小学校の卒業文集に、将来の夢は「サラリーマン」と書いた。
理由なんてなかった。
他に何も思いつかなかったからだ。
田舎で育ったから、周りにサラリーマンなんていなかった。
農家とか、自営業とか、そんな人ばかりだった。
スーツを着て働く大人なんて、テレビの中にしかいなかった。
卒業文集の自画像は、頭にネクタイを巻いて笑っていて、
当時はまだかけてなかったメガネまで描いていた。
それがサラリーマンだと思っていた。
大学で上京して、就職した。
でも最初の仕事は私服で、スーツもネクタイもいらなかった。
あの絵の中の自分とは、まったく違っていた。
30歳くらいで転職して、
旧・東証一部上場企業の本社がある新橋で働くようになった。
毎日スーツを着て、会議に出て、夜はガード下で飲んでいた。
ある夜、同僚がふざけて俺の頭にネクタイを巻いた。
笑いながら、ふと思った。
――あの絵が完成した。
子どもの頃に描いた、
なんの夢でもないような夢を、
俺は本気で叶えてたんだ。
サラリーマンの聖地、新橋で。
あの瞬間、俺は夢の頂点にいた。
――夢は叶うんだ
なお、その会社はクソだったのですぐ辞めた。
Permalink |記事への反応(2) | 17:54
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AI松
人工知能ではない。正体は、 上空からの衝撃波で刺してきているだけでそんなにかわいいものではない。 刑務官のオヤジたちの鼻息を仰ぐ(つまり、消息や鼻息、 何をす...
オチがエロじゃないのがイマニイマサンっちゅうかんじやなぁ🤔