して茶を濁しておきます

①『魔王:奸智暴力サイバー犯罪帝国を築いた男』

まれ想像力合理性を持つ天才。強欲と自らでさえ使い捨ての駒のように扱うむなしさが同居する矛盾したパーソナリティ。「これをああしたらどうなるか」をプログラミングだけでなく現実世界に反映させてしまったエンジニアにして犯罪者ポールコールダー・ル・ルーを追ったノンフィクション

犯罪ものであると同時に、この世界構造の一端が見えるような錯覚を抱かせてくれる作品

②『闇の自己啓発

反出生主義、変態性愛身体改造犯罪など、アンダーグラウンドだったりインモラルテーマについて、決められた課題図書を通じて参加者たちが議論する体裁の本。内容それ自体面白いけど、紹介されてる本が豊富で、そこから派生して読書体験けっこう広がる。

読んでて、最初は「自意識過剰過ぎてわけわかんなくなっちゃった大学生みたいだなー」ってイライラすることもあったんだけど、段々、各人の痛切なところとか博覧強記ぶりが見えてきて後半は感心しきり。面白い。続編読みたい。

以上です。

Permalink |記事への反応(0) | 22:57

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2021-05-19

anond:20210518181744

円城塔は本当にいい仕事をしてくれた!

本来作風封印して、結果エンタメに振り切った作品を世にだしてくれただけでもすごい美しいと思います

過去円城塔作品も全部ではないにしろ読んでるけど、これやってくれたからこそゴジラSPも信頼できるみたいな感じはある。

Permalink |記事への反応(0) | 00:42

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2021-05-18

anond:20210518144014

伊藤計劃屍者の帝国

円城塔が引き継いで完成

佐藤大輔皇国の守護者など

展開が盛り上がってくると別の新作出すを繰り返したため、ほぼ全てのシリーズ作品がいいところで絶筆

こういうの記録として価値あるからもっと書いて

Permalink |記事への反応(1) | 18:17

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2021-04-25

[増田統計]2021年4月24日土曜日増田

時間記事文字数文字数平均文字数中央値
0013213324100.933.5
0171587282.740
0263471974.933
03394777122.571
0459540491.666
05365614155.956.5
06548564158.631
071281056882.645.5
083521356538.518
0959473459123.799
1016418778114.545
1115616286104.444
121981756088.741
1321822070101.243
1423125076108.645
153002784892.840
169813627139.154
17646100783156.0187
1824452409214.8273
19540105276195.058
202726296613108.8118
2113313467101.342
221581461992.548
231671470588.140
1日7507884983117.999

本日の急増単語 ()内の数字単語が含まれ記事

SFアニメ(6), Vivy(5), AirTag(7), タタミ(3), IMO(4),ケロロ(3),正解するカド(4),たつき監督(4),コロプラ(4), 数列(6),ビッグサイト(4),西山(3),円城塔(3),SIer(24),スカート(43),ウマ娘(43), 履く(10),ズボン(13),優遇(27),競馬(17), 履か(7), 駅員(7),研修(14),SF(15),制服(12),インド(11),男女平等(15), 口調(10),下方婚(17),平等(28), 開催(17),オリンピック(22),緊急事態宣言(24),キャリア(13), 中止(16),エンジニア(24),採用(26)

頻出トラックバック先 ()内の数字は被トラックバック件数

anond20210424200854 /20210424201211(113), ■anond20210424200314 /20210424200432(91), ■マグカップ可愛い。 /20210424200713(80), ■anond20210424150454 /20210424151135(74), ■ときはまさに世紀末、淀んだコロナ禍でぼくらは出会った、 /20210424201007(68), ■ /20210424204623(60), ■ /20210424205190(53), ■強く儚いものよ /20210424201641(50), ■オリンピック微塵も興味無いから /20210424194112(48), ■おっぱい /20210424201601(44), ■ /20210424205375(40), ■さて、新卒入社したSIer企業で約1ヶ月が経ったわけだが /20210423234432(36), ■ /20210424204994(35), ■IT界に蔓延女性優遇について /20210423151119(29), ■精神障害者の俺、手切れ金としての年金、この世界への感謝 /20210423191759(29), ■なんか「男が優遇されてた」が既成事実みたいになってるけど /20210424141509(29), ■ウマ娘好きのオタク競馬を好きにならないで欲しいって話 /20210424001224(28), (タイトル不明) /20210424195932(27), ■ /20210424211244(23), ■何度もいうが、コロナの不満を政治家にぶつけるのは間違っている /20210424091643(20), ■マッチングアプリ出会えないので経歴詐称したら /20210423211919(20)

Permalink |記事への反応(0) | 00:06

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2021-04-24

ゴジラS.P.

