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< anond:20251026025341 |「母さんね、ロンドン... >

2025-10-26

anond:20251026041307

静岡へ行くことを決めたのは、泉の「世界一ソースには、世界一食材必要だ」という一言からだった。

「この『膜』は通信遮断しただけで、物理的な移動を完全に止めたわけじゃない。それに、私たちが作ったものなら、私たちだけのルールコントロールできるはず」

泉は、例の古文書に載っていた、わずかに残る「膜」の抜け道を示した。それは、静岡県のある港町を指していた。私たちは妹には内緒で、最低限のエイリアンソースと、青春時代象徴であるサッカーボールだけを持って旅に出た。

電車は止まっていたが、車は動いていた。しかし、道中の景色はどこかおかしい。街ゆく人々は皆、まるで夢遊病者のように動きが緩慢で、日常ルーティンを繰り返しているだけ。世界は停止しているのではなく、私たち二人の秘密を外部から遮断するために、「低速モード」になっているかのようだった。

静岡の港に辿り着いた私たちは、活気が失せた魚市場で、信じられないほど新鮮なマグロ赤身発見した。世界が低速でも、自然の恵みだけは止まっていなかったのだ。

「これよ、これ!」泉は目を輝かせ、すぐにマグロ刺身エイリアンソースを少量垂らした。ソース虹色の輝きが、マグロの鮮やかな赤身に吸い込まれていく。

「さあ、食べて。世界一ストライカーの胃袋に、最高の燃料を」

その一切れを口にした瞬間、世界が鮮明になった。マグロの濃厚な旨味とエイリアンソースの究極のコクが混ざり合い、私の全身の細胞覚醒する。この味覚体験こそが、泉と私だけの閉ざされた世界における、最高の「ご褒美」であり、究極の「力」だった。私は、この味を力の源として、再びボールを蹴る決意を固めた。このマグロソースの力を得たなら、この世界支配する「膜」さえも、ドリブル突破できる気がした。

Permalink |記事への反応(1) | 04:15

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