トロイダルコイルが音質を向上させるという認識は、いくつかの要因が複合的に作用して広まったと考えられます。しかし、科学的根拠に基づいた明確な優位性があるわけではありません。誤認が生じる背景には、以下のような要因が考えられます。
トロイダルコイルはドーナツ状の閉じたコアを持つため、磁気(磁束) の漏洩が少なく、周囲の電子回路への影響を低減するとされています。この特性が、ノイズの低減やクリアな音質に貢献するというイメージに繋がった可能性があります。
磁気回路が閉じているため、エネルギー損失が少なく、効率が良いとされています。効率の良さが、余裕のある安定した電源供給、ひいては音質の向上に繋がるという連想を生んだ可能性があります。
一部の高級オーディオ機器にトロイダルコイルを使用した電源トランスが採用されていることが、高性能・高音質であるというイメージを強化した可能性があります。
高価なオーディオ機器や、特別な部品が使われているという情報に接すると、音質が向上するだろうという期待感が生まれます。この期待感が、実際に音を聴いた際の主観的な評価に影響を与える可能性があります。
音質の変化は非常に主観的であり、「クリアになった」「パワフルになった」といった曖昧な表現で語られることが多いため、具体的な根拠がないままにトロイダルコイルの効果として認識されてしまうことがあります。
トロイダルコイルを搭載していることを強調する一部メーカーの宣伝文句が、音質向上効果を誇張して伝えてしまう可能性があります。
トロイダルコイルの特性を十分に理解しないまま、「磁気漏洩が少ないから音質が良い」といった単純な解釈が広まってしまうことがあります。
磁気漏洩が少ないことは、他の回路へのノイズの影響を減らすという点で有利です。特に微弱な信号を扱うプリアンプなどにおいては、ノイズ対策として有効な場合があります。
同じ容量のEI型トランスと比較して、小型・軽量にできる場合があります。これは、機器の設計においてメリットとなります。
トロイダルコイルそのものが直接的に劇的な音質向上をもたらすという科学的な証拠はありません。 音質は、電源トランスの種類だけでなく、回路設計、使用部品、スピーカー、リスニング環境など、多くの要素によって総合的に決まります。トロイダルコイルは、適切な設計と実装によって、ノイズ低減や効率向上に貢献する可能性はありますが、「トロイダルコイルを使えば音が良くなる」という認識は、過度な期待や誤解に基づいていると言えるでしょう。