ヒロインがどうこうじゃなくてこれの特撮観みたいなのが基本的にSSSS.GRIDMANの制作チームと近い感じなのじゃないかなあ。

から古いゴジラとか特撮ファンから違和感を表明されてたりとか。

30代とか40代スタッフからしても「特撮」の中心はゴジラじゃないんだよな。今は。

アニメ制作スタッフ円城塔ふくめ)「シュミレーション」を指摘しない入力フロントエンド使ってんだな・・・ちょっと不思議な気分になった。

あと4話のMD5ハッシュのくだり、テレビで見てて言いたいこと伝わった人どのくらい居るんだろ・・・とも思った。

今のアニメ、確かにタランティーノ以降の映画みたいに一時停止、巻き戻し、SNS・・・みたいなの前提ではあるんだろうけど。

Permalink |記事への反応(1) | 15:59

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https://anond.hatelabo.jp/20210423230621

今期のSF枠は円城塔脚本ゴジラSPがぶっちぎっていると思う。怪獣と「時空を越えて存在する異次元物質」「特異点」を絡めたゴリゴリハードSF

数理SFとして極めてハードな一方で、怪獣モノとして(今のところ)スルっと見られる異色作。

ただ、いかんせん(文章は読みやすいが文系にはぜんぜんわからない話を書く)円城塔なので、外連味が難解さを越えずに最終回まで走ってくれるかちょっと危惧している。

ゼロ好きだからVivyも見てみるけど、ゴジラリアタイでめちゃくちゃ盛り上がってるので、「久しぶりの」って言われると違和感がある。

既出だけど「デカダンス」とか、最近だと野崎まどが「正解するカド」、劇場アニメで「HELLO WORLD」やってたし、SFアニメは近年そこまでレアでもないと思う。

しろSF作家が脚本書くアニメが続いてちょっとクワクしてる。

Permalink |記事への反応(0) | 10:31

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anond:20210423230621

本格SFってのは円城塔脚本ゴジラみたいなやつのことを言うんだよ

あれもエンタメにだいぶ寄せてると円城塔本人が言ってるから本格かどうかは微妙なところだが

Permalink |記事への反応(0) | 05:52

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2021-04-09

anond:20210409000756

しか円城塔だぞ。終盤わけわからん概念的な話になるに決まってる。

Permalink |記事への反応(0) | 00:20

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ゴジラS.P<シンギュラポイント>のベタ

工場に妙にハイテクとかパンクスな事務員とかベタベタ過ぎる

斜視ハチマキ腹巻き、下駄世界科学者の街工場所長

あやしいアプリ自分PCにほいほいインストールする理系院生

あえてベタをやるのが格好いいと思ってる感じはトリガーあたりを思い起こす

特撮オタに媚びることを最優先にしてるんだろうな

シリーズ構成円城塔持って来て清々しいほどのターゲットの絞り方。

信念は感じる。

ゴジラ S.P <シンギュラポイント> アニメSF

Permalink |記事への反応(4) | 00:07

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2021-03-01

必読書コピペマジレスしてみる・自分オススメ41冊編(1)

日本文学編(anond:20210222080124)があまり注目されなかったけれども、記憶を頼りに続きを書く。

芥川龍之介河童

どの作品を入れるべきか迷った。古典翻案に見られる知性とユーモア晩年作品にみられる迫害的な不安、どちらの傾向を持つ作品であっても、元文学少年の心をひきつけてやまない。特に歯車」などの持つ、すべてのものが関連付けられて迫ってくる凄味は、学生時代に再読したとき、行き詰まりかけていた学生生活不安と重なり、ただただ恐ろしく、読み終わってからしばらくは寝床で横にならされた。

河童」を選んだのは中高生の頃で、河童の国を旅する要素に心を惹かれたことを思い出したからだ。それは、大学生の頃よりも不安が弱かったからなのか、この作品に潜む女性への憧れと恐れが自分に響いたのか、あるいは架空世界架空言語に魅せられたのか、その理由はわからない。

