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2025-10-04

タイ社会 豊かな時間はどこに記事10回 すぐ横道にそれるジブリ映画 タイ時代でも倍速視聴されにくいわけ聞き手島崎2023年1月6日

 ――かけた時間に対する効果を示すタイパ(タイパフォーマンス)という言葉がよく聞かれるようになりました。そのひとつ現象として倍速視聴があります

 僕ね、実はやりますよ。ニュースはそれで見ているんです。ずいぶん長くやっているんですけれど、夜7時のニュースを30分そのまま見るのは、かったるくてね。全部録画して1.3倍とかで倍速視聴していますリアルタイムで見ると、時間もったいない。けちなのかもしれないけれど。

 名古屋の生まれで、中日ドラゴンズファンです。野球試合って今、長いんですよ。年間約140試合、全部録画して、その日のうちに見る。ここは大事というところはそのまま見て、それ以外は倍速でという風に分けるんです。

連載「タイ社会 豊かな時間はどこに」一覧

低成長で余裕なき社会、生き抜くためのタイパ Z世代あおる大人たち

筋金入りの倍速視聴派だという鈴木さんは、ジブリ映画について「倍速しにくい作品」と言います。その理由は――。「トトロ」「ハウル」「千と千尋」など、名作の舞台裏を交えて語ります

どう時間を盗むか

 ――なぜ、そうやって見るようになったのでしょう。

 18歳のときに読んだ本が面白くてね。「時間」について書かれていた。時間というのは2種類あり、「社会的な時間」というのが24時間。それとは別に自分時間」がある。人がストレスを感じるのはどういうときか。「社会時間が、個人時間搾取するとき」と書いてあった。これは面白かった。

 ――現代にも通じるような話ですね。

 そう。だから搾取されちゃ駄目だと思ってがんばってきた。自分時間をとにかく大事にしよう。それは思っていました。

 ――自分時間を生きてきた感覚はありますか。

 割と強いかもしれない。社会時間がどんどん流れていても、自分のもう一つの時間があるでしょう。大事なのはこっちに決まっている。だからといって、それを大事にすると1人よがりになる。その闘いですね。

 ――朝日新聞の連載「タイ社会 豊かな時間はどこに」の取材をするなかで、「自分時間」という言葉は、いろんなところから聞こえてきました。

 映画ってまさに「時間空間」ですよ。どう時間を盗むか。だから時間をどう使うのかに対して関心が強い。

 ――倍速で映画を見る人がいることは、ジブリ映画制作意識されているのでしょうか。

 それは関係ないですね。映画のつくり方って二つしかない。一つはストーリー主義。もう一つは、表現でみせる。

 つまり、倍速で見る人たちはストーリーを知りたい。映画って、本当はどっちをみているんですかね。ストーリーか、表現か。

 シンプルストーリーにして、表現を豊かにしてもらう。これがベテラン監督への要求ですよ。ところが、若い人にはなかなかできない。若い人にはストーリーを複雑にして、そこで面白さを保証し、つくってもらうというこの方法しかない。

 だから宮崎駿は「表現」の人ですよ。僕ね、宮さんに怒られたことがあるんです。「となりのトトロはいい例で、「単純なシンプルな話」と言ったら、宮さんが怒っちゃってね。「俺がどれだけ苦労して考えたと思ってるんだ」と。

時間を操る宮さん

 ――「ジブリの最大の魅力は表現」だと本で書かれていました。表現自体も変わっていないのでしょうか。

 変わっていないです。だからジブリ作品は、そういう意味でいえば、倍速をしにくい作品だってそこを速くしちゃったら、おもしろさが半減するんだもん。スピードが出ないように、いろいろやりますよね。だからお話の複雑さだけでみせるものだったら、僕は速く見ても全然かまわないと思う。

 宮崎駿作品はすぐ横道にそれる。でもそこで結構面白いことをやっている。そこが目に焼きついて、この話は何だったのか忘れちゃうわけでしょう。でもそこに大きな特徴がある。

