
はてなキーワード:カーテンとは
一方で、全然馴染めなくて無理かもという恐怖もある
このセリフを口にできたとき、俺は寮生活に慣れた、余裕のある先輩になってるってこと
このセリフを口にしている時点で、もう勝ちだ
ただ、つまんねー依頼をないがしろにするのは死亡フラグに他ならないので、グチグチ言いながら余った(新人が取らなかった)依頼を受けるようにしたい
生まれてこの方、家での食事以外でおかわりができたためしがない
本当にうまい、メチャクチャ好きだ!と思った料理があって、まだ食える状態でも、恥じらい・自意識が邪魔をしておかわりができない
飯を出してくれている人にたいし、面と向かっておかわりを要求できる
そういう人になりたいんだよな
雪はときどき降るけど、すげえ雪ってほどの雪は降らない
頭に「うわ」がつくってことは、たとえば朝起きてカーテンを開けたとか、そういうタイミング 雪の具合を知らずに外を見て、驚いたって要素がある
俺は、雪に驚きたいです
このセリフが示唆するのは、俺が王宮の、それなりのポジションにいるということ
また、陛下なのに人を探してて、そのことを配下がカジュアルに話してるってことは、風通しがいい職場ってことだ
あるいは「陛下」は象徴だから全然権力はなかったり、もはやただのあだ名だったりする
11人いる!で、閉鎖空間にいる宇宙船搭乗員のひとりが王さまと気軽に呼ばれているのが好きだった
そんな感じで、なんらかの血筋があったりする人を、親しみを込めて陛下と呼んでるんだとしてもアツい
こんな物言いをするのは、ポストアポカリプスとかそういう、荒んだ世界の人間だけだ
「止まってもらえる?」は、普通に車を運転してる友達とかに言いかねない
「止まってもらえますか」なんて、もしかしたらすでにタクシーなんかで言ったことがあるかも
「もらえるか」という語尾は、じつは普通に生きてたら一度も口に出さないものだと思う
ポストアポカリプスの世界で、治安が激悪なので、俺の本質は善人なんだけど、警戒を怠ることができなくなってしまった
また、語尾なんかにちょっとした荒さを出して、牽制しないといけなくなってしまった
そういう背景があって、コロニーに近づいてきた主人公に向かって、銃を向けながら「そこで止まってもらえるか」と言うことになる
そういう人物は大抵、結局優しい
やべえバケモノが徘徊していることにいち早く気づいた、あるいは、空爆なんかが始まることにいち早く気づいた
そういうところで、頼れる先輩が口にする言葉だ
そういう人になりたいんだよな
出張先で、ホテルあるいは会社の手違いで、同僚の女性と相部屋になってしまった〜ッ!ってことだ
ホントにそんなことが起きたら、ひたすら気まずいし、普通に自腹で別の宿を取るなりして逃げ出すしかない……と言いたいところだが、そもそも相部屋になる時点で世界観が現実世界とは異なり(現実には部屋が取れてなかったという扱いになるに決まっていて、相部屋で泊まるというのは選択肢になりえない)、世界そのものがアダルト・ビデオの中にあるということなのだから、その後の展開としては、まず間違いなくセックスだ
でも、相部屋もののAVって、よくあるって印象はあるんだけど、結局最後はどうなるんですか?
つまり、セックスをしたところで人生は終わらないわけで、当然ライフ・ゴーズ・オンではあって、そうなったときに、セックスによって俺と同僚の関係はどう変わるのがスタンダードなのだろうか
会社には「すみません体調が悪くて」って送った。ほんとは嘘。体調なんかじゃなくて心臓が穴あきチーズみたいになってて風通しがいい。いや風通しがよすぎて寒い。寒いから甘いものを食べようと思った。冷蔵庫を開けたらショートケーキが七個あった。なんで七個も買ったんだろう。昨日の自分が分からない。昨日の自分に説明してほしい。
一個目は普通においしかった。二個目もおいしい。三個目も。四個目ででフォークが重くなってきた。五個目はイチゴから食べた。六個目は押し込んで食べた。七個目を食べてる途中でああ私これ昼までには死ぬかもしれないと思った。でも死ななかった。偉い。
部屋の時計がチクタクうるさい。心臓もチクタクうるさい。なんだよ二人でリズムとるなよ、コンビか。
「ケーキ食べすぎじゃない?」と声がした気がして振り返ったけど誰もいなかった。
彼が最後にくれた言葉は「甘いの、好きだったよね」だった気がする。違ったかもしれない。
違っててもいい。もう確かめようがない。
でも打つのが面倒で、未読のままにした。
外は晴れてる。お日様が馬鹿みたいに明るい。
5年前も書いた気がするんだけど、「変な家」がなぜ売れてるのかさっぱりわからない
だって間取り系のホラーってもっと良質なものがたくさんあるし結構擦られ尽くしてるネタなのに
「変な家」は初手の間取り図が無茶苦茶でアホらしくて大半の人はそっと閉じるレベルでしょ
最近だとダンダダンでもジジの家の間取りがおかしい、みたいなネタがあったよね
あの漫画はちゃんと外から見たときの空間が家の中にはなくて、実は壁を埋めて隠してたっていうリアリティがあったわけよ
他にもいろんな映画だとかドラマでも間取りがおかしい系のネタはたくさんあるけど
そういうちょいネタでもちゃんとリアリティはあるのに、メインに間取りを持ってきてる「変な家」が全然レベルが低いから肩透かし食らうわけ
まず狛江の家については全体的な間取りからして無茶苦茶すぎて話にならない
パッと見て1階の台所からダイニングに行くまでに扉を2つ開けないとダメって、普段の食事どうしてるのよ
昔の増築しまくった家とかビフォーアフターでよくあるけど、新築でそんなことするわけないだろ
2階にいたってはそもそも子供部屋が無窓居室になってて建築確認通らないし、こんなでかい部屋を居室じゃないと主張するのは無理だよ
「この部屋、どうせ監禁部屋みたいな扱いにするんだろうな」っていうのは簡単に想像できるんだけど
デカデカと「子供部屋」って書かれたら窓がないのが気になるって無理だって
せめてWICにするかもっと小さくして「ここはWICじゃない・・・!子供部屋として使われていた・・・!」みたいなのがミステリーの基本でしょ
まぁこの部屋は屋根にでっかい天窓が付いてたんだろうな(夏暑そうだな)と脳内補完してもまだまだおかしい
子供部屋と奥の洋室に行くのにメインの寝室を通過しないとダメで「そんな新築の家あるかボケ!」ってなる
しかも寝室からトイレ行くときは子供部屋を抜けないとダメなのはもはやギャグ
洋室にあるシャワー室とかいう謎部屋については、きっと何かあるんだろうなって思って最後まで読んだら何も無い
血を洗い流すとか水道管を使ったトリックとかそういうのじゃなくて、ただのシャワー
どういうこと?ラブホなの?
で、まぁ突っ込み入れ放題だけど、最終的にこういう間取りにしたのは何かあるんだろうなって思って読み進めたら、結局は
「窓がたくさんあるのにその中で殺人が行われているというカモフラージュ」
とか完全に手抜きすぎ!
普通にカーテン閉めて殺人してバラバラにすればいいじゃねーかよ!
で、次の家は割とまともな間取りかなーと思って見てたら、ここでも寝室のトイレ問題が!
なんでこの作者は寝室からトイレ行くのに子供部屋を通らせるんだ?そういう性癖か?
