『天網恢恢疎にして漏らさず』という言葉は基本的に「一見ガバガバに見えるルールでも結局すげー厳しいし悪いことは出来ない」という意味で用いられるが、公務員の世界では逆である。「一見雁字搦めに見える状況であっても、小さな隙間をうまくたぐりあわせていけば無理は通せるし道理なんて雑魚」というシチュエーションの波を如何に泳ぎ切るかにかかっている。
必要なのは自分は正しいといいはる揺るがぬ虚勢、口裏を合わせること、権力により相手を尻ごませること、そして最後にその理屈に乗っかるのが一番無難であると思わせるだけの話術となる。
公務員の世界で用いられるルール(憲法、法律、訓令、通達とか)に書かれている実施要領はよくよく見るとやたらと『余裕を持った作り』が為されている。
これは複雑な法体系同士相互の絡み合いや、官民それぞの都合に合わせて『便宜』を図るための意図的な粗さである。
いうなれば線路が熱膨張に備えて少しだけ余裕を持って敷設されているようなだものだ。
この隙間を味方にできるか、敵に回すか、それが公務員の業務処理能力の半分、評価や『居心地のよさ』においては8割を占めるとすら言えるだろう。
単純に法律と前例に沿って仕事をするところまでは何だかんだ慣れれば出来る。
だが、法の持つ網目を使いこなしていくのには才能が必要になる。
ノリがよく、ポジションの確保が上手く、口先で戦えるタイプの人間ならそれは大得意なはずなのだがなあ。
何故苦労しているのかが分からない。
ちなみに公務員で一番苦労するのは、人に物を聞くのが下手(自分で調べられる範囲と他人に聞くしかないことの切り分けが下手)なタイプだ。
こういう連中は面接試験とか苦手だったりルーチンワクならできそうとかってことで公務員になりがちだけど、理屈や利益を越えた所で特に意味もなく形を変え続けるルーチンを完ぺきにこなさなきゃいけない仕事で質問下手は死ぬ以外の道がないから絶対辞めておけよ。