永き航海の果て、陽が沈む寸前の水平線に、ついに麦わらの一味は辿り着いた。
何十年も正体が伏せられていたひとつなぎの大秘宝ワンピース)。
幾多の海賊、王、兵、そして夢追い人たちが命をかけて求めたその答えが、いま、目の前にある。
ルフィは、いつもの調子でニッと笑い、手を伸ばして宝箱を開いた。
「開けるぞ、宝箱!」
ギィィ……と重い音がして、蓋が持ち上がった。
光り輝く財宝が……なかった。
その代わりにあったのは、1冊の分厚い本。
革張りの、年代を感じるそれには、金の箔押しでこう書かれていた。
ナミがページをめくると、中には手書きの航海日誌のような文章と、写真のような記録映像が詰まっていた。
少年が海に飛び込む様子、帽子を預ける場面、仲間を守るために立ち上がる姿、泣き笑い、喧嘩、別れ、再会、そして宴。
それはまさに、これまでルフィたちが旅してきた記録そのものだった。
「これって……」
「そう……」
ゾロが「ハァ?」と目を細め、
ウソップが「いや……でも……」と肩を震わせた。
「おれたちが繋いできたもの全部が、ひとつなぎの大秘宝だったんだ!!!」
空が、パァァァッと黄金色に染まった。
夕日が雲の間から差し込み、ルフィの背中と麦わら帽子を照らしていた。
「おれは……ほんとに、海賊王になれたのかな?」
その問いに、ナミが笑って答えた。
「なったわよ。もう、誰も否定できない。」
「じゃあよォ!!言ってくれよ、ルフィ!!!最後にアレを!!!」
「おう!!!!」
「宴だァ~~~~~~~~~!!!!!」
その声に合わせて、ウソップが火を放ち、チョッパーが肉を並べ、
誰もが泣きながら、笑っていた。
かつて、ロジャーがここで見たという笑い話は、きっとこういう光景だったのだろう。
そして全員が理解していた。
仲間と過ごした全ての時間こそが、何よりの宝だったのだと。
夜はふけ、焚き火がぱちぱちと音を立てる。
赤く照らされた顔をルフィに向け、ナミが尋ねる。
「ねぇ……次は、どこに行く?」
誰もが黙って頷いた。
──そして翌朝、ラフテルに停泊していたサウザンド・サニー号は、静かに、新たな航路を進み始めた。