しかもこのトイレの位置にホラー的な理由は特に無し!子供部屋にトイレ付けてたのはただただ独房感を出すだけかな(説明なかったけど)
三角形に増築とかも読んでてハァ?ってなるし、断言できるけど作者は間取りとか建築とか全然詳しくないし調べてもないでしょ
ここまで書いたことなんて、素人でもマンションの部屋探したり新築で家を建てたりするときに自然と知る知識なんよ
新築戸建てならもっと考えないといけないことがたくさんあって安全性だとか耐震性だとか建蔽率、斜線規制とか山ほどあるわけ
別にそんなとこまでリアリティ出さなくていいけど、せめて住めそうな家にした上で、ちょっとした違和感にしてもらわないと
間取り見ただけで違和感しかないから全然ホラー部分が入ってこないし陳腐にしか見えない
タイトルが「変な家」なんだからそれぐらいはやってほしいわけよ
こういう「俺、間取りを使ったミステリー考えちゃいました」みたいなノリで書いてるのがまさに「リアル鬼ごっこレベル」の小説で
まぁそういう層に受けるのなら別にいいんじゃないかと思ってたけど
「これが間取りミステリーのパイオニア」みたいな感じなのマジでやめてくれ
Permalink |記事への反応(13) | 23:56
あああ・・・
どうして保存メディアは消えていくのか
[B! blu-ray] 先行きが暗いBlu-ray、ディスクやドライブの生産から撤退する企業も続々
モノとして手元における存在感がいいのに
俺は
1作品1シリーズをなるべく1枚に入れて並べられるメディアが好きだ
紙の本を所有してる
そしてサボテンを愛でている
昇降デスク(電動!)にアームスタンドにデカいタブレットが磁石で貼り付いててさ
カーテンもない
すべてはタブレットの中で、データは全部オンラインに保管してるとのこと
情報の世界の住人の彼女にとって、自室はただのインターフェースなんだろう
手に取れるモノ
確かな重さを感じることで所有感が満たされる
安心できる
味気がある
7時30分ではなく7時32分である理由は明確だ。7時30分に目覚ましを設定するとルームメイトの電子レンジが稼働しており、加熱音が僕の起床直後の脳波同期リズムを乱す。
ゆえに、誤差2分の位相ずれが僕の神経系に最適な初期条件を与えるのだ。
起床後はコーヒーを淹れた。もちろん豆はグアテマラ・ウエウエテナンゴ産で、粒度は1.2mmに統一。
ミルの摩擦熱を抑えるために、前夜から刃を冷却しておいた。コーヒーの香気成分は時間とともに指数関数的に減衰するため、抽出から着席までの移動時間は11秒以内に制限している。
午前中は超弦理論の作業に集中した。昨日は、タイプIIB理論のモジュライ空間におけるSL(2,ℤ)双対性の拡張を、p進解析的視点で再定式化する試みをしていた。
通常、dS空間上の非ユニタリ性を扱う場合、ヒルベルト空間の定義自体が破綻するが、僕の提案する虚数的ファイバー化では、共形境界の測度構造をホモロジー群ではなく圏論的トポス上で定義できる。
これにより、情報保存則の破れが位相的エンタングルメント層として扱える。
もちろんこれはまだ計算途中だが、もしこの構成が一貫するなら、ウィッテンでも議論に詰まるだろう。
なぜなら、通常のCalabi–Yauコンパクト化では捨象される非可換体積形式を、僕はp進的ローカル場の上で再導入しているからだ。
結果として、超弦の自己整合的非整合性が、エネルギー固有値の虚部に現れる。
昼食はいつも通り、ホットドッグ(ケチャップとマスタードは厳密に縦方向)を2本。ルームメイトがケチャップを横にかけたので、僕は無言で自分の皿を回収し、再び秩序ある宇宙を取り戻した。
昼過ぎには隣人が僕の部屋に来た。理由は、Wi-Fiが繋がらないとのこと。僕はすぐに診断を行い、彼女のルーターのDHCPリースが切れていることを発見。
パスワードは簡単に推測できた。推測しやすい文字列は使うべきではないと何度言えばわかるのだろうか。
午後は友人たちとオンラインでBaldur’sGate 3をプレイした。僕はウィザードで、常にIntelligence極振り。
友人Aはパラディンだが、倫理観が薄いので時々闇堕ちする。友人Bはローグを選んだくせに罠解除を忘れる。
まったく、どいつもこいつもダイスの確率を理解していない。D20を振る行為は確率論的事象でありながら、心理的には量子観測に似た期待バイアスを生む。
だが僕は冷静だ。成功率65%なら、10回中6.5回成功するはずだ。実際、7回成功した。統計的にほぼ完全な整合だ。
夜はコミックの新刊を読んだ。Batman: TheDoom That Came to Gothamだ。ラヴクラフト的な要素とDCの神話構造の融合は見事だ。
特にグラント・モリソン的メタ構造を経由せずに、正面から宇宙的恐怖を描く姿勢に敬意を表する。
僕はページをめくるたびに、作画の線密度が変化する周期を測定した。平均で3ページごとに画風の収束率が変化していた。おそらくアシスタント交代によるノイズだが、それすら芸術的だ。
23時、歯磨き(上下それぞれ80回)、ドアのロック確認(5回)、カーテンの隙間チェック(0.8mm以下)、ルームメイトへの「明日の朝7時32分に僕が目を覚ます音で君が驚かないように気をつけてくれ」というメッセージ送信を終えた。
就寝時、僕は弦の非可換代数構造を思い浮かべながら眠りについた。もし夢が理論に変換できるなら、僕のREM睡眠はすでに物理学の新章を記述している。
青
5階建ての古い団地で、俺の部屋は3階の角部屋だった。
A、B、それと青。
青だけは仲良くなかった。
いつも一人でいて、誰とも喋らない。
あとなんか肌に青みがかかってて、変な臭いがした。
クラスの奴らは青を避けてた。
ただ、関わりたくなかった。
青の家族も変だった。
青も父親も、何か怖かった。
鬼ごっこしてて、俺が鬼だった。
Bが駐輪場の奥に隠れた。
俺も追いかけて入った。
そこで、青を見た。
青は駐輪場の一番奥で、しゃがみ込んでた。
何かしてる。
近づいて見たら、青は地面に何か書いてた。
白いチョークで。
丸と線を組み合わせた、変な記号みたいなやつ。
「何してんの?」
俺が声をかけたら、青がゆっくり振り向いた。
目が、笑ってなかった。
口は笑ってたけど、目は怒ってるみたいだった。
「おまじない」
青がそう言った。
「何の?」
青はまた地面に向かって、記号を書き続けた。
気味が悪くて、俺はその場を離れた。
AとBにそのことを話したら、二人とも「やっぱ変だよな、青」って言った。
担任が「青くんは、お父さんの都合で転校しました」って言った。
急な転校だった。
誰も気にしなかった。
むしろ、ホッとした。
でも、その日の夜、変なことが起きた。
「コンコン」
3階なのに。
窓を見たら、誰かいた。
暗くてよく見えないけど、人の形。
子供くらいの背丈。
俺は怖くなって、カーテンを閉めた。
でも、音は続いた。
母はまだ帰ってない。
俺は布団にもぐって、耳を塞いだ。
30分くらい続いて、やっと止まった。
次の日、ベランダを見た。
何もなかった。
でも、窓ガラスに、手の跡があった。
小さい手。
子供の手。
俺は母にそのことを話した。
母は「鳥でも当たったんじゃない?」って言った。
でも、あれは人の手だった。
それから毎晩、音がした。
いつも夜の10時。
母が帰る前。
俺が一人の時。
でも、ある日、我慢できなくて開けた。
誰かいた。
青だった。
ベランダに、青が立ってた。
でも、おかしい。
3階のベランダに、どうやって?
