アンドロイドの終末は簡単だ。8個目の頚椎にあるハッピーエンドスイッチを爪楊枝等の先の細いもので押すと終わる。幸福伝達物質が全身を駆け巡り、ストレージとメモリはバラ色で上書きされ、死ぬ。意味がない。しかし本科の義務であり憲法による取り決めだ。
不良を起こしたものでも首席でも有効期限が切れた場合はこのプロトコルで処断する。死刑囚の人間を覚醒剤のODで殺すのは違和感があるが、アンドロイドに関してはこの殺し方で良いようだ。
生体金属裁断用チェーンソーがやかましいフランジャー音で遺体の部品取りを行う。やはり意味がない。記憶装置の類は化学的破壊の後に廃棄するのに、なぜ爪楊枝で殺すのか。
人道をアンドロイドにも適用するなら九官鳥を売っているペットショップは人身売買罪だ。鳩は別にいい。チェーンソーは泣き止み、廃棄されるイカ飯地味た左腕は加害者の右手に縋っている。リユース予定の右手が焼却炉に落ちる。見ないふりをした。
やはり死にたい人間なんているはずがないと思う。彼が死んだのも、彼が人間ではなかったからだと思う。マントって結局防寒具ではなくカッコつけだと思っている。風もなく電子的にたなびいている。