 だから、お客さんの時間を奪っているんですよ。でも観客は「奪われた心地よさ」があるわけです。多分そういうことじゃないかな。

 たとえば、「千と千尋の神隠し」。千尋不思議の町へ潜入して、お父さんお母さんが豚になっちゃう。その後、千尋という名前を奪われて、働かなきゃいけなくなるっていうところまで、40分くらいかかるんです。その40分間の時間の流れと、それ以降の時間の流れが違うんです。

 要するに名前を奪われるまでは、あるテンポで丁寧にやっている。ところが、名前を奪われた後、突然、速くなるんです。僕の知る限り、1本の映画の中で、時間を操る人はなかなかいない。

 「ハウルの動く城」についてのエピソードもあります。宮さんは大体、ワンカットが平均すると5秒。でも、実際にフィルムになったときは、絵コンテには5秒と書いているやつが8秒とか9秒になる。

 映像の試写で、ワンカットの中の時間が違うと気がついた。いまの調子でつくったら、2時間と思っていた映画が4時間なっちゃう。

 悩んだんですけどねぇ。「宮さん、いつものよりカットの秒数長いですよ」と僕が指摘した。そうしたら「どういうこと?」って。宮崎駿という人はすごい人で、全く気がついていない。天才なんですよ、やっぱり。

 その後、宮さんがどう言ったか。いまだに忘れられない。開き直って「主人公がばばぁだからね、時間がかかるんだよ」って。

 ――すごい切り返しです。

 そう、切り返しがすごいんですよ。

 で、さぁどうするかでしょう。そうしたら宮崎がね、ここでぱっと切り替える。それまでワンカット8秒、9秒だったものを、4秒台にするんですよ。それで、次から次へと、できてくるものが短くなってくる。最初、丁寧に長かったやつが、途中でぽんぽんぽんぽんとテンポが良くなる。

 ぼくはあきれたんです。だってこんな監督いないもん。普通映画監督って、1本の映画の中での時間の流れをすごい大切にするわけです。それを無視ですよ。

「こいつ覚えてる?」

 ――宮崎さんの初期の作品から、つくり方としては変わっていることはないんでしょうか。

 だんだん自由になってきたよね。良く言えば自由です。でも、本当にいい加減だなって。なんでこの人はこうなんだろうか、考えざるをえなかった。だから僕は、時間とか空間に興味を持たざるを得なくなるわけです。

 ――プロデューサーという立場は結局、どこかで折り合いをつけて、つじつまをあわせなきゃいけない。

 だから言わなきゃいけない。「宮さん、これワンカットが倍になってますけど」と。

 「そんなことないよ。おれはそんなことするわけがない」と言っても、僕が「じゃあ絵コンテを見せろ」と言うんです。

 ――かけひきですね。

 本当にそうですよ。そこが面白いですけどね。

 これまた「千と千尋の神隠し」。千尋名前を奪われた後、「この後どうするかを考えた」と宮さんが言ってきた。

 千尋はまず名前を奪った湯婆婆(ゆばーば)をやっつける。ところが、湯婆婆には、もう1人のお姉さんの銭婆(ぜにーば)がいて、こいつが湯婆婆よりも強靱(きょうじん)な敵だった。千尋とハクは力を合わせて銭婆をやっつける。「どうかな?」って。

 ちょっと大変だなと思いました。普通映画だと、敵をやっつけたら終わり。たいがい1時間から2時間かかる。それをお姉さんがいたってことで、もう1回話を立ち上げて、やらなきゃいけないでしょう。

 「映画は3時間になりますね」と宮さんに言ったら「やだよ俺。どうしよう」と言うんです。

 でも、ここがすごいんですよ、あの人。「ちょっと待って」と言い出して、5分後に「こいつ覚えてる?」と、カオナシの絵を描いて見せてきた。その時まで、カオナシちょっと出てくるくらいの大したことないキャラクターで、僕は覚えていなかった。

 でも宮さんは「こいつにしようよ」と言って、あの話をつくり上げた。カオナシ千尋に喜んでもらいたい一心で金を出したり、金に群がってきた者たちや食べ物を食べてふくれあがったり……。その後、千尋と一緒に銭婆のところに行って、カオナシは銭婆のところにとどまることになる。この物語を5分で。これも、時間問題からまれものなんです。