俺は叫んだ。
母が駆けつけてきた。
でも、ベランダには誰もいなかった。
母は「疲れてるのよ」って言った。
俺は頷いたけど、確かに見た。
青がいた。
次の日、学校でAに話した。
「青、昨日俺の家に来た」
「は?転校したじゃん」
「でも、見たんだ。ベランダに」
Aは笑った。
「お前、怖い話の見過ぎ」
震えた声で。
「青、いた」
「どこに?」
「窓の外」
Aの家は2階だった。
「何してた?」
「ずっと、こっち見てた」
Aは泣きそうだった。
次の日、Bも同じことを言った。
「昨日、窓の外に青がいた」
俺たち三人は、怖くなった。
何かがおかしい。
青は転校したはずなのに。
俺たちは、青の家に行くことにした。
確かめないと。
放課後、三人で青の家のある棟に行った。
青の部屋は4階だった。
ドアをノックした。
誰も出ない。
もう一度ノックした。
やっぱり誰も出ない。
隣の部屋のおばさんが出てきた。
「あんたたち、何してるの?」
「青くんの家に用事があって」
おばさんは首を傾げた。
「もう引っ越したわよ」
「いつですか?」
「1週間くらい前かしら」
やっぱり、いない。
でも、じゃあ俺たちが見たのは何だったんだ?
おばさんが続けた。
「可哀想にねえ」
「何がですか?」
「息子さん、亡くなったのよ」
「え?」
「お父さんが、その、ね」
おばさんは小声で言った。
「虐待してたらしいの。それで衰弱しちゃってね。」
背筋が凍った。
「いつですか?」
「半年くらい前」
半年前。
でも、俺たちは1週間前まで青と同じクラスだった。
じゃあ、あれは。
おばさんが続けた。
「お父さん、捕まったけど、すぐ出てきたのよ。証拠不十分だって」
「それで引っ越したんですか?」
「ええ。でもね」
おばさんは声をさらに小さくした。
「引っ越す前の晩、お父さん、発狂してたの」
「発狂?」
俺たちは黙った。
おばさんは「まあ、気の毒な話よ」って言って、部屋に戻った。
誰も喋らなかった。
青は、半年前に死んでた。
じゃあ、学校にいた青は。
俺たちが見てた青は。
Bが震えた声で言った。
「俺たち、死んだやつと一緒にいたの?」
Aが「そんなわけない」って言ったけど、声に力がなかった。
家に帰った。
母に全部話した。
母は信じなかった。
「疲れてるのよ、三人とも」
でも、その夜。
また音がした。
俺はカーテンを開けた。
青がいた。
無表情。
だけどその姿は異常だった。
俺は叫んだ。
母が来た。
でも、やっぱり誰もいなかった。
毎晩、青が来る。
ベランダに。窓に。部屋の中にも。
青が、ずっと咀嚼している
眠れない。
AもBも、同じだった。
三人とも、学校を休むようになった。
2週間後、Aが入院した。
精神科に。
Bも、その次の週に入院した。
俺も、限界だった。
母が、引っ越しを決めた。
「もう、ここには居られない」
引っ越しの準備をしてる時、部屋の隅で何か見つけた。
白いチョーク。
そして、床に、うっすらと記号が書いてあった。
俺は気づいた。
青は、呪いをかけてたんだ。
俺たちに。
なぜ俺たちに。
青は来なくなった。
ホッとした。
でも、AとBは、まだ入院してた。
俺は二人を見舞いに行った。
Bは、何も喋らなかった。
ただ、窓の外を見てた。
俺は、二人を見て、泣いた。
そして、俺は30歳になった。
Aは、5年前に自殺した。
自分の手を飲み込もうとして窒息死した。
Bは、今も入院してる。
20年間、ずっと。
喋らない。
ただ、窓の外を見てる。
ずっと。
俺は、普通に生きてる。
結婚もした。
子供もいる。
でも、時々思い出す。
青のこと。
あの咀嚼音。
俺たちは、青を助けなかった。
変だからって、避けてた。
虐待されてたのに。
そして、青は死んだ。
そして、俺たちを呪った。
でも、何で俺だけ。
何で、AとBだけが。
それが、一番怖い。
先月、Bの病院に行った。
20年ぶりに。
Bは、変わってなかった。
窓の外を、ずっと見てた。
俺が声をかけても、反応しない。
看護師に聞いた。
「何を見てるんですか?」
看護師は首を振った。
「分かりません。でも、ずっとあそこを見てます」
俺も、窓の外を見た。
何もない。
ただの、駐車場。
でも、Bは、何かを見てる。
俺には見えない、何かを。
帰り際、Bが小さい声で言った。
「お腹いっぱい」
俺は振り返った。
Bは、初めて俺の方を見た。
そして、笑った。
最近、娘に変な癖がついた。
気づいたら指を口いっぱいしゃぶってる。
もう5歳になるのに。
還暦を過ぎてから、長年の夢だった”自宅に映画館を持つ”計画を実行に移した。
若い頃から映画が好きで定年後に時間ができたら作ろうと漠然と考えていたが、実際に着手してみると想像以上に手間と費用がかかった。
以下は、記録として残しておきたいと思う。
地下一階に8畳ほどの物置部屋があり、もともとは古いワインセラー兼倉庫として使っていた場所を映画室に転用することにした。
天井高は約2.3メートル、コンクリート打ちっぱなしの壁面。湿気が多く、まず最初に除湿と防音の両立が課題となった。
・防音工事:約78万円(吸音材・遮音シート・壁パネル施工含む)
・床上げ+防振マット施工:約22万円
合計で約149万円。
この時点で、当初の想定額(100万円以内)はすでに超えていた。
防音工事は最も大きな出費になった。
使用したのは旭化成のサウンドカットNT吸音パネルと、YKKの遮音ドア。
天井にはグラスウール断熱材を50mm厚で敷き詰め、その上に遮音シートを重ね、化粧パネルで仕上げた。
ドアは外開きの防音仕様で閉めると耳が詰まるような密閉感がある。
次に問題になったのが空調。
防音室は密閉度が高く、換気が悪い。
家庭用のダクト式換気扇を2台設置し、吸気・排気の両方を分けて運用。
これらの設備関連だけで約40万円。
電源も100V→200Vのコンセントを追加し、プロジェクター専用回路を確保。
配線は壁内を通して見た目をすっきりさせた。
スクリーンは悩んだ末にキクチ科学研究所のSE-120HDWを選択。
天吊り金具SLG-011とHDMIケーブル(エレコム製20m、5,800円)を併せて取り付けた。
映像ソースはPanasonicのDP-UB9000(UHDBlu-ray対応プレイヤー)を導入。
これが約17万円。
さらにNAS(Synology DS220+、約5万円)を設置し、自宅サーバーに保存した動画をLAN経由で再生できるようにした。
