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< anond:20250910202826 |dorawii@執筆依頼募集中 >

2025-09-10

供物

ある谷間に、小さき村があった。

その村は長らく静けさを友とし、祭りの日を

心の支えとしてきた。

やがて遠き都の使者が来たりて言う。

「ここを、新たなる人々の学び舎とせよ。

彼らは海を越えて来たり、この地を母のように

慕うだろう」

村人たちは初め、頷いた。

「我らの炉を分け合い、歌を聞かせよう。

そうすれば互いに豊かになるに違いない」

しかし時が経つにつれ、囁きは重さを

帯びていった。

「なぜ我らの田に他人足跡ばかりが増えるのか。

なぜ決めるのは遠き都で、我らの声は

届かぬのか」

訪れた者らもまた胸を曇らせた。

「なぜ我らは歓迎されぬのか。

学びに来たのに、居場所は仮の小屋ばかり

なのか」

こうして村は裂け目を抱え、

炉の火はともに囲むより、互いを隔てる

灯となった。

夜の帳の中、老人はぽつりとつぶやいた。

「家は貸し借りできても、郷は貸し借りできぬ

都が忘れているのは、そのただ一つの理だ」

Permalink |記事への反応(0) | 21:24

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