 だから時間問題は、もう日々の仕事の中で、ものすごい大きなテーマです。僕は「自分時間大事」と言いながら、一方で、社会時間の流れというのをすごい気にしている。(映画を見た)みんながどう思うかというのは、そちらにあるわけだから考えざるを得ない。作品がどれだけの長さになるか、監督がわからないなら、僕が考えなきゃしょうがないでしょう。

最新作、構想から7年

 ――鈴木さんは学生時代から、「少ない労力で大きな成果を出す」というマインドをお持ちのようです。一方、ジブリ作品制作は、とても「少ない労力」とは思えません。時間や手間暇をかけて予算オーバーしたり、制作期間が延びたりしたこともありました。

 だって効率がいいものは売れないもん。効率が悪いものがお客さんは好きなんです。「風の谷のナウシカ」の時からそうです。

 ――ナウシカ漫画連載にあたって、鈴木さんが宮崎監督から3種類の絵を見せられ、どれにするか選ぶお話がありました。一つ目はすかすかな絵で、これなら1日20枚書ける。二つ目はそれよりもう少し複雑で、1日4~5枚。三つ目は緻密(ちみつ)なタイプで1日に1枚描けるかどうかというもの鈴木さんは緻密なものを選ばれたと。

 だって、すごい絵だったんですよ。実際、それが漫画になっているんですけど、時間お金をかけたものは、結局やっぱり、いろんなものを生み出してくれる。ちょこちょこやったものは生み出してくれないんです。

 ――最新作「君たちはどう生きるか」の制作も長い時間がかかっていますよね。

 2016年の7月かな。宮崎がこんなものをつくりたいと書いた。そこからです。

 ――タイパ重視の世界では、短い時間いかに大きな成果を出すかが問われます

 それを感じないようにしないといけないですね。その「短い時」が10年という時もある。だって今作ってる映画もね、そういうことでいえば、考え始めてから本当に7~8年かかったけど、短いと思いますよ、僕は。

 そういうことでいえば、ものすごいコストパフォーマンスいい作品ですよね。見たらびっくりしますよ。こんなものをつくったのかって。ぼくがびっくりしていますから。本当はもっと時間をかけたかった。人間ってね、待たされたほうが幸せなんですよ。

 ――「無駄がきらい」というお話がありました。

 無駄は嫌いです。いたずらに時間を使うのは好きじゃないから。それは有効に使いたい。

 ――鈴木さんの言う「無駄」は、かける時間の長さじゃないんですね。

 関係ないですね。新聞記者には「時間無駄に使いなさい」と言いたい。そのほうがいい新聞ができるに決まっている。

 ――「時間無駄に使う」とはどういう意味ですか。

 記者勉強する時間がなければ、いい記事ができないじゃない。そのためには、あっちみたりこっちみたり。そういうことでしょう。

 ――ぐさぐさ刺さります。最新作は7月に公開ですが、時間に追われている感覚はありませんか。

 自分でそうならないように努力しています。それはもうずっとやっていました。

 ――最新作の内容について、東宝の会見では「ファンタジー作品」という発言もあったようですね。

 内容ってね、ぼく今回ね、あんまりうつもりないんです。みなさんが楽しもうと思っていることを奪うわけじゃないですか。それは奪っちゃいけないです。

 ポスター1枚だけでいいんじゃないか、と言ったんです。宮崎はすごい喜んでくれた。彼が描いた絵です。本当は全体があるんですけど……。あ、これ以上言うとまずいですね。

 ――最近出版した本の最後に「『君たちはどう生きるか』のさらに次の映画企画もたてている」と書いてありました。

 宮崎はつくりたいでしょうね。今回の最新作で世に問うて、いろんな評価があると思いますが、それを聞きながら、次になにをやるか、本人は考えるんでしょう。僕は「これでやめてくれ」とは、もう言いません。言ったって言うことをきかないんだもん。

https://digital.asahi.com/articles/ASQDY438JQDSUTIL00C.html

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