スピーカーはフロントにBowers & Wilkinsの「607 S3」(約11万円×2台)、センターにHTM6S2(約9万円)、リアに「606S2」(約10万円×2台)、サブウーファーはYAMAHAのNS-SW100(約4万円)を選択。
サラウンドケーブルはオヤイデ電気のSP-3398(メートル単価550円)を20m使用。
ラックやスピーカースタンドを含めるとさらに10万円上乗せとなった。
映画館の雰囲気を出すため、座席にはリクライニング式のシアターチェアを導入した。
左右にドリンクホルダー付きの肘掛けを備え、電動リクライニング機能を持つ。
床は吸音カーペット仕様で、サンゲツのNT-700を採用(1平方メートルあたり3,800円)。
壁面は黒の吸音クロス仕上げに変更し、余計な光の反射を防止した。
地味だが、最も苦労したのは配線整理だった。
LAN、電源、スピーカーコードを束ねて壁裏を通すために、既存のコンクリート壁にスリーブ孔を開けた。
防振ゴム付きの配線モール(パナソニック製)でカバーし、床下収納には電源タップを隠した。
木製パネルを黒塗りにして高さを低く抑え、機器の熱がこもらないよう背面を開口。
金具やネジ込み部の補強材としてスチールバー(コーナンで購入、1本1,480円)を使用。
設置後、実際に試写を行うと反響音が予想以上に強く、音がこもって聞こえた。
床と壁の反射を抑えるため、追加でニトリの厚手カーテン(遮光3級、1セット6,800円)を壁面に吊り下げた。
さらにコーナー部分にウレタン製のベーストラップ(ヤマハ製)を設置(1本9,200円×4)。
音響調整には無料ソフト「RoomEQ Wizard」を使用。
マイクはBehringerのECM8000(約9,800円)をPCに接続し、周波数特性を測定。
AVアンプの自動補正機能Audyssey MultEQと組み合わせて微調整を行った。
総費用はすべて含めて約340万円。
当初想定より100万円以上のオーバーとなったが、途中で妥協しなかったことが功を奏したと思う。
運用にあたっては、電気代とメンテナンス費用が月平均で約3,000円。
除湿機と換気扇を常時稼働しているため、湿度は50%前後で安定している。
プロジェクターのランプ寿命(約5,000時間)を考慮すると、交換費用は約2万円。
年間に換算しておよそ1,500時間の稼働であれば、3年はもつ計算になる。
一番の失敗は換気経路の設計だった。
最初は排気口を小さくしすぎて空気が循環せず、夏場に室温が35度を超えた。
その後、直径100mmのアルミダクトを150mmに変更し、サーキュレーター(バルミューダ製GreenFan C2)を導入して解決。
スピーカースタンドの支柱に軽い赤錆が浮いたため、サンドペーパーで磨いて防錆塗料を塗布。
工事の打ち合わせ、配線の確認、資材の選定など、すべて自分で行った。
しかし完成した空間は日常から完全に切り離され、映画を“観る”のではなく“迎える”場所になった。
上映中は時間を忘れる。
外の音も入らず、誰にも邪魔されない。
その密度の中で一本の映画を観終えると、少しだけ若返ったような気がする。
だが、年を重ねると”何を持つか”よりも”何に時間を使うか”のほうが重要となる。
地下のミニシアターは、そういう意味でとても有意義な投資だったと思う。
Permalink |記事への反応(17) | 14:34
鬱が寛解に向かい、幸いにも在宅仕事が軌道に乗って一人暮らしできるかなというときに難病がわかって、手術や治療のために一旦引き続き実家の世話になることになった。
両親とも健康に働いているので在宅の私が家族の炊事、掃除をしてる。
少し遅れて、一人暮らしで引きこもりだった兄弟も実家に戻って来た。
家事は全部免除。洗濯も放置。自分の昼食作りで汚したキッチンも放置。油汚れに気づかず私が夕飯の支度をすると私が怒られた。
自分で洗濯させたら?と聞いたら、一人暮らしで頑張ってきただろうから…って。私も頑張ってたけど、自分で洗濯してるよ。
夕方にカーテンを閉め忘れただけで廊下を踏み壊さんばかりの足音で歩かれ嫌味を言われた。
鬱病で戻った時、母の気に障り、殺してやる!!!!と言われた。母はその時のことを覚えてない。そんなこと言ったっけ?って。この差はなんだろう。
家族で食事を囲んで、私が話すのを遮ってあ!そういえば兄弟のあれはどうなった?と話をそらされた。
いじめを受けてることを母に打ち明けると、ええええええ!????!?ってヒス声を上げられて怖くなって、なんだかそれでもう、話す気力がなくなって、そういえば話なんか聞いてくれない人だって諦めたんだった。
ブラジャーを買ってもらえなかった。小学校からそれなりに大きかったが、スポブラをつけるべきだという意識もなかった。
恥ずかさを押して、ようやく相談したとき、連れていかれたのは雑貨屋兼服屋みたいなところで、胸が大きいのが恥ずかしくて自分はBカップだと思い込んで2着買ってもらって、それを何年もつけてた。
私のようなブスが下着屋に行って、可愛い下着を自分で選んで着けることは恥ずかしいことだと思ってた。
ニキビで脂っぽいことをからかわれたけど、しゃぼん玉石鹸で洗う以外の知識がなかった。
腋毛を剃るのをやめたほうがいいと言われて、除毛クリームを使っていた。肌が痒くて、生えたまま登校したときもあった。
喘息がひどかったけど、病院には連れていかれず、当然それが喘息とも思っていなくて、夜中に母が面倒見てくれてた。
マラソンはビリで、体育教師に気持ちの問題と言われた。その後の授業が発作で苦しかった。優しい先生に背中を撫でられながら授業を受けたときもあった。授業中みんなに迷惑だっただろう。なぜか親には言えなかった。
父は単身赴任でいなかった。いないほうがマシだった。無神経な父に怒り散らす母の愚痴を聞くのがつらかったから。
部屋にいて、親のなんでもない話し声や物音が怖い。
恥ずかしながら在宅の仕事を始めた年は年収100万だった。世帯年収で計算されるので年金は免除されないし、国保もしっかり払った。もちろん私費もすべてその中でやりくりした。
兄弟はどうか。仕事は始めたがそもそも家族と一切会話をしない。税金は督促がきても放置していたので払えと言っても無駄らしい。国保も親負担、携帯料金も母が払って、その上お小遣いも与えてることを知った。
払わせないの?と聞いたら、なんか言いづらくて…と返って来た。私にはどんな文句も言ったのに?