ハンス・クリスチャン・アンデルセン雪の女王

アンデルセン小説を読んでいると、きっとこの人モテなかったんだろうなあ、ってのがひしひしと伝わってきて、何だったら今晩一杯つきあうよ、的な気分にさせられる。一人寂しいときへの痛みと、女性への復讐心が入り混じっていて、読んでいて心がきりきりとする。

で、この作品の中でひたすら「いいなあ」と思うのは、悪魔の鏡のかけらが心の中に入ると、どんな良いものもその欠点ばかりが大きく見えてしまうという設定だ。

ところで、ディズニー作品価値貶めるつもりはないけれど、原作とは全然違う話に似たタイトルをつけて世界中に広げるのってどうなんだろう。デンマーク人は怒らないんだろうか(「人魚姫だって原作改変をやってるし……。いや、ディズニー普通に好きなんですけど、最近こうした異文化の扱いって難しいですし……)

グレッグ・イーガン祈りの海」

「白熱光」にしようかと思ったのだが、これはエイリアンニュートンアインシュタイン物理学自力発見していく過程が延々述べられるだけの話で、燃えるけれども物理学の基礎をかじっていないとちっとも面白くないのでやめた。ついでに、彼の欠点として「科学者エンジニア最高、政治家宗教家文学者は役立たずのクズ」という態度を隠そうともしないところがある。要するに理系の俺TUEEE小説なのだ。それに、しょっちゅうヒロインから説教されるし、作者はいったいどういう恋愛経験をしてきたか非常に心配になる。

そうしたえぐみ比較的少ないのがこの短篇集で、最初に読んだ本だから愛着がある。それに、上の隠しきれない欠点にも関わらずイーガンが嫌いになれないのは、科学的な真理に向き合う姿勢と果てしのない好奇心がかっこよく、さらに己に課した厳しい倫理に身が引き締まるからだ。

カズオ・イシグロ日の名残り

友人と富士山に登るときに持っていったこともあり、これも自分にとって思い出深い小説だ。これは、大戦後の新しい時代適応できない英国執事物語である

彼の小説の語り手は基本的には何かを隠していることが多いので、いつも歯に物の挟まった言い方をする。そのうえ、誰もが自分の信念にしがみついているものから登場人物同士の会話は勝手な主張のぶつけ合いになり、実のところ会話になっていない。

カズオ・イシグロはそうした気持ちの悪さを楽しむ作家だ。そして、「日の名残り」は自分の本当の気持ちに蓋をして生きている人、やりたいことよりもやるべきことを優先してしまう人に、刺さる作品であるに違いない。

ミシェル・ウエルベック素粒子

彼の作品不快だ。主人公のボヤキは原則として次の通り。俺は非モテから思春期の頃には思いっきセックスできなかった(2023年10月3日追記。「処女と金銭のやり取りなしでイチャラブできなかった」が近いか?)。中年になって女を金で買えるようになったが、ちっとも楽しくない。子供も老人もみんな大っ嫌いだ、バーカ! これはひどい

作中に出てくる西欧文明の衰退だのなんだの宗教への逃避だの一見知的に見える議論も、すべて上記の嘆きを補強するためのダシに過ぎない。それでもなお、なぜオススメに入れたのかというと、人をエゴ抜きで愛することの難しさを逆説的に語っているからだ。そして、自分が愛されておらず、必要ともされていないと感じたとき人間がどれほど孤独とみじめさを感じるかを緻密に描いている。皮肉なことに、これは性と愛について真摯思考した書物である

ただ、どの作品も言っていることが大体同じなので何冊も読んではいない。

ヴァージニア・ウルフ「ダロウェイ夫人

僕がウルフのことが好きなのは、単純に文章が美しいというだけじゃなくて、迷っている人間の頭の中で浮かぶ複雑な段階が細かいところまでよく見えているからだ。例えば親しい人への憎悪が浮かび、言葉ではそれを否定して見せるが、態度にふとこぼれ出てしまう。そうした過程子供が貝殻を見つけたときのように、ひとつひとつ並べている。

そして、意識の流れとでもいうのか、ある人物意識から別の人物意識へと、外界の描写連想を経てシームレスに移行していく感じが、本当に巧みな脚本映画みたいで、やっぱり映画って文学から相当影響を受けてるんじゃないかって勘ぐったりするのだけれど、本当のところどうなのかは知らない。眠る前の自分意識もふと過去に飛び、すぐに現代に戻り、夢想し、眠りに落ちていく。

