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2025-09-17

桃太郎チャント」に思う、都会と地方非対称性について

都会はいつも地方搾取する。

文化剽窃を行い、「喜んでるからいいだろう」と、地方を抑圧するのだ。

 

 

ファジアーノ岡山というJリーグクラブが今年、悲願のJ1リーグに初進出した。

岡山という街を知ってほしいと声高らかに歌うのが、「おーかやまですおかやまです」という、郷土の誇る桃太郎モチーフにした「桃太郎チャントである

童謡桃太郎」のメロディーに合わせ、岡山を繰り返し名乗るその歌は、自己紹介であり、地方クラブの誇りであり、17年にわたり歌い継がれてきた伝統である

 

 

このチャント全国的に注目を浴びたのは、ファジアーノが初めてJ1の舞台に立ち、多くの人々が「岡山」という名を目にするようになった2025年のことであった。

地元サポーターにとって、それは「ようやく届いた」という感慨を伴う瞬間であった。

 

 

ところが、その誇りが即座に都会の「消費」の対象となった。

2025年9月15日東京都味の素スタジアムで行われたFC東京東京ヴェルディの「東京ダービー」において、FC東京ゴール裏から響いたのは、なんと「桃太郎」のメロディーに乗せた替え歌だった。

 

 

「とーきょうです とうきょうです。

 みなさんご存知 とうきょうです。

 緑が嫌いな とうきょうです。」

 

 

岡山が「知ってほしい」という切実な願いを込め、長年歌い続けてきたチャントは、東京サッカー文化において「ダービーを盛り上げるための道具」として軽々しく消費され、他者を愚弄する言葉すり替えられた。

 

 

この出来事は、単なる応援文化話題にとどまらない。

そこにあるのは、常に地方文化を「資源」とみなし、消費し、利用し尽くす都会の姿である

地方が長年育んできたものを、「都会」が一夜にして奪い去り、自らの娯楽や競争の道具に変えてしまう。

その構造は、まさに「都会による地方搾取」と呼ぶにふさわしい。

 

 

思えば、日本近代化のものがそうした構造に支えられてきた。

地方労働力供給し、資源差し出し、人口を都会に吸い上げられてきた。

若者「チャンス」を求めて東京に流れ、残された地方には過疎と高齢化が進む。

地場産業は都会の市場に組み込まれ価格決定権を握られ、やがては消耗品のように扱われて衰退していく。

 

 

さらに深刻なのは文化」の収奪である

地方方言祭り食べ物キャラクタースポーツクラブ――これらは地元の人々にとって生活と誇りの象徴である

だが、都会はそれらを「面白い」「新しい」「地方らしい」と切り取っては消費する。

テレビ番組の一コーナーに使い捨てられ、SNSでバズらせる素材として消化される。

残るのは一時的話題性であり、文化本来意味や背景は失われていく。

 

 

岡山の「桃太郎チャント」の件は、その典型である

サポーターが積み重ねた17年の歴史は、東京ダービーにおいて「地方発の面白ネタ」として消費されるや否や、その文脈は切り捨てられた。

そこには「地方文化リスペクトする」という態度は存在せず、「都会が盛り上がればいい」という一方的価値観けがあった。

 

 

都会の人々は往々にしてこう言うだろう。

「取り上げてもらえるだけありがたい」「注目されているのだから喜ぶべきだ」と。

しかしそれは、権力を持つ側の論理にほかならない。

地方が「利用されること」と「尊重されること」の違いを無視し、都会の快楽正当化する方便である

 

 

問題は、こうした構造無自覚のうちに常態化している点にある。

文化の盗用が「悪気のないユーモア」と片付けられ、経済収奪が「効率化」と称される。

地方にとっては痛みを伴う出来事も、都会にとっては一瞬の娯楽にすぎない。

この非対称性が、地方疲弊させ続けているのだ。

 

 

本来地方文化地方に根ざし、そこに暮らす人々のアイデンティティを支えるものである

それを都会が享楽のために軽々しく扱うならば、文化空洞化し、地方の人々は誇りを失ってしまうだろう。

からこそ、地方文化尊重し、正しい文脈の中で理解し、支える態度が求められる。

 

 

「都会はいつも地方搾取する」

この言葉は決して誇張ではない。

経済的にも文化的にも、地方は常に「資源」として扱われ、消費されてきた。

岡山チャント剽窃された一件は、その構造象徴する小さな事件である

だが、そこに目を凝らせば、私たち社会のひずみがくっきりと浮かび上がる。

 

 

地方はただ搾取される存在ではない。

地方には歴史があり、文化があり、誇りがある。

その声をかき消すのではなく、耳を傾けること。

都会が「奪う」のではなく、「ともに生きる」方向へ歩みを進めること。

そうして初めて、日本全体の文化もまた、真に豊かになるのではないだろうか。

 

 

Permalink |記事への反応(0) | 07:17

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