夫婦の愚痴も、父の不倫メールが誤送されてきたときも、母のヒステリーも、私が受け止めて来た。
病気のことを含め、子どもの頃から金銭的な不安なく暮らせてたのは親のおかげなので感謝している。たまたますごく収入が上がって、温泉旅館のスイートルームをプレゼントしたこともある。喜んでくれるのが嬉しい。
でも、私の入院、通院費のことは一切気にかけないのに、兄弟に今度車を買ってあげるんだって。
鬱病が揺り戻してきて起き上がれない日が増えた。軌道に乗ってたはずの仕事なのに、上手く頭がまわらなくて苦しい。
私の意思ってなんだろう。
医師の話で、悪化しやすい体質だから、場合によっては何度も手術する必要があると思うと言われてて、その度に親に保証人とか付き添いを頼まないとならない。
朝の通勤電車から夜の帰り道まで、私はいつも見知らぬ視線の十字砲火の中を歩いている。
胸が大きいというただそれだけの理由で、
****
コンビニに入った瞬間に感じる、息を呑むような気配。
エレベーターの密室で感じる、背中に突き刺さるような視線と熱い息遣い。
それらは全て、私が望んだわけでもない注目という名の暴力だった。
**S*
街を歩くたび、胸元を隠すように前かがみになってしまう自分がいる。
ゆったりした服を選んでも、それでも形は分かってしまう。
****
家に帰り、鏡の前に立つ。
そこに映るのは、ただの一人の人間としての私ではなく、
街中の男たちが勝手に性的な妄想を投影する「対象」としての身体。
胸の大きさがまるで看板のように、
****
それでも私は歩き続ける。
背筋を伸ばし、堂々と街を歩く権利があるのだと自分に言い聞かせながら。
ときおり、その視線に煽られて私自身の意思に反して身体が反応する時がある。
それは私にとって最も混乱し、最も恥ずかしい瞬間だった。
****
満員電車で背後から感じる熱い視線に、胸の奥が微かに疼くことがある。
頭では「やめて」と思っているのに、身体は勝手に熱を帯び始める。
その矛盾に気づいた瞬間、
裏切られたような気持ちになる。
****
不快に思いながらも、なぜか頬が熱くなり、
呼吸が浅くなっていく自分に気づく。
この反応は一体何なのだろう。
望んでいないのに、
拒絶したいのに、
深い混乱に陥る。
****
家に帰ってシャワーを浴びながら、
それに対する自分の反応を思い返す。
私をより深い孤独へと突き落とす。
誰にも相談できない、
私は鏡の中の自分を見つめる。
****
それでも、まるで自分が共犯者であるかのような罪悪感に苛まれることがある。
望まない注目と、
それに対する制御できない反応の間で、
私の心は静かに揺れ続けている。
いつか理解できる日が来るのだろうか。
****
それでも私は、
少しずつ受け入れようとしている。
ある日、そんな望まない誘惑に負けて、かなり年上の男性とセックスをしてしまった。
私が最も避けるべきことだった……はずなのに。
****
その日の夕方、駅前のカフェで一人でいたとき、隣のテーブルに座った男性が声をかけてきた。
四十代後半くらいの、落ち着いた雰囲気の人だった。
彼の視線が私の胸元に向けられるたび、
頭では「帰らなければ」と思っているのに、足が動かない。
彼の誘いを断る言葉が喉の奥で消えていく。
気がつくと彼について近くのホテルへ向かっていた。
****
部屋の中で、彼が私の肩に手を置いたとき、全身に電流が走った。
これは私が望んでいることなのか、
それとも単なる身体の反応なのか、
もう区別がつかなくなっていた。
服を脱がされながら、
心の奥で小さな声が「やめて」と叫んでいるのに、
身体は素直に応えていた。
行為の間も、
彼に求められることで感じる一種の充足感と、
自分を裏切ったような罪悪感が同時に押し寄せてくる。
****
終わった後、シャワーから出て鏡を見たとき、そこに映ったのは知らない誰かのようだった。
なぜこんなことをしてしまったのか。
彼が悪いのか、私が悪いのか、
それとも誰も悪くないのか。
答えのない問いが頭の中を駆け巡る。
帰り道、夜風が頬に当たるたび、自分の選択への後悔が深くなっていく。
望まない視線に晒され続けた結果がこれだったのか。
****
家に着いて一人になると、涙が止まらなくなった。
この経験をどう受け止めればいいのか、誰にも相談できずに、ただ静かに夜が更けていく。
そして、わたしは混乱のまま、ひとり、まだ収まらぬ欲望を鎮めるために、
****
部屋の電気を消し、
私は布団にくるまった。
心と身体の間に横たわる深い溝を埋めようとするかのように、
そっと手を伸ばす。
それは自分を慰めるためというより、
触れる指先に伝わってくるのは、
でも今度は、誰の視線も、誰の欲望も介在しない、純粋に自分だけの時間。
閉じた瞼の裏に浮かぶのは、あの男性の顔ではなく、ただ曖昧な影のような何かだった。
****
波が寄せては返すように、快感と罪悪感が交互に押し寄せる。
これは私の意思なのか、
枕に顔を埋めて、小さく身体を震わせながら、私はただ静かに涙を流していた。
****
自分の身体を取り戻すための行為だったはずなのに、結果として残ったのはより深い孤独だった。
誰にも理解してもらえない、この複雑で矛盾した感情を抱えたまま、私は夜明けまでの時間をただ天井を見つめて過ごした。
この終わりのない循環の中で、私は自分自身との和解の道を探し続けている。
夜の帳がすべてを包み込む頃、わたしはそっとベッドの上に身を沈めた。
薄いシーツのひんやりとした感触が、肌の奥に冷たい震えを残す。
呼吸を整えながら、思考の雑音を遠ざけるようにゆっくりと目を閉じた。
****
心の奥底でくすぶり続ける熱が、手のひらにまで伝わってくる。
私はシーツの縁をぎゅっと握りしめ、もう片方の手を太ももの内側へ滑らせた。
その瞬間、肌を伝う指先にぞくりとした電流が走る。
まるで喉に詰まった言葉が身体を駆け巡るように、全身が目覚めていく。
****
指がゆるやかに動くたび、暖かな湿り気が広がり、私の胸は小さく上下する。
閉じたまぶたの裏に浮かぶのは、遠い窓辺から漏れる街灯の淡い光だけ。
無数の思いがきしむように折り重なり、ひとつずつ解きほぐされていく感覚があった。
****
呼吸が荒くなるにつれ、指先の動きは自然と速さを増す。
月明かりに照らされた頸(くび)のラインが、柔らかな翳(かげ)を描いて揺れる。
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一呼吸、一瞬のときめきが重なり合い、やがて身体の奥深くで小さな波が弾けた。
ぎゅっと握りしめたシーツが緩み、胸の内にあふれた感情がそっと零れ落ちる。
****
終わったあと、私はまだ微かに余熱を帯びた手を見つめる。
自分自身で自分を抱きしめるこの行為は、誰のためでもない、私だけの小さな反抗だった。
身体と心の深い溝を、ほんのひととき埋めるための、最も正直な儀式。
夜はまだ深く、そして私は――少しだけ、自分を取り戻せた気がした。
夜の静寂が重く降り積もる部屋の中で、わたしは四つん這いになった。
シーツの冷たさが掌から腕へと伝わり、床に広がる感触が身体の芯をくすぐる。
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遠い窓辺から差し込む月明かりが、背中の曲線を銀色に照らし出す。
その柔らかな光の中で、わたしはひざをわずかに開き、手をそっと腰のすぐ下に置いていく。
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ひと息ごとに深まる熱が、太ももの内側へと波紋のように広がる。
指先はまるで秘密の扉を探るかのように、皮膚の縁をなぞるだけで、身体は自然と反応を始める。
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床板のきしみが小さな音をたて、まるでわたしの鼓動に合わせて囁くようだ。
指先が微かなリズムを刻むたび、胸の奥から柔らかなうねりが押し寄せ、息が熱を帯びていく。
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身体を支えるひじに力を込めると、背中がひときわ高く弧を描き、腰のあたりに甘い疼きが蘇る。
その瞬間、わたしは全身を貫く小さな波に身を委ね、静かな陶酔の中でひとつの頂きへと導かれていった。
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終わりの余韻は、まるで絹のベールがそっと降りるかのように静かだった。