灯台へ」とどっちにするかこれも迷った。

ミヒャエル・エンデはてしない物語

さえない少年万引きした小説を読んでいると、いつしかその物語の中に取り込まれしまう。これは主人公異世界に行き、そこでなりたい自分になるが(まさに公式チートだ)、その報いとして自分自身が本当は何者であったかをどんどん忘れてしまう。何よりも面白小説なのに、その小説現実に向きあう力からではなく現実逃避の手段となることの危険性を訴えている。主人公が万能チート野郎になってになってどんどん嫌な奴になっていく様子は必見。また、後半で主人公を優しく包み込む人物が、私の与えたものは愛でなく、単に私が与えたかったものに過ぎない、という趣旨台詞を言うシーンがあり、これが作品の中で一番自分の心に残っている台詞だ。

ちなみに子どものころ映画版を見て、原作とは真逆メッセージストーリーになっているのにショックを受け、初めて原作破壊行為に対する怒りを覚えた。僕が大人商業主義を信用しなくなったのはこれ以来かもしれない。

円城塔文字渦」

基本的自分は何かを知ることが好きで、だから知識の物量で殴ってくるタイプの彼の作品も好きである。それでいてユーモアも忘れないところが憎い。フィクションとは何だろう、言葉文字物語を語るってそもそもどういうことだろう、そうしたことをちらりと考えたことがあるのなら楽しく読めるはず。「Self referenceEngine」で抽象的に触れられていたアイディアが、漢字という具体的な文字によって、具体的な形を与えられている。

元々SFの人だけれども、最近日本古典にも守備範囲を広げ始めていて、SFが苦手な人も楽しいと思うし、慣れたらSFにも手を出してほしいとこっそり思っている。

遠藤周作沈黙

どうしてこれほどあなた信仰しているのに、手を差し伸べてくれないのですか。せめてささやか奇跡あなたがいらっしゃるということだけでも示してください。そういう人類が何千年、何万年も悩んできたことについて。神に関しての抽象的な疑問は、具体的な舞台設定を与えないと机上の空論になる。

以前も述べたが、ここに出てくる仲間を裏切ったりすぐに転向したりしてしまう情けないキチジローという人物がとても好きで、彼の「迫害さえなければまっとうなキリシタンとして生きられたのに」という嘆きを、情けないと切り捨てることができない。

ただただ弱くて情けない人物遠藤周作作品にはたくさん出てくる。だから好きだ。僕が文学にすがらねばならなかったのは、それなしには自分の弱さ、愚かさ、卑怯さ、臆病さ、ひがみを許せなかったからで、強く正しい主人公たちからは救われなかった。

イタロ・カルヴィーノ「冬の夜一人の旅人が」。

男性読者」という名の作中人物が本を買うが、その本には落丁があった。続きを探すために彼は同じ本を手に取った別の読者である女性読者」を探し求める。彼はいろいろな本を手に取るが、目当ての本は結局見つからない。枠物語の内部に挿入されるつながらない小説の断片は、それだけでも完成度が高く、まるで本当に落丁のある文学全集を読んでいるような楽しみがある。

世界文学パロディー化した物語のページをつないで作った「鏡の中の鏡」かと思わされたが、それ以上のものだった。語りの文と物語関係とは、新作と偽作とは、そんなテーマ物語レベルメタレベルの二つの層の間で錯綜して語られている。

ダニエルキース「アルジャーノンに花束を

知的障害者チャーリーゴードンが脳手術で天才になるが、その知性は長続きしなかったという悲劇として知られている。けれども、僕はこれをただの悲劇として読まない。障害者セックスについて正面から向き合った最も早い作品の一つだからだ。

チャーリー女性の裸を考えるだけで罪悪感からパニックになってしまう。それは母からの過度な抑圧と体罰が原因だったが、それはチャーリーの妹を彼の性的好奇心から守ろうとするが故の行動だった(チャーリーの母が、周囲からもっと支援を得られていたら、あれほどチャーリーにつらく当たらなくて済んだんではないか、とも思う)。

天才になったチャーリーは恋をし、トラウマを乗り越え、苦労の末に愛する人と結ばれ、やがて元の知的障害者に戻ってしまう。一見すると悲劇だが、彼にはセックスに対する恐怖がもはやなくなっている。彼がただの障害者に戻ってしまったという感想は、その視点が抜けているのではあるまいか

