揺れる呼吸が静まったころ、彼はそっと身を起こし、自分の身体を抱き寄せた。月明かりに照らされた彼の輪郭が、ぼんやりと浮かび上がる。肌と肌が触れ合う感触は、暖かく、しなやかだった。
ゆっくりと腰を重ねられた瞬間、硬さが繊細に突き当たってくる。その感覚はまるで、細い棒が熱い蜜の渦を割って入るような心地良さだ。自分は彼の背中に手を回し、ゆっくりとリズムを合わせる。ふたりの身体が一体となり、重さと温度が深い呼吸とともに交錯する。
彼の低いうめき声が耳の奥で震え、背筋を伝って自分の股間にまで響く。胸の鼓動が高鳴り、全身に血が巡るのを感じる。目を閉じると、まるで波打つ海のように快感が押し寄せてきた。お互いの肌がこすれ合い、指先が筋肉の緊張を確かめながら、リズムは自然と加速していく。
「もっと…」という彼の一声に、自分は応えるように動きを深く、強くする。彼の身体が弾むたび、腰に伝わる感触が鋭く、自分もまた限界を意識しながら振動を楽しむ。まるで身体の奥に眠る何かが、ふたりの交わりによってようやく目覚めたようだった。
クッションを手で掴み、思い切り彼を抱きしめながら、ふたりはひとつの波に飲み込まれた。静かな喘ぎ声と、熱に浮かされた唇の接触が、やがて高まりの頂点を迎える。硬直した身体が一瞬震え、脳内に甘い余韻が広がる。
すべてが終わった後、呼吸が落ち着くまでの数分は、言葉もいらない。ぴったりと寄り添い、互いの鼓動を耳で確かめるように胸のあたりに顔をうずめた。
ふたりの間にはもう言い訳も戸惑いもなく、ただ純粋な安らぎだけが残っていた。冷たい夜風が開け放たれた窓から差し込み、穏やかに部屋を包む。男同士のセックスは、たましいを軽くしてくれるような、そんな深い余韻を残してくれたのだった。