わたしはそのまま少しの間、月明かりと床の冷たさを抱きしめながら、深く静かな息を繰り返していた。
私はもう、抑えきれない波に身を委ねる。
夜の深みが全身を包み込み、自分だけの世界がゆっくり開いていく。
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顔を伏せ、長い髪が頬を撫でるたびに、体の奥がひそやかにざわめく。
シーツにくっきりと刻まれる肘の跡が、しなやかな記憶となって背中に残る。
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柔らかな曲線をなぞるたび、熱が指先から脳裏へと跳び火し、鼓動が高鳴る。
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息づかいは次第に荒く、でも抗えないほどに甘くなる。
かすかな汗が首筋を伝い、肌を冷たく刺激する。その冷たさが、いっそう欲情を掻き立てる。
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身体の中心でうねる脈動が、まるで星々のリズムと同期しているかのよう。
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やがて訪れる頂点の瞬間、全身が軽やかな火花を散らしながら、深い懐へと溶け込む。
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解放の余韻に浸りながら、私はもう一度、自分自身を抱きしめる。
夜の静寂と私の鼓動がひとつになり、無数のわたしへと還る詩が、そっと幕を閉じる。
翌朝、窓の向こうから差し込む柔らかな光が、昨夜の余韻をそっと揺り起こす。
私はまだ眠りの縁にいるまま、自分の大きな胸に手を当てる。
鼓動はゆっくりと、しかし確かに、昨夜とは異なる静かな決意を秘めていた。
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カーテンの隙間から漏れる光線に導かれるように、私はベッドの縁に腰かける。
淡い朝日が頬を撫で、身体の奥底に息づく欲求が、小さな震えとなって立ち上がる。
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素肌が冷たい空気に触れた瞬間、再び身体が目覚め、胸の谷間に甘い疼きが生まれる。
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横たわる布団を背に、私は四つん這いになり、手を腰のくびれへ滑らせた。
昨夜の記憶をたどるかのように、指先は肌の柔らかさを確かめ、ひとつずつ自分の願望を叶えてゆく。
身体中に行き渡る熱は、もはや罪悪ではなく、私自身の力強い生の証明だ。
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動きは自由自在で、呼吸は次第に深く、荒々しくもあった。
指先から伝う快感が、脳裏を明るく染め上げ、私は身体の奥で求めるものすべてを解放していく。
声が漏れ、シーツが揺れ、部屋の静寂が私の節奏に合わせて微かに震えた。
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願望を叶えたあとの余韻は、清らかな湖面のように澄み切っていた。
私は手を伸ばし、胸元に当てていた手をそっと解放する。
そこには、昨夜とは異なる自信が宿っていた。
自分の身体と心を誠実に慈しむことで、私は新たな一歩を踏み出す準備を整えたのだ。
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私はこれからも、この身体と共に真実の声に耳を傾けながら生きていく。
夜風が髪を撫で、街灯の輪郭がぼやける頃、私は静かに部屋を出た。
ふだんは避けていたネオンの海へ、今はまるで誘われるように足が向く。
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舗道の冷たい石畳を踏みしめるたび、昨夜の余韻が身体の奥で疼き返る。
まぶた越しに浮かぶのは、自分を縛っていた羞恥心――それがどれほど不自然な檻だったかを思い知らされる。
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雑踏のリズムに身を任せながら、私は自分の頬に灯る熱を見つめた。
恐れていたのは他人の視線ではなく、自分の中に潜む快楽の声だったのだと知る。
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ビルの谷間にこだまする車のエンジン音が、心臓の鼓動と重なり合う。
その振動が全身に伝わり、「禁忌」だと思い込んでいた感覚が実は私の最も純粋な生命の証だったと気づく。
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ネオンライトに映る私のシルエットは、夜の誘惑に頷くように揺れていた。
これまで忌み嫌ってきた「私の快感」は、恐れるに値しないどころか、私自身を輝かせる光そのものだった。
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夜の街を歩く足取りは軽やかで、抑えてきた欲望が解放された今、私は初めて、自分自身をまっすぐに抱きしめていた。
ネオンの残光が私の影を長く伸ばす路地裏で、見知らぬ声が耳元に囁いた。
その低く柔らかな誘いに、私はためらうことなく頷いていた。
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彼の手を取ると、指先に走る温もりが夜風に溶けていく。
初めて触れるその手は、私がこれまで避けてきた夜の闇を優しく照らし出した。
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小さなバーの扉を押し開けると、薄暗い空間にジャズの低いリズムが流れていた。
カウンター越しに差し出されたグラスの中で、琥珀色の液体が揺れるたび、胸の奥が柔らかく騒ぎ出す。
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言葉は少なかった。互いに名前も知らず、ただ視線と触れ合いだけで求め合う。
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やがてバーを後にし、私たちは夜の街を抜けて彼のアパートへ向かった。
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その感触は、まるで夜そのものを味わうかのように深く、私の内側から溶かしていく。
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硬く抱きしめられ、開かれ、満たされるたび、これまでの遠慮や後悔が消えていった。
床板の冷たさがひざ裏に触れ、背筋を通り抜ける緊張が私を震わせる。
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彼の手がそっと腰骨に乗り、軽く押し下げる。
その圧力に合わせるように、私は自然と背を反り、身体の曲線を際立たせた。
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低く囁く呼吸が、首筋にゆらめく温かな風となって耳元を撫でる。
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指先が太ももの内側を撫で上げ、ふくらはぎへと辿るたび、身体は波のように反応する。
まるでずっと待っていたかのように、肌の奥から熱が浮かび上がった。
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次に、彼の身体が私の背中へと近づき、骨盤のくぼみにそっと重みを預ける。
その圧迫と解放のリズムが、私の中心をゆっくりと揺さぶり、慟哭のような甘い震えを呼び起こした。
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息が漏れ、髪が頬に触れるたび、小さなうめき声が夜の静けさに溶けていく。
私はただひたすら、開かれ、満たされるままに身を委ねた。