ナタリア・ギンズブルグ「モンテ・フェルモの丘の家」

素晴らしかった。中年の仲良しグループというか、ツイッターでいうクラスタの間を行き交う書簡を通して話が進む。居場所をなくすこと、愛情を失うこと、自分の子供をうまく愛せないこと。そして、友人の死。テーマは深刻だ。なのに、読後感は良い。それは視点距離を取っているからか、登場人物を公平に扱っているからか、それとも愛を失う/奪われる過程だけじゃなくて、そのあともちゃんと書いているからなのか。長い時間の中で、家族や友人が近づいたり離れたりする感じ、これこそ人生だ、みたいな気持ちになる。

アーサー・C・クラーク幼年期の終わり

子供の頃、太陽が五十億年も経てば地球を飲み込んでしまうと知って、非常に恐ろしかったのだけれど、それ以来人類運命について書かれた物語がずっと好きだ(H・G・ウェルズの「タイムマシン」も何度も読んだ)。

人類は滅んでしまうかもしれない。生き延びるかもしれない。しかし、宇宙に出て行った結果、ヒトとは似ても似つかないものになってしまうかもしれない。彼らは人類の何を受け継ぐのだろうか。そして、今しか存在しない自分は、果たしてこの宇宙意味があるのか。

人類運命が気になるのと同じくらい、僕はきっと遠くへ行きたいと思っている。だから、ヒトという形から自由になってどこまでも進化していく話に魅了され続けるのだ。


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Permalink |記事への反応(4) | 08:01

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2020-12-30

2020年数学小説に関する小さな後悔

今年、数学小説に関することで「やっておけばよかった」と思ったことがふたつあった。

ちょっとしたことなのでここに記録しておく。

1つ目。

『年刊SF傑作選 超弦領域』に収録されている円城塔短編ムーンシャイン」に

これを発展させたファイト-トンプソン定理は、「奇数位数の有限群は可換である」ことを主張する。

とあるのだけど、これを読んだ時に

ここの「可換」って「可解」の間違いだよな出版社に知らせておいた方がいいか

と考えたのだけど、ストーリーには何の影響もないディテールだしすぐ知らせる必要もないなと放おって忘れていたら、

今年出た伴名練 編『日本SF臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人から手紙』に

ムーンシャイン」が収録されていてこの部分がそのままだった。

2つ目。

奥泉光長編小説『雪の階』で、数学を愛好する主人公笹宮惟佐子に関して

微積分の初歩を終えたばかりの惟佐子には手が出せそうになかった。

描写されるところ(一章 七)があるのだけど、その直後に

初歩の参考書からはじめて高木貞治代数学講義』、ミハエル・グラッスス『高等数学入門』、竹内端三『函数論』と云った著作を惟佐子は独習し、いまは山畑氏から借りた解説書で解析学も少しずつ勉強をはじめていた。

という文が出てくる(作中の時期は昭和十年(1935年))。

竹内端三『函数論』は上巻(函数論. 上巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション)だけでも関数論(=複素関数論)のかなり詳しい部類の本で、

下巻(函数論. 下巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション)までいくと楕円関数論について詳しく扱っているような本なので、

それを「独習し」というのは「微積分の初歩を終えたばかり」という描写齟齬をきたしていると思う。

竹内端三『函数論』は現在でもわりと読まれていて数年前に復刊もされている本なので、誰も気にしないにしても記述修正した方がいいじゃないかな、

と思うだけ思いながら特に何もしていなかったら、

つい先日『雪の階』が文庫化されて上にあげた部分はそのままだった。

変更されていたかは分からないけど、一応どこかに言っておけばよかったとちょっと後悔した。

そもそも、本のミスや誤字脱字を見つけた時どのくらいの人が指摘・報告をしているのだろう?と思った。おわり。


数学小説について、おまけ。

現在発売中の数学セミナー2021年1月号の特集が「SFと数理科学」で、

円城塔による総論数学との絡みのある小説をいろいろあげていて、

同じく現在発売中のSFマガジン2021月2月号の小特集に伴名練が寄稿した文章の中で

構想していたという数学SFアンソロジーに収録するつもりだった作品をあげている。

Permalink |記事への反応(1) | 18:35

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