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終わるとき、身体は深い余韻に包まれ、四つん這いのまましばらくその場に残った。
床の冷たさと彼の余熱が混じり合い、私の内側には新たな確信が灯っていた。
柔らかく重なるとき、私の唇は甘い潮騒のように震え、彼の肌にそっと溶け込む。
その熱は、まるで眠れる火種を灯すかのように、静かな欲望の焔をともした。
****
私は彼の首筋へと滑るように口づけを落とし、鼓動を刻む抑揚を読み解く。
ひとつ、ふたつ、鼓膜をくすぐる吐息を集めて、私は彼の呼吸そのものを愛した。
****
唇を離す瞬間、小さな甘い震えを種火に変え、次のキスへと連なる旋律を描く。
その連鎖は夜の静寂を柔らかく揺らし、彼の心と身体をひとつの詩に編み上げた。
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私が彼に捧げたのは、ただの接触ではなく、音のない言葉と、温度だけが宿る祈りだった。
唇で織りなすひとつひとつの旋律が、深い夜の帳を赤く染め上げていく。
夜の帳が深まる中、私はそっと彼の秘奥に唇を寄せた。
そこには、夜の熱を宿した硬きものが、静かに呼吸を待っていた。
****
唇の柔らかさと硬質な感触が交錯し、まるで石灰岩に滴るしずくのように、熱がゆっくりと溶け込んでいく。
口内に伝わる脈動は、遠雷のように深い場所で響き渡り、私の鼓動を共鳴させた。
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それはまるで、冬枯れの大地が春の滴を待ちわびるような切ない期待を孕んでいた。
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唇を離すたびに残る余韻は、真夜中の川辺に漂う霧のごとく甘く、ほのかな余熱だけが私の胸に刻まれる。
硬きものへの口づけは、言葉にならぬ祈りとともに、ふたりの夜を深い詩へと変えていった。
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唇を軽く湿らせ、私はそっと先端へと導く。
****
その導きは、固さと温もりを一つの旋律に編み上げ、深い夜を揺り動かす。
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息遣いは次第に重く、でも柔らかな詩を紡ぐように響いた。
私はその硬きものを自分のリズムに合わせ、甘くも力強く夜の彼方へと連れ出していった。
私はひざまずいたまま身体を前へと傾ける。
胸のふくらみが、かたくそびえる先端へと触れた瞬間、微かな火花が走った。
****
私の柔らかな曲線と彼の硬質な存在が重なり合い、
心臓の鼓動が高鳴り、胸の谷間から伝わる圧迫が甘い疼きとなって波打った。
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シーツの白さに映るその影は、まるで古代の柱に抱きつく蔦のように、かたく絡みついていく。
私の呼吸が乱れ、胸が震えるたびに硬きものは静かに、しかし確実に私の奥深くを探り始めた。
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やがて二つの温度が混ざり合い、柔らかさと硬さがひとつの旋律を奏でる。
その調べは夜の闇に溶け込み、胸に秘められた欲望をひそやかに解き放っていく。
その冷たくも温かな液体は、まるで夜空を切り裂く流星のように勢いよく放たれ、私の肌を愛撫する。
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滴がひときわ大きなしずくとなり、シーツの白をゆがめながら胸元へと舞い降りる。
その瞬間、身体全体に満ちるのは、これまで味わったことのない満足感であり、魂が溶け出すほどの祝福だった。
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白いしずくが胸を伝い落ちるたび、私の中に広がるのは静かな幸福の海で、すべてが溶け合ってひとつの光になる。
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その満たされた余韻は、まるで天からの賛歌が身体に刻まれたかのよう。
私はただ瞳を閉じ、胸を撫でるしずくの感触に身を委ねながら、今この瞬間の完全なる歓喜を胸に深く刻みつけた。
唇をそっと開くと、冷たくも甘い白い液体が広がり、舌の上で優しくとろけていく。
そのぬめりは、まるで夜露が朝の葉を濡らすように、私の口腔をしっとりと包み込む。
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その柔らかな曲線を、私は慈しむように口の中で抱きしめ、細心の注意でその輪郭をたどる。
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液体とやわらぎが交じり合う瞬間、甘く深い滋味が喉の奥へと流れ込み、全身に解け出す。
私はその余韻を味わいながら、夜の祝福が身体の隅々まで行き渡るのを感じていた。
タイムカード押して制服に着替えて、スキャナー付きのスマホを受け取って、そこからひたすら歩き回る。アプリが次々に指示を出してくるんだけど、そのルートがいつも無茶苦茶。A列からZ列まで行ったかと思えば、今度はB列へ戻れって。もう少し近い棚同士をまとめてくれよって毎回思う。こっちは万歩計が軽く一万歩超えてるのにアプリはおかまいなし。
棚の通路は空調が効きにくくて、夏は蒸し風呂、冬は逆に足元から冷える。薄い軍手じゃ手がかじかんでバーコードがうまく読めない。汗がしたたる季節は軍手が濡れて端末が滑る。倉庫の天井にぶら下がった小さな扇風機が一応あるけど、あれ気休めだよな。風が届く棚なんて限られてるし、風が当たる頃にはもう休憩時間。
商品だって軽いものばかりじゃない。ペットボトル24本入りとか、やたら長いカーテンレールとか、持ちにくい家具のパーツとか。台車に乗せてもバランス悪くてグラグラするし、足を挟みそうでヒヤッとする。たまに外箱がへこんでてバーコードが読みづらいものがあって、それをスキャンするときに端末がピッと鳴らない。何度かやってると無線で増田さん、進捗遅れてますって声が飛んでくる。いやいや、こっちのせいじゃないって。中身チェックしてるうちに他の人が先に行ってしまって、さらに焦る。焦ると余計にバーコードがうまく読めなくて、悪循環。
休憩室までも遠い。端まで歩いて数分、途中で台車が詰まってて進めないこともある。やっと椅子に腰かけた頃には残り休憩10分とか普通にある。自販機の缶コーヒーを一気に飲んでスマホを開いた瞬間、休憩終了。求人広告に「休憩あり」って書いてあるけど、あの10分は休憩と呼べるのか。
時給は表向きは悪くない。夜勤手当を入れればそれなりに見える。けど交通費でちょっと削られて、昼飯や飲み物買えばほとんど残らない。腰をやられないようにサポーターを自腹で買ったり、靴もクッションのいいやつに買い替えたりすると、あっという間に時給の魅力が吹き飛ぶ。なのに求人には高時給で稼げます!って書いてある。笑うしかない。
同じシフトの連中は身勝手で、仲が悪いわけじゃないけど話はしない。休憩中にスマホ弄ってるやつばっか。コミュ力ゼロの集まり。で次のシフトでも普通に顔を合わせる。辞めたいと思いながらも求人サイトを開く気力すら残ってなくて、そのまままたシフトを入れてしまう。気づけばもう一年が経とうとしている。最初は一時期だけと思ってたのに。
台車を押しながら最近はこのままずっとこうなのかな?とずっと考えてる。考えたって何も変わらないのに。帰りにコンビニで弁当買って、デザートも。最初はご褒美だったのに今は惰性で毎日買ってる。朝焼けがきれいだなと思う気持ちすら、だんだん薄れていく。ピッ、ピッとバーコードを読み取る音が一日じゅう耳に残って、家に帰っても消えない。
次のシフトも明日入ってる。キャンセルしようかと思ったけどスマホを握ったまま結局何も押さずにこの時間になってしまった。明日また同じ時間に目覚ましが鳴る。もう慣れたはずなのに起き上がるとき毎回ため息が出る。
しんどい。
飼える住環境だったり、適性がある人のところに猫が送り込まれてくるとかいう都市伝説、NNN。信じていない。猫のことをやれ構成員とか諜報員、エージェントって呼んだり、ニンゲンは常に見られているとか、こんなのぎりぎり陰謀論じゃない?
少し前に生後4ヶ月いかないくらいの子猫を拾った。(拾ったていうか、通勤で何回か見かけていた子猫を餌やり好きな近所の人が捕獲して、通りすがった自分のところに回ってきた…という流れだから正確には少し違うんだけど)
たまたま、自分の住んでいるワンルーム賃貸はペット可で、猫じゃらしやら洗いたてのシステムトイレやら、成猫用ではあるけどフードやおやつもある。そこで今は3段ケージで家猫修行中のキジトラが自分の一挙一動を監視している。しかもきょうだい2匹。
猫がいない生活って思いつきで旅行に行けるし、早起きも強制されないし、残業もやり放題で、ここら辺で少し稼いで貯めつつ適度に楽しく使って…なんて穏やかなものだった。2ヶ月弱しか続かなかったけど。
四十九日を過ぎたばかりで新しい、しかも若い猫を連れ込むなんて、君は呆れるだろうか。光源氏でももう少し節度があったんじゃないか?先代って呼ぶにはまだ距離が近過ぎて、冗談に包んだ「〇〇大明神」とか「〇〇大権現」なんて言わないと次のことばが出なくなる。ここ五十幾日は人生迷走していて、家賃を払った記憶が丸ごと抜けていて焦ったり、冷凍庫に記憶に無いパンが入っていたり、挙句の果てには航空券のチケットの姓名を逆で予約したりしていたよ。ここで幼猫2匹抱えてもう一回地に足を着けて生きていけって言われているみたい。この滅茶苦茶が避妊去勢の準備とか、ばりばりのカーペットとか、カーテンは登らないで!に変わるんだろうか。
最近まで一緒に暮らしていたのは、こっちは正真正銘自分で拾った猫で、ずいぶん賢くてニンゲンの言葉を理解し、小さな顔に長い手足としっぽが際立った綺麗な白黒だった。
それが某区猫スラングを使い、寝るとか食べるとかの生活動作以外は「うなる」コマンドで済まそうとする、区中の縞猫を集めたら見分けがつかなそうな柄×2だ。可愛い顔をしてはいると思うけど、保護猫の譲渡会に行くことがあったとしたら、きっと選ばなかった2匹だろうから、何があるかわからない。
こんな調子で本当に「NNN」なる組織があるというなら、一生であと何匹の猫に捕まるんだろう。今回と前回はただ偶然の、星5を連続で引いた事象であり再現困難であって欲しい。思えば自分の親も猫を複数回拾った人だった。末代まで祟るって、もしかして子々孫々纏わりつき倒すって意味だったんだろうか。
そろそろ家を買うのもありだななんて思って不動産探しをしていたところだから、複数飼育可の細則で、猫用ドアの設置も検討する必要が出てきた。嘘みたいなタイミング。こうして人は陰謀論者になるのかも。
元気かどうかは日によるけど、後輩どもを何とか立派な家猫にしてやるから、見守っていてくれよ。万が一の次の話だけど、君の生まれ変わり以外を送り込むのは、どうかご海容ください。
おめでとうが9割、残りは「あーあ、やられた」という感じの後ろめたい気持ち。
私は最低な姉です。ごめんね。でも絶対にそんなことを家族には言わないし、きちんとお祝いもするので許してほしい。
いまも母と妹から送られてくる赤子の写真に既読をつけずにこの文章を書いている。
私は三姉妹の長女でもうすぐ三十歳になる。子供が産まれたのは真ん中の妹(つまり三姉妹の次女)で私とは2歳離れている。
下の妹が生まれた頃のことはうっすらだけど覚えているが、真ん中の妹が生まれる前のことは何も覚えていない。物心ついた頃から私はずっと姉だった。「お姉ちゃんなんだから」とかそういう姉の役割を押し付けられるようなことを母親から言われたことはあまりなかったと思うけど、昔はずっと一人っ子に憧れていたのを覚えている。一人っ子のどういう部分に憧れるのか、その当時はあまり深く考えていなかったが自分だけの親が欲しかったのだと思う。
私が何かを始めるときは大体真ん中の妹とセットだった。習字教室に通い始めるときも、学習塾に通い始めるときも、一緒に始めることになり送り迎えは二人一緒だった。
一番下の妹は少し歳が離れていることもあってか、私たちとは別のタイミングで別の習い事を始めていた。ピアノ教室やスイミングに通っていたのは一番下の妹のみで、当然ながら母はそこへ三女のためだけに送迎をする。私はそれが気に入らなかった。
そういった不満があったからか中学生くらいまでは妹二人とは全然仲が良くなかったし、母とも喧嘩ばかりしていた。喧嘩して、妹の前で叱られて部屋にこもる。けど部屋といっても妹の部屋とアコーディオンカーテンで区切られているだけだから完全に一人にはなれず、泣いているのを妹に知られるのが嫌でとりあえず布団をかぶっていた。けど、大きな家ではないので妹と母が楽しそうに話す声や私のことを悪くいう声なんかが聞こえてきたりして、凄まじい疎外感を覚えてまた泣いたのを覚えている。
大体いつも母とぶつかるのは私で、妹たちは横目でそれを見ていてたまに口を挟んでくる。それに私がキレて妹にあたる。そしてまた母がキレる。母が妹たちを庇う形になるのが本当に嫌だった。「妹のことばっかり」と何度思ったか分からないし、私はずっと「自分は姉妹の中で一番母から愛されていない」と思っていた。
母の愛情やありがたみを素直に受け取れるようになったのは、大学進学を機に一人暮らしを始めてからだった。妹に対してもいつもムキになってしまって申し訳なかったと思うようになったし、家を出てからは妹に対してうっすらと抱いていた敵という感覚がなくなった。そこからは母とも妹ともうまくやれていると思う。わりと頻繁に連絡をとっているし一緒に食事に行ったりする。母とは就職活動のときに少し喧嘩をしたが、妹とは家を出てから一度も喧嘩をしていない。
働き始めてからはずっと誕生日と母の日はプレゼントを欠かさず贈っているし、年始にはお年玉を渡している。別に何もいらないよ、と言われるが渡さないとなんか気が済まないし、前年よりも高い金額のものを渡さなければという謎の焦燥感がある。
ずっと親孝行の気持ちからそうしていると思っていたが、一昨年くらいにふと「違うかも」と思った。もしかすると私は、かつて自分が満足いくまで得ることができなかった(と思っている)母親からの愛情や関心をプレゼントやお金で取り戻そうとしているのかもしれない。三姉妹の中で私が一番母にお金を使っているし、今なら自分が一番になれるはずだという気持ちが多分私の中にはある。母はきっと私たちを平等に育てたのだろうと頭では分かっているけど、あのとき妹に奪われた母からの愛を取り返したい。
けどどんなプレゼントも初孫にはきっと敵わないんだろうな、と気がついてしまった。母は何も聞いてもないのに妹の予定日や体調を逐一連絡してくるし、妹の出産準備の買い物に付き合うのも大変そうにしていたけどすごく真剣だった。私にとってはずっとお母さんでしかないから自分の母が祖母になるなんて全く想像もつかなかったけど、やはり母も初めての孫が生まれるのが嬉しかったんだろうな。
母から初孫の写真がたくさん送られてきた。産んだ妹よりも多く送ってくる。その母の喜びの先にいるのが自分でないことが悔しいし悲しい。
これから先私が子供を産んでも当たり前だが初孫にはならないし、初めての孫が生まれるわくわくを私から母にあげることはできない。
妹の産んだ赤ちゃんはかわいかった。妹に目元がよく似ていた。姪っ子として大切にしてあげたいと思う。
こんな伯母さんで本当にごめんね。
ジオンが混乱しきってるのがよくわかるよな。
昇進とかそういう事務手続きとか全然出来ないほど人が足りてない。
何かというと「シャア専用」とかいってカスタムモデルを作りたがるだろ?
ああいうことをするためにすべての工業製品の製造効率が極端に低下→工員に労働力を持っていかれる。
というのが続いてた結果だと思う。
そうするとどうなるのか?
モビルスーツのような本来一個人の専用品なんて作るべきでないものにまで専用品を作る。
これが意味することは、ありとあらゆるもので「専用品づくり」が普及しているということだ。
それもシャアのような少佐クラスですら専用品が作られるのだからジオン社会の上部層のためにありとあらゆるものが専用品として作られていたのは想像に難くない。
デギン・ザビ専用、杖。
ミネバ・ザビ専用、産衣。
などなどなどなど。
ありとあらゆる工業製品に専用品が作られるのだ。
これはもちろんザビ家だけではなくダルシア・バハロのような政治家も含まれる。
このような非効率的な工場稼働の仕方を、それも戦争中にやっていて、戦争に勝てるわけがない。